沈黙と虹
憤りの雲と嘆きの雨。
怒りの落雷と憎しみの洪水。
彼はうなだれ、ただただ絶望の淵にいた。
そして神に問い掛けた。
しかし、問い掛けた声は空に漂い、求めていた答えや返事は無重力の真空に飲み込まれた。
彼はうなだれた。さらに奥深く、絶望の深淵を垣間見た。
そして次は魂の咆哮で叫び、全身全霊で神に投げかけた。
それでも、真空に吸い込まれた。。。
絶望、挫折。終末の全てしか彼の頭には浮かばなかった。
全てに諦めかけたその時、突如としてそれは現れた。
天の恵みと地の愛が織りなす七色の希望が。
そこに、言葉は無く、問いも無く、答えも無かった。
楽園へと繋がる道だけがそこにあると、彼は気付いた。
そして、全ては自分の中にあると。
問いが生まれたのも自分の中からであり、すなわち答えも自分の中にあると。
全てを与えられた内なる自分の中にしか無いと。
父は全てを子に与えた。もうそれ以上に与える事は出来ない程に。
問い掛けにも沈黙する事しか出来なかった。
しかし与えられた子には見えなかった。
なぜなら両の目は、外にしか向いていなかったのだ。
止まない雨は無く、晴れない雲は無い。美しい虹を見る為にそれらは容赦なく来る。
だが、虹はいつでも見る事が出来る。
その雲の奥に、あなたの心の奥に、あなたに寄り添う誰かの心の奥に。
ただ、見えていなかっただけなのだ。全てに絶望している曇った自分の目には。