台所の椅子の話
突然だが、私はキッチンドリンカーである。
キッチンと書いているが、我が家はTHE 昭和レトロな家なので「キッチン」というより「台所」の方がしっくりくる。
そんなレトロな台所で料理を作りながらビールを飲むだとか、台所の片隅に置いてあるスピーカーで大好きな音楽流しながらお酒を飲むのが好きなのだ。
そんな時は決まって台所の片隅に置かれた椅子に腰掛ける。
その椅子は俗に言う、丸椅子というやつで、金属の脚がついた座面の丸い、それはそれはただの丸椅子である。
しかも金属の脚は錆びてて座面も破れて中のスポンジが見えちゃってるようなただのボロい丸椅子だ。
まぁただあるから使ってる、と言うくらいのそんな感じだった。
そんなただのボロい丸椅子を事情があって他の場所に移した。
その翌日からである。
あ、椅子、ない…
座ることもできなければ、少し高い台所の戸棚から物を取ることもできない。(踏み台代わりにも使用していた。良い子は真似しないように!)
事あるごとにあのボロい丸椅子のありがたみをひしひしと感じた。
失って初めて気づくのだな。大切なものに。
いつもそばにあるものや、当たり前にそこにあるものの大切さを人間はすぐに忘れてしまうよな。
物だけじゃない、人もそうだ。
気づきたいな。
近くにある幸せや
大切なものや
大切な人を。
そんなことを考えたただのボロい丸椅子の話。