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べてるの家のオンラインマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.297




・気持ちをカタチにする 江連麻紀 


先日、子ども「自分のこと」研究所_vol.8を開催しました。

子ども「自分のこと」研究所は子ども・子育て当事者研究ネットワークゆるふわ、清水屋商店、コトノネ、無印良品東京有明が共同で活動しています。

今回は夏休み特別企画で学研ステイフルさんもご協力してくれました。

10人の子どもたちと学研ステイフルさんのニューブロックを使って、最近の印象に残ってる出来事があったときの気持ちをカタチにしました。ニューブロックは色も形も様々あって選ぶのも楽しそうでした。

ブロックを作ったあと、どんな出来事でどんな気持ちだったのかを発表しました。自分で発表した子のほか、こっそり大人に伝えて代弁もありました。出来事を発表するのはパスして気持ちだけを発表する子もいました。

「小学校の先生に怒られて納得できなくて怒ってる気持ち」をブロックで表現した子の発表では他の子たちからも共感の声が集まりました!「嫌になった気持ちと乗り越えていく自分」という大作を作った子もいました。

子どもたちから感想

「色とかたちで自分でも気づいてないほんとの気持ちが表れているから自分がどうゆう気持ちだったのか知るのにちょうどいい方法だった。」

「気持ちを表すのが大変で、みんなの聞いていてもので表現できてるなーと見てるの楽しかった。」

「気持ちをあらわすことができてすっきりした。楽しいボタンと悲しいボタンがある。」

保護者からの感想

「他の子の考えや気持ちに気づく機会なので定期にあるとありがたいです」

「お友だちにもある気持ちに気づく日がまちどおしいですが、まずは自分の気持ちを知ってほしい」

「気持ちに向き合い表現することはなかなか大人もやっていないと思った。自分の気持ちに気付いて大切にすることを伝えていきたいです」

「自分の子どもだけでなく、他のお友だちの気持ちも聞くことができて発見がありました」

学研ステイフルさんは気持ちを表現できるか心配されていたのですが、子どもたちはスムーズに取り組めて発表もできたことにおどろかれていて「子どもたちどの作品も素晴らしかったです!大人のほうが気持ちを表現できなそうですね。」と言われていました。

私は、子どもたちに例としてブロックを作ったのですが、イベント前日の出来事で息子が電車にランドセルを忘れてきたときの「なんでー!まったくもー!」という気持ちをカタチにして紹介しました。

私も楽しかったですが、参加してくださった子どもも大人も楽しそうでした!

次回の子ども「自分のこと」研究所_vol.9は「大人だって悩みがあるよ!おなやみ相談会!」です。大人が子どもたちに相談しようと思っています。

・文/写真:江連麻紀


・べてるまつり2024開催についてのご案内

日時:2024年10月4日(金)・5日(土)
場所:北海道浦河町文化ホール

プログラムの内容:浦河べてるの家、40周年記念企画お楽しみに!

<宿泊場所について>

例年、町内のホテルや宿が満室になることが予想されております。町内が満室の場合は、多くの方は隣町の施設を予約されることが多いです。

各ホテルの空室状況については、直接各施設へお問い合わせくださいませ。(ウェブではなくお電話での空室確認をお勧めします)

浦河への交通手段・宿についてはこちらをご参考ください。


・日本精神障害者リハビリテーション学会 第31回東京お台場大会のご案内

学会名称:日本精神障害者リハビリテーション学会 第31回東京お台場大会

テーマ:多様性と調和 ~台場シティで調(ととの)う~

会期:2024年12月14日(土)~15日(日)

会場:東京有明医療大学(〒135-0063 東京都江東区有明2丁目9番1号)

参加者数:約1,200名

開催目的:本会は精神科リハビリテーション学に関する研究発表、連絡、提携、及び研究の促進を図り、これらの進歩、普及に貢献することを目的とする。

大会長:肥田 裕久(医療法人社団宙麦会ひだクリニック 理事長/院長)
副大会長:角田 秋(東京有明医療大学看護学部看護学科 教授)
佐々 毅(医療法人社団宙麦会ひだクリニックお台場 院長)実行委員長:中田 健士(株式会社МARS 代表取締役)

主催:日本精神障害者リハビリテーション学会

・参加登録受付中!

