湾の見える丘
風の終わるところの、地面いちめんに
海を塗りたくった。
いろいろなものを浮かべた。
緑色の島々だとか、鈍色の貨物船だとか。
やがて赤錆の雨がそれらを台無しにした。
あくる朝、陽光のなかにヒルガオの花が揺れていた
そこから風景がこぼれ、半島の向こう側まで広がっていった。
すべてが元通りになった。
村人たちは鐘を鳴らし、のろしを上げた。
船が一年ぶりに帰ってきたのだ。
私は、よれよれの軍服を着た祖父と一緒に、
丘の中腹のサトウキビ畑からそれを眺めていた。
ふと横を向くと、祖父の姿はなかった。
海から風が吹いた。サトウキビがさらさらと靡いた。