マガジンのカバー画像

読書日記

45
読んだ本の紹介と、読書感想文になります。
運営しているクリエイター

記事一覧

小説:「日本三文オペラ」開高健著の感想文

開高健の『日本三文オペラ』は、社会の底辺に生きる人々の生活を描いた作品であり、非常にリアリティと迫力に満ちているように思えます。また、この小説は、ベルトルト・ブレヒトの『三文オペラ』を日本の風土に置き換えたものといわれ、開高の鋭い観察力と文学的な技巧が光っています。 作品の登場人物たちは、人生の苦しみや不条理と戦いながらも、どこか人間臭くて魅力的です。開高の描写は時に辛辣でありながらも、登場人物たちに対する温かい眼差しが感じられます。特に、貧困や不平等といった社会問題に対す

「ザイム真理教」森永卓郎著の紹介

経済書を読むことはあまりないのですが、この「ザイム真理教」の書籍の成り立ちに興味を抱き、読んでみました。 この書籍の「まえがき」の中で、印象に残った一文を引用してみます。 れいわ新選組代表の山本太郎氏が、国会で述べられている動画があります。

小説の題名を書くことはできない。【読書日記】

人気のある、若手作家の小説を初めて読んだ。 理由は、某所で課題図書として挙げられていたからだった。 通読してみて、参考のためにネットでほかの方の感想を読ませてもらった。おおむね、好意的な感想が並んでいる。まるで、図り事の提灯記事の羅列のように思える感想文だった。 興味を引くことのない事柄や、軽い人物造形の描写がつづく文章。うんざりするほど、どうでもいいことが書かれている貧弱な物語。でも、ありえないほどの高評価……妙に、謎めいている。世代間のギャップのせいだ。と言われれば、そう

「ゼロの焦点」松本清張著の読後感【読書日記】

「ゼロの焦点」は、松本清張氏の緻密な筆致と鋭い洞察力が融合したような推理小説であると思います。また、松本氏の特徴である、社会派の視点が鮮明に現れており、登場人物たちの背景や心情が丹念に描かれています。それによって、事件の謎や動機の複雑さが浮かび上がり、読者を一気に物語へと引き込もうとしているようです。 特筆すべきは、松本氏の緻密なプロット構築です。 彼の小説は常に謎めいていて、物語の真相に迫ることを楽しむことができます。また、登場人物たちの心理描写も見事であり、彼らの葛藤や秘

「金持ち父さん 貧乏父さん」ロバートキヨサキ著・シャロン・レクター著の読後感【読書日記】

多くの方がレビューを寄せていますが、その中から一つだけピックアップしたいと思います。 また、チャットGPTの作品評価も載せてみたいと思います。 この書籍を通読してみて、とくに印象に残った文章を挙げてみたいと思います。 もちろん、そのほかにも印象に残った文章はありますが、このあたりで留めておき

「太陽の子」灰谷健次郎著の読後感【読書日記】

この児童文学書に目を通したのはいつのころだろうか。 10代の後半のころに読んだような記憶がある。内容はまったく忘れてしまっていた。 たまたま読む機会があり、再読してみた。読み進めるに従い戸惑いがひろがり、途中から読むことが辛くなってきた。その理由が理解できたのは、読み終えてからのことだった。物語の構成として、「伏線の張り方」に問題があるのではないかと思ったからだ。 物語が終盤に入り、この小説の肝の部分が力強く語られる。心に染み渡るような文章でよかったけれど、そこに至るまでの伏

「非色」有吉佐和子著の読後感【読書日記】

「非色」というタイトルは、漢字の「非(ひ)」と「色(しょく)」の組み合わせでできています。「非色」とは、色彩を持たず、無色透明であることを表しています。また、このタイトルが意味するところは、主人公の内面の複雑な感情を色に変えることができない、感情の深い部分が抽象的であることを表しているように思えました。 小説のタイトル「非色」は、人種や国籍、性別、年齢などの社会的なカテゴリーにとらわれない「非色」という概念を提唱しているようです。多様性を認め、異なる文化や価値観を受け入れる

「玉虫と十一の掌編小説」小池真理子著・読後感【読書日記】

「恋愛中毒」山本文緒著・読後感【読書日記】

「恋愛中毒」を読んでいた時期、偶然のように著者のニュース記事を目にしました。作家の山本文緒氏の名は昔から知っていましたが、著作を読むのはこの小説が初めてでした。 この記事には「作家の山本文緒さんが、58歳で天国に旅立ったのは、2021年10月13日のことだった。」と書かれています。 一昨年に逝去されたのだと思いながら、小説「恋愛中毒」を読み続けました。 この小説には、性愛の描写は皆無といってよいほど描かれてはいないようです。読み進めるにつれて主人公の女性の回想が語られ、読者

「大河の一滴」五木寛之著・読後感【読書日記】

行きつけのカフェで、常連さんのひとりとカウンターで話をしていた時、ある話題がきっかけで話をするようになりました。別に畏まるような文学論でも政治的な話題でもありませんでした。ウクライナを侵略するロシアについての話題が発端だったような気がします。 「大河の一滴」を読んだのは、最近のことでした。以前からタイトルだけは知っていました。近所の図書館の書架でそのタイトルの本が目に付いて、手に取って読んでみようと思ったのです。読後感としては、特に「応仁の乱からのメッセージ」の章が印象に残

「村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事 」村上春樹著・読後感【読書日記】

小説家でありながら、70余点あまりもの訳書がある村上春樹氏。その原動力はどこからくるのか ―― 翻訳者でもある村上春樹氏が、36年にわたる道程を振り返って語られています。 訳書、原書の写真も多数あります。 柴田元幸氏との対談もたっぷり収録されていて、興味深い書籍になっています。 ☆「村上春樹翻訳ライブラリー」からピックアップした訳書 愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)amzn.to1,210円(2021年08月29日 16:16時点詳しくはこ

『秘伝の声』池波正太郎著・読後感【読書日記】

この時代小説を読むのは、三度目になります。床に積んであった本の中から無造作に取り出し、読み始めてみました。 既読したことを忘れ、何気なしに手に取った小説でした。何となく表紙の絵柄はおぼろげに憶えていたのですが、読んだ記憶がありませんでした。で、リビングのソファに寝そべりながらページを開いてみることにしました。すると、以前読んだことを思い出した次第です。でも、味わい深い物語が展開されていて、つい、読み進めてしまいます。 わたしは、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『真田太平記』など

『翼がなくても』中山七里著・読後感【読書日記】

積んでいた書籍の中から、若手の著名な作家で宣伝も良くされていたタイトルの小説を読み始めた。読み進めることが耐えられなくなって、途中で投げ出して止まった後で、この小説を手に取ってみた。読後感として、わくわくするほど面白い小説だったと思う。カテゴリーで言えば、ミステリー調のスポーツ小説になるのだろうか。構成がしっかりしていて、物語の世界観も飽きることはなかった。むしろ、読み進めるごとに喜びのようなものを抱くような感覚があった。悲劇的な物語なのに、読み進めるごとに光明が見えるような

『塗られた本』松本清張著の読後感【読書日記】

『塗られた本』(ぬられたほん)は、松本清張の長編小説。『婦人倶楽部』(1962年1月号 - 1963年5月号)に連載され、1984年5月に講談社ノベルスから刊行された。後に電子書籍版も発売されている。           出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 「塗られた本」は読みごたえがあり、気恥ずかしくなるほど、ロマンチックな気分に浸ることができる小説でした。しっかりした構成で描かれた小説を読んでいると、頭の中に物語が映像として浮かんできて、それ