
Die Frau ohne Schatten ー 影のない女
もともと観劇記録を残そうと始めたこのブログ。最近は旅行記になっていましたが、そろそろ本題に戻ろうと思います。今日はドイツ・オペラにやってきました。
題目はリヒャルト・シュトラウスの「影のない女」。最近はシュトラウス祭りなのか、「ばらの騎士」や「エレクトラ」など、たくさんの演目を観ることができます。予定が合わなくてどれにも行けないのが残念…。
最近また独り身になり基本的に暇を持て余しているので、何かしら予定を詰めることにしています。特にベルリンには30歳以下が破格でクラシック音楽を楽しめるクラシックカードなるものがあり、枠さえ残っていればオペラは一回15€、オーケストラのコンサートに至っては13€程で楽しむことができます。
今回ももちろんこの制度を使って、二階席二列目中央席をゲットしました。前日や当日にチケットが売れていない時は基本的にかなりいい席に座ることができます。昔は当日券を買いに夕方チケットボックスに向かう形だったのですが、数年前にアプリがリリースされて以来、かなり使いやすくなりました。
普段は予約時に舞台写真を見ることができるのですが、今回の演目は比較的新しいこともあって演出に関する事前情報はゼロ。嫌な予感はしたのですが、やはりかなりモダンな感じ。場面転換では黒子が一気に出てきたりして、オペラ座の質素な内装と相まって、地元の文化ホールを思い出しました。
ベルリンで一番特殊な文化といえば、いたくモダンな演出。一度大奮発して買ったワーグナーのニーベルングの指環(通称リング)で痛い目に遭ってからは、かなり慎重にチケットを選ぶことにしています。基本的によくあるパターンは、質素な衣装もしくは全裸、現代に置き換えた設定、巨大人形などなど。記憶が許す限り、あるある演出をカウントしてみたいなぁと思ったりします。豪華なオペラ体験を求めている人には、いくつかおすすめできる演目があるのですが、そちらについても追って紹介していければと思います。
今回は、皇帝と皇后がブルジョア感溢れる一般人で、染物屋の夫婦はクリーニング屋という設定です。ピアノを使って生活層を表す感じがなかなか生々しくて、他にもいろんな「記号」を駆使してあります。家庭用ワインセラーとかオーバーオールの作業着とか、Aldiの袋とか。普通に主人公の女性に影があるので若干集中できなかったのですが、重要シーンでは本当にありませんでした。芸が細かい!
*三幕で影は子供の比喩表現であることが判明。
今回も舞台で生着替え演出があったのですが、前回のガチ全裸男女で耐性がついているおかげで、私はそんなに驚きませんでした。一部の観客は少しざわついていましたが。一瞬とはいえ、さすがに舞台上で一人で致す演出はやりすぎでは?ベルトが生々しい…。二人バージョンも当然(?)ありました。スカートのスリットってああいう風に使うのね。ベルリンの劇場、とにかく性に関する演出が多すぎます。
第二幕では新しい試みが。舞台上に大画面が登場しました。これがとにかく眩しい!サングラス必須です。眩しすぎて頭痛がする感じ、二年前に観たヴィム・ヴェンダース演出の「真珠採り」を思い出しました。全体的に演劇としての芸術点が高い作品という印象を受けました。受胎がテーマになっているだけあって、体外受精やら何やら、かなり興味深い感じで演出に取り込まれています。時々挟まれる小芝居が色んな意味でオペラらしくなくて良い。演出全体にかなり強めの解釈が入ってはいますが、楽しめました。
⚠️二つほどトリガーワーニングの必要性を感じるシーンも。強姦未遂と流産を彷彿とさせる場面があるので、注意が必要な方は気をつけてください。
ベルリンのオペラ座には必ず字幕があるので、言葉が聞き取れなくても大丈夫な仕様になっています。左にはドイツ語、右は英語がデフォルトで、内容に飽きたら二言語を比較して暇を潰すこともできます。私もオペラ鑑賞を始めて学んだ単語がたくさん。普段は全く耳にしないholdなんて言葉はワーグナーで多用されています。一応オフィシャルな言語力はドイツ語の方が英語より高いはずの私でも、意味を理解するには英語字幕を読んだ方が早いです。ドイツ語ではやたらと古い言葉や珍しい単語が出てくるので、比較的シンプルな英語訳の方が初心者には優しいのかと思います。ちなみに今回学習した単語はAmme(乳母)。現代ドイツ語では、Hebamme(助産師)という形で残っています。実は現代語でも音節の区切りがHeb-am-meなのですが、ここから来ているんだなぁと納得。初めて学習した時はHe-bam-meだと思っていたので。
今回は役者の声がかなり弱め。オーケストラに負けてしまっている感じです。日によってクオリティはまちまちな気もするのですが、音楽鑑賞は慣れてきたとはいえど素人なのであまり多くは語れません。オーケストラは、かなりディズニー感が強いというか遊び心満載のパートも多く楽しいです。フルートや謎の打楽器がいい仕事をしています。さすが1900年代初頭の作品。他のものとはかなり毛色が違う印象です。オーケストラは休憩後に指揮者が登場するタイミングでブラボーコールがかかるほど。演奏が終わる前に拍手する人もおらず、オペラ座ならではの安定感があります。
上映時間など特に何も確認せずに予約したら、なんと休憩二回・250分という長丁場。ワーグナーじゃないんだから…。軽い気持ちで久々にオペラでも見ようと思ったのに、かなり重めの演目に当たったようで苦笑いです。まともな人はちゃんと確認するんだろうなぁ。
作中の内容は事前に確認しないと全くついていけないことを学習しているので、いつも通りインターネットであらすじを探してみたのですが、日本語で読んでも全く理解できない。カイコバート?カモシカ…??なんとなくわからない部分を放置しながら見続けてもなんとかついていけたので、これはこれでアリかと思います。
夜10時を回ったあと、大量の子供が舞台に登場しました。かわいい。日本だと無いことなので、いろいろ違いを感じます。児童保護法に引っかからないんだね。カーテンコールは自由に写真を撮っていい&どんどんSNSで公開してねとアナウンスがあったので、カバー写真にしてみました。