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僕がペーパーバックを読み始めたわけ⑨
1月もそろそろ終わろうとしているが、私はウルトラスローモーに伝説的なSF作家ジェイムズ・ティプトリー・JRの“HER SMOKE ROSE UP FOREVER”(ARKHAM HOUSE, 1990年)を読みつづけている。
“THE SCREWFLY SOLUTION” を読む。ポンコツなことに作品をど忘れしていて途中で声が出た。これえぐい趣向を情け容赦なくアップテンポで語りきった、黒いティプトリーの傑作「ラセンウジバエ解決法」じゃん!
(最後に少し情報を足しますが)本作の内容は緊張感のないこの文章に似合わなすぎるので割愛。私は翻訳で読んだときも原文で読んだときもラストで目がテンになった。当時は意識化できなかったけど、ホラー小説やホラー映画をより好むようになったいまそのわけが分かった気がする。
本作は、パニックホラーとして傑作で、その世界規模の人類の危機的パニックの原因を秀逸なSF的アイデアが支えている。また、パニックの当事者の心理もうまく描かれており、どん底の恐怖と悲哀のリアルさが本作の読みどころとなる。
でラストは確かに絶望的でやりきれないのだが、ちょっと質のちがうやりきれなさなのだ。調和のとれたパニックホラーにさらなるSFをぶち込むティプトリーの豪腕に脱帽です。
(本作は、ジョー・ダンテ監督で「男が女を殺すとき」という邦題で映像化されています。きっとラストであいつは「登場」しない。違ってたらすみません!!)
He seemed like my father. I can't say it better than that. I realized he was under a terrible strain, he had taken a lot on himself for me. He went on to explain how Dr. Fay was very dangerous(p17)
町長はまるで父親みたいな感じでした。それしかうまくいえません。町長は恐ろしい重荷に耐えて、自分のために骨折ってくれたんです。町長は、ドクター・フェイがどんなに危険だったかを説明してくれました。
(『星ほしの荒野から』(ハヤカワ文庫、伊藤典夫・浅倉久志訳)p123より引用。「ラセンウジバエ~」は浅倉訳です。)