精リハ学会は、2010年に浦河でも開催した学会です。
今年の東京大会はべてるからもメンバー・スタッフがたくさん参加する予定です。みなさん、東京・有明(お台場)でもお会いしましょう!

●新刊「弱さの情報公開」

2023年10月発売の最新書籍です。
2020年に発売しご好評をいただきました「弱さの研究」の続編。
不寛容な社会での孤立と孤独「つながり」を考える。

一部では、カーリング日本代表の吉田知那美選手とべてるの家の人や
向谷地生良氏との「強さと弱さ」についての対談。

二部では人と人の「つながり」を各章で考察、依存症、認知症の孤独について、本当の「つながる」ことの意味を考える。

<目次>
まえがき―「弱さの情報公開」の源流 
一部 弱さの情報公開
一章 弱さの情報公開 
二章 弱さを認める 
三章 行き当たりバッチリ 
二部 つながる
四章 わたしが「ダメ。ゼッタイ。」ではダメだと思う理由 
質疑応答 
五章 「認知症と繋がる」ということ 
六章 あいだは「愛だ」 
七章 地域と人と苦労で繋がって(向谷地生良氏最終講義) 

●大反響増刷中!
『子ども当事者研究 わたしの心の街にはおこるちゃんがいる』

本体価格:990円+税、出版社:コトノネ生活



・「北のバラバラな日々」 (50) 笹渕乃梨

気がついたら小学生たちは夏休みに突入していました。北海道もここ数年はひどい暑さで、今年からは夏休みの日数が1週間延びることになりました。家にエアコンのない我が家はなんにせよ暑いんだけどさ。

先日、我が家のアイドルであるリクガメのたまごちゃん(通称=たまちゃん)が脱走(失踪)してしまいました。娘の留守中、わたしが「つまり、キリがないラジオ」の収録をしている間。いつもどおり居間を散歩させていたところ、破れた網戸を突破しデッキに出て庭に落下してしまったようでした。

最後にたまちゃんを確認してから失踪に気づくまで2時間弱。室内に隠れてる可能性もあるし、外かもしれない。みどりと共に外出先から帰ってきた友人親子とともにすぐさま捜索開始。範囲を絞りきれなかったことで初動が遅れたのと、家が山の際ということで草木が生い茂り捜索は難航。翌日もそのまた翌日もしばらくのあいだ必死で捜しました。たまちゃん失踪の話を聞きつけた友人知人やご近所さんが次々と駆けつけて一緒に捜してくれたり、わたしたち母娘の健康を心配して食事を届けに来てくれる人もいました。

たくさん助けてもらって、たくさん励ましてもらったけど、たまちゃんは見つかりませんでした。

警察や動物愛護センターへの届出をし、近所にチラシをポスティングしたり、町内会の連絡LINEで「迷いカメ」のことをシェアしてもらったり、15cmのカメを見つけたくてやれることはすべてやった、という感じでした。

娘はというと、毎日声をかけて愛でる対象を失い消沈するかと思いきや、やけに聞き分けよく、妙な機嫌のよさで毎日を過ごしていました。わたしの過失で脱走させてしまったのに、わたしをなじるようなことも一度も言いません。わたしはそんな娘とからっぽのカメのケースと過ごすのがいたたまれませんでした。たまちゃんの話題もなんとなくタブーっぽくなってしばらく経ったころ、娘がやっと自分の気持ちを打ち明けてくれました。

