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2024年4月5日

ブーブーブーブー。

毎朝同じスマートフォンのアラームが鳴る。今日は少し早めの起床だった。

息子の保育園の日だからだ。

息子は難病であり人工呼吸器や経管栄養といった医療的ケアを必要とする医療的ケア児である。

一般の保育園に入るには選択肢が少なく、家から車で10分の場所にある保育園に通っている。

住まいの市ではガイドラインが決まっており、保育園が預かってくれる時間も9:00〜17:00で延長保育はない。

週2〜3日保育園に通っているので、その日は少し早起きだ。9時に行くには7:40ごろから吸入を始め、そこからあらゆる荷物の準備をする。

アンビューバッグ、外出用吸引機、注入セット、吸引セット、非常用セットが入ったリュック…

荷物が多いのも医療的ケア時の特徴でもある。

そしていつもギリギリ慌てて8:30ごろに家を出て保育園に夫と向かう。
私は免許を持っていないので運転はもっぱら夫だ。もっぱらというか、夫以外は考えられないのだ。申し訳ない。

2人で息子をせっせと車に乗せる。車に乗せるにも荷物があるので、5分くらい時間がかかる。息子を抱っこするたびに、よいしょっと言葉が出るくらい身体の成長を感じている。

保育園につくと明るい声がたくさん聞こえてくる。先生の声、保護者の声、子どもたちの声。

おはようございまーす!

すれ違う先生や保護者たちは元気に挨拶してくれる。朝が苦手な私は少々機嫌が悪いまま保育園に向かうことが多く夫に迷惑をかけているのだが、この元気な声たちを聞くとそんな機嫌もどこかに飛んでいくようだ。

おはようございます^^

私なりにできるだけ元気に挨拶を返す。

保育園には息子の他にも2人、医療的ケア児のお兄さんお姉さんが通園している。
医療的ケア児部屋というものが保育園があり、そこに物品を保管したり注入や吸引をするときに使ったりしている。

だいたい朝、医療的ケア児部屋に行くとそのお兄さんお姉さん2人が息子を出迎えてくれる。しっかりと手を洗って、椅子に座って。

かわいい

そう言って息子に触ったり、おもちゃで遊んでるのを見せてくれたりする。
息子はそれをどう思っているのか知らないが、お兄さんお姉さんたちからの刺激を受けて悪いことはないと私は思っている。

息子を医療的ケア児部屋に連れて行った後は、まず物品チェックをする。

前述した通り、息子の荷物は多い。リストにするとA4両面分ある。担当看護師さんと一緒にチェックをし、忘れ物はないか確認する。

おもしろいのが、看護師さんによってスピードやチェックの仕方が違うことだ。ある人はささ〜っとテキパキチェックをしあっという間に確認が終わる。ある人はひとつひとつどこに何が入っているのか確認しながら進める。
どちらがいいとかはないのだが、人によるんだなあといつも思いながら一緒に確認をしている。

新年度になり看護師さんは総がわり。初めましての方も多く、園長や副園長まで医療的ケア児部屋に来て「ご不便をおかけしますがよろしくお願いします」と挨拶してくれる。なんて丁寧な保育園なんだと感心し、不安がないよう対応してくれることにありがたく感じている。

物品チェックが終わればあとは保育園に預けるだけ。ベビーベッドにゴロンと寝転がりご機嫌でニヤニヤしている息子に「またお迎えくるからね!楽しくね!」とバイバイする。

乗ってきたベビーカーを片付けて駐輪場に置いて車で夫と家に帰る。

さあ、仕事だ。

医療的ケア児を育てる親はとにかく働く時間を作るのが難しい。
病院、リハビリ、保育園、児童発達支援…
通う場所が多く、予定調整もかなり多い。
病院に行けばもちろん仕事をすることができず、長い待ち時間のおかげで毎回疲労困憊だ。
リハビリは基本親がついていないといけない。
児童発達支援は施設内親子分離は可能なため仕事ができるが、預かってくれる時間が4時間と長くないので、終わった後家に帰って息子をみないといけず、仕事がはかどらないのだ。

仕事を集中してできるのは、短期入所と保育園に預けているときだけだ。
その時間はとにかく貴重で、気合をいれてパソコンに向かっている。

夫はあまりに仕事時間が足りないので、早朝や深夜に仕事をしていることもあるくらいだ。

この日もいつも通り仕事をしていた。執筆しなければいけない記事を集中して書き、投稿しなければいけないSNSを間違えのないように丁寧かつ素早く作業する。

そうしていると、夫に保育園から電話があった。


息子くん、痰がたまってしまぅて苦しそうで心拍も高いんです。


なんですと!こんなことは初めてではないか?と思ったが、原因はなんとなくわかっていた。
吸入だ。
この日から初めて保育園で吸入をお願いしていた。しかし吸入をすると、痰がやわらかくなり、痰が上がってきやすくなる。量が多いと外出用吸引機では痰をひききれず、苦しいままだ。
きっとそれだと思い、家用の大きな吸引機を保育園に持って迎えに行った。

顔色が悪いわけでもなく本人は元気そうだったが、心拍は高かった。
すぐに家用の吸引機で吸引をするとすごい量の痰がどぅるん!と引けた。すると心拍も落ち着いていく。

よかった〜
とほっとし、今日は安静にした方がいいなと念の為そのまま息子と一緒に帰宅した。

その後は息子と一緒に絵本を読んだりおもちゃで遊んだり、おうちでゆっくりと過ごした。

夕方訪問看護が来て今日あった出来事を話すと、やはり吸入が原因かもしれないですねえ、と。
季節も変わり乾燥する時期ではなくなってきたので、保育園では吸入お願いしなくてもいいかもしれないとアドバイスをいただき、今後はそうしようと夫と決めた。

17時にお風呂に入り18時に訪看が帰った後、息子は爆睡。お昼寝も痰のおかげであまりできていなかったせいか早めに就寝してくれた。

この日は夫も夜予定があったので息子と2人で過ごしていたが、深く眠りについていた息子は全く起きることなく、私もモニターを見ながら寝室でゴロゴロ過ごすことができた。

息子が生まれ息子中心の生活になった今はこんな感じで過ごしている。寝顔も嬉しそうに笑った顔もよくわからない手をゆらゆらさせるダンスもやってやったぜ!と言わんばかりに持続チューブを抜く姿も全てが愛おしい息子。
心配することも多いが、一緒にいて楽しいと思えることが増えていく喜びがある。そんな気持ちにさせてくれてありがとうと思う。

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