安里和幸
川柳
短歌です
名桜文学賞落選作です。全5話。原稿用紙50枚ほど。
とりあえず現時点での詩集みたいなものです。
2021年おきなわ文学賞小説部門落選作をnoteで供養してます。ビターな青春小説です。読んでくれたら嬉しいです。
玉砂利の味を知らなきゃ勝てないよ 舐めるためにおはじきを買う大人たち 欠員が出たため飯が食えている 血の色がわからないので噛んだ指 軍神をコインロッカーに分祀する コインランドリーで恋が始まり困ります 風色の鍵を失くして老いてゆく ちちははが琥珀になる時代の昏れ 脳漿のみずうみに浮く鬼子母神 無色テロ ダークモードで喪に服せ
ジミヘンが送電線を弾く夜空 魚民でボリシェヴィキらを送別す あーやっちまったナ茲ニ宣戦ス どうしたの批評ワナビを轢き摺って みずうみを喰えば夜霧は苦い腸 「ズー・ニー・ヴーのヴーじゃないかな」 やってみる「テクノブレイク」価値はある 祝電に『イズ・ディス・イット』の風が鳴る意思のない下手人である不凍液 国頭と島尻があり臍に住む
待ってろよ黄ばんだバスで清算だ 黒鍵を引き抜く順に死んでゆけ スコールや棕櫚の午睡を邪魔するな 根源の朝に眩んで落ちる始祖鳥 涸れ谷に黙秘を埋めて破裂音 砲声と親友になれそうもない はちがつにすべて了えばかたるしす 焦るなよやがてゆくゆく大雷雨 所在なくエピキュリアンの骨を噛む おじさんは不能パンダの成れの果て
クラベスの片方が飛んできて鬱 歯が抜けた君の不全のうつくしさ 十字路の雨粒も黄や赤になり 瞬間は瞬間でしかなく、断種 カセットを巻き戻しても春が来る 礼服を裂いて僕らで愉しもう 右岸から左岸まで衛星の跡 宙鳴りの塔を拝せず誅される 起き抜けの頭蓋で燃やす閨閥図 一族の位牌の灰でhighになる
私心なき聖者の指で終わらせる すべすべの晩夏はやがて亜金属 村民が区民になった出世譚 すまないね頭の中がずぶ濡れで エクセルでビンゴブックを管理する 時すでに遅し蟹の字が書けない かび臭い布団めくれば至上の愛 病棟と犬のうんこと青空と 夜、橋、鉄 重力ばかりみなぎって 棄ててやる名前をつける権力を
ええんやで青信号にツバメの巣 僥倖をムダ遣いしてする二度寝 藻まみれのロストボールに似てますね 残響を切り売り暮らす腑抜けども ゴムホース 夏の残滓さ何もかも 落ちぶれたコンカフェ嬢が興す国 野ざらしの脚立の影も伸びている 暮れ方のピエロになって出直しな 気にすんな元を辿れば射精だろ 櫓から落ちないようなキメセクで
爽やかな朝だ二、三の敵もいて 庇えるか不破哲三で抜く奴を 読みさしの死蝶の翅に火の挿し絵 不可算の目玉を宇宙まで投げる キビ刈りの鎌でリスカをしても家父 海までの距離があの子の余生なの 慄然として舐め回すマンホール 天の配剤飲めば早世 敗訴した薔薇が囲繞地から逐われ 置き配の冷たいギフトに触れて泣く
身に覚えがない脱皮をしたらしく 終生の劇しい雨に名付けなど 脳髄にとぅるりと這入る水枕 寝盗られて辛ラーメンがのびている 自販機と一基の墓が支え合い 味気ない夭折をせよ毛虫ども 血迷うな腋の臭さに立ち還れ 実直なあなたの尻をしばきたい しらじらと嘘の夜明けが冴えてゆく 契ろうかヤルタ・マルタのあばら家で
ハンモックナンバー100の軍神ぞ ぼったくりバルで海軍反省会 目覚めるとメーヴェ、ネコバスの渋滞 せがまれてミニバンほどの蝶を焼く 海たりうる魚人官僚の涙も 『のり面』の文字も怖くて目を伏せる 純正の黙示録で楽しもう ヤリ部屋でときたま独楽にも愛され まみれてもまみれてもなお一敗地 オフレコで知る半神の数え方
リベラル派宦官の説く征火論 野比違う、立ってどうする佇っとれい 涼しさだ男やもめのハーブティー 消しカスは四元素よりも上でしょう 遺言が座標で表せない志士 檳榔の赤い唾までマルキスト 潮を読む死地に赴くゆるキャラと 脳裏でもなお売れ残る三日月湖 宿便と宿命はもう同じだろ 蹶起せずタジン鍋などつついてる
刑死後の極暑に熔ける鉄条網 密葬の柩の部屋に蝉の声 旱天に忌の連続の暦あり 夏蝶や都市の亡ぶを見よ告げよ 歳時記に「地球忌」と足す天使かな
「いつかまた、転生先の世界でも弑されたいわ。」アーニャは嗤う 月面刑務所の看守も囚人も欠けた地球をじっと見つめる 人新世の示準化石となるかもね僕の精子を拭いたティッシュは 死と生のスコアブックを締めくくるヒト絶滅のサヨナラエラー カタチナキモノサエ滅ブ忘却ノ河ノ流レニ抗え。独りでも。
百バレル燃やして往けど恋は恋 実りなき恋のパレード 埠頭まで 自画像の眼にリチウムの火を点けて 生と死の受取拒否を海に告げ 口内炎いわれなき罪の報いが 打つ手なくガパオライスを塗る軍医 国境をさすって笑う父の喉 濡れそぼつ龕の洞へとつづく路 かたつむり螺旋首都から滑り落ち 瞬間の王が死んでも詩はつづく
海を綴づ蝶の軌跡で縊れ死に 朝焼けが掃く国道をちぎる死児 まろびでる腸を抑えて三歩征く 喋らせろ首の断面冷めるまで 名月を指差してから指がない 頑なに「月は虚偽だ」と説く男 曾祖母は水銀灯の生き残り 世紀極駐車場など貸すエルフ 裁判長 説諭じゃなくてキスをして そののちに瀑布が残るミニコント
歌い継ぐY2Kの画素数で 公園のベンチ白くてもはや犬 暮れ残る貯水タンクはかなしみだ ぱちゅぴちゅと詠え詩魂の尽きるまで 炸裂し想像堕胎の母も診る 憤死・不死・腹上死から選ぶのじゃ 百万回不慮の転生遂げた猫 終わりだよ(笑) 湿布の裏の世界地図 なn度目の破局なん?もうええて。 滅ぼさないと出れない世界
わたくしの卑小さも鳴る寒怒濤