「たまちゃんは外で自由を手に入れてにっこり笑ってると思う。できれば帰ってきてほしいけど、わたしはそばで可愛がれる対象がほしい」と。

新しい生き物を迎えることを想像すると、たまちゃんがいなくなって日が浅いのにたまちゃんの失踪が帳消しになってしまうような気がして罪悪感に似た気持ちを感じました。ですが、「わたしが罪悪感を抱くのは勝手だが、娘に生き物と暮らしたい気持ちを我慢させるのは別の話かもしれない」とも思えなくもない。なにが正解なのか全然わかんない。全部まちがいのような気もするし、どれも正解のようにも思えてくる。困りながら正直に娘と話し合い「たまちゃんが帰ってきたらすぐに迎えられるように」と、同じ種類のリクガメを迎えることに決めたのでした。

新しく迎えた赤ちゃんリクガメは「すももちゃん」という名前になりました。

すももちゃんが来て、娘はやっと今まで口にしなかったたまちゃんへの思いや寂しさ、すももちゃんへの愛をどんどん言葉にしてくれるようになりました。言葉の奥にどんな気持ちが渦巻いているのかまではわからないけど、妙な聞き分けのよさや機嫌のよさもなくなり、きわめて通常営業な彼女に戻ったのでした。
困り果て、悲しみに暮れ、目を腫らして奔走していたわたしに気を遣っていたのかもしれません。情けない母さんだよなぁ。
そういうわけで、年齢相応のふてぶてしさが戻った娘と新メンバーすももちゃんと一緒に、たまちゃんの帰りを(長い目で)待とうと思います。
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我が家にいるヒガシヘルマンリクガメことを調べると、野生の個体が生息するスロベニアは、夏は30°C、冬はマイナスの気温だそうで、北海道に近い気候ということがわかりました。他にも、職場の利用者さんから「近所で脱走したリクガメが、何年も経ってから公園でガサゴソしてるところを発見されたの。すごく大きくなっていて元の飼い主もすぐには自分のカメということがわからなかったんだよ」という話を聞かせてもらい、たまちゃんが元気に旅を続けている希望を持てたのでした。
今回のことで興味深かったのは、たまちゃん失踪の一件で助けてくれた人たちが「たまちゃんの生存をややネガティブに心配する人」と「わたしたち母娘の心身の健康を気にかけつつ、たまちゃんの野生のポテンシャルを信じようとする人」の2パターンに分かれていたことでした。自分のまわりの人のほとんどが後者で、わたしはなんだかとても救われました。相手がピンチのときに、どんな言葉や態度がその人にとって嬉しく元気づけられることなのか、とても考えさせられたのでした。
愛についての学びは果てしないものなのですね。


笹渕乃梨(ささき・のり) 自己病名は『境界線ぐちゃぐちゃ症候群サトラレ型変化球言葉タイプ(現在は枯れている)』
北海道で小学生の娘と二人暮らしをしている。趣味はゆるめの野遊び、スキー、工作、手芸など。精神科のお医者につけてもらった病名はうつ病とADHD。現在は無脳薬で約3年。
「子ども当事者研究」、「子育て当事者研究」、「なさ親」などで活動中。22年4月より「nasaLAB(なさラボ)」のWebラジオ「つまり、きりがないラジオ」パーソナリティ。
「nasaLAB(なさラボ)」の登録はこちら↓



・続「技法以前」 233 向谷地生良 「経験は宝」

「失敗や行き詰まりの経験は、大切な資源(宝)であり、生きるための素材である」
当事者研究では、どのような失敗や行き詰まりの体験でも、そこには未来につながる大切な資源(宝)と、今の苦労や困難を解消する知恵とアイディアの素材が眠っていると考えます。どんな体験でも、仲間と語り合い、分かち合い、ともに研究することで有用な経験となります。
「失敗は、成功のもと」「禍を転じて福と成す」「若い時の苦労は買ってでもしろ」に代表されるように、この理念は、古今東西を問わず、さまざまな民話や宗教、哲学を問わず大切な”伝承知”として、語り継がれてきたものです。

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