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詩『蛾』

会いたい貴女に
そっくりな私

会えない貴女と
似てない私

昨日は去り
明日は来る
言葉なくとも
心は通う

留まるべきは今日なのか
夜の中でひとり思う

希望とは絶望とは
考えたこともなかった

貴女と会うまでは
幸せだった
なにも知らずに

貴女と会ってから
季節の色が変わり
その意味を知った
風の流れを感じた
なにかを知った

今この手に残るもの
柔らかな温もり
切るような冷たさ
どちらでもない
真っ直ぐな眼差し
切なさを知った

また色褪せた世界
溜め息
まだ色鮮やかな記憶
くちづけ

生まれ変わり
死に変わり
貴女と会うまでは

貴女は夜の美しい蛾
私は昼の小さな幼虫

いつか蛹になれたら
夜に孵化するまで
待っている
ひっそりと
眠っている

貴女と再び会うために

雲は流れる
抱いて欲しい気持ちが
夜露に消える
月が隠れる

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