小説を読むことのススメ
私は現在大学院に在籍しているわけですが、論文作成の基礎的な力を身に付けるために小説を読むように後輩にアドバイスしていました。
研究活動においては論文を読み込み、先行研究を概観して研究課題を設定することが何より大事なプロセスですが、そこに至るまでに悩む学生が多いように思います。
そして、その悩みをよく紐解いていくと、”自分の述べたいことをうまく言語化して表現できていない”ことや、”論文等から得た知識をうまく活用できない”といったところに行きついているように感じました。
(もちろんそれ以外の課題もあると思いますが)
研究活動においては、①先行研究を概観”し、”②研究課題を設定”し、”③調査・実験を行い”、”④研究成果を文章で形にする”というプロセスが必須となります。
このプロセスの中で、①と④において読み書きが非常に重要になってきます。
書かれてある文章を正しく解釈すること、自分自身が述べたいことを正しく論理的に記述することが出来なければ、研究活動において最も重要な論文の執筆は上手に出来なくなります。
先ほどの紐解いていた悩みである”自分の述べたいことを言語化出来ていないこと””論文から得た知識を活用できない”という点は、読み書きの不得意さと論理的思考力の熟達度に起因するからではないかと思います。(あくまでも私見ですが)
読み書きが得意で論理的思考力が十分身についていれば、論文を読んで解釈し、また既存の知識と紐づけて考えを飛躍させ、さらにはそこからうまく自分自身の考えを述べることができると思います。
では、そうした力を身につけていくにはどうするべきでしょうか?
ここで、私は読書を進めています。そして特に小説が良いのではないかと思っています。
小説を読むということの大きな目的としては、”言葉を知る”、”言葉に慣れる”ことです。
言葉を知るということは、読み書きにおいてや論理的思考力の熟達に非常に重要なことだと思います。
例えば、「嬉しい」という感情を表す言葉を知っているから”嬉しいという感情を理解”することができます。
また、その嬉しい気持ちも様々な種類があるでしょう。
胸が弾むような気持ちなのか、うわのそらのような感じなのか、幸福感に満たされているような様子なのか、同じ嬉しい気持ちであってもその中身は微妙に異なります。
また1つの物事を複数の言葉で表現できるようになれば、多面的に対象の物事を捉えられるようになり、より複雑な思考が可能になります。
自分の述べたいことを正しく伝えるためには、こうした語彙力を身につけておく必要があります。
また、語彙力が高まっていれば、文章を正しく読み取ることもできます。
接続詞などの文章を構成するための言葉も含め、語彙力を高めておくことでスムーズに文章を読み取る力を得る必要があります。
そうした力を身に付ける上で、手始めに気楽に始められるのが小説を読むことではないかと思います。
小説は文章のみでストーリーを描き、読者の想像力を掻き立てようとしています。
情景描写のある漫画と異なり、小説は文章のみで勝負しなければなりませんので、言葉の表現は作者の工夫が織り交ぜられています。
文章で書かれたストーリーから読者は映像を思い浮かべながら(想像しながら)読んでいくわけです。
毎日ちょっとずつ読み進めていくことを繰り返していくことで、様々な言葉に出会うことができます。語彙力を高めていくことで、自分自身が述べたいことをうまく表現することも容易になるでしょう。
うまく表現できない理由は、言葉を知らない、もしくは普段から使い慣れていない(触れていない)ために伝えたいことに言葉が紐づいてこないのも一因でしょう。
こうした考えから私は小説をすすめていました。
また調べてみると、小説などの文章から物語を読むという行為は、客観的思考を育むともいわれているようです。
さらに海外の実験研究では、小学生を語彙力の高い群と語彙力の低い群に分けて知能テストを実施した結果、語彙力が高い群にはIQが高い子どもが多く含まれていたという報告があります。
言葉を多く知っていることは知能の高さに影響を及ぼしている可能性を大いに示唆する結果であると言えそうです。
確かに言葉を知らなければ概念を理解することにおいて障害になりますし、論理的な思考も難しくなるため、そうした意味でも言葉に触れる機会としての小説は良いのではないかと思います。
研究としての専門知識は小説からは得られませんが、「考える力」を養う上で1つのトレーニングになると思います。
そして何より、1番は言葉を楽しむことを体感できることが最も大事かもしれません。