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時間るぁーL'heure numero7

 ゆったり時間を過ごしている様子、そのようなフランス人の様子を人生を楽しんでいるように思う。ゆとりを持っているように思う。時間を有効に使っているように思う。フランス人の時間の使い方を学べという風潮はいまだに女性誌などに見られると思うが、フランス人の時間の使い方は、私から見ると、とても疲れる使い方なのだ。当然のことながら、その使い方は彼らにとっては普通だ。

 まず、フランスではバカンスがいっぱいあるという現実の裏側では、長いバカンスを得るために彼らは(仕事が忙しい専門職の人々 ex.弁護士、医者、管理職)、バカンスではない時に死ぬほど働く。寝る時間は3,4時間が普通。日本でも忙しく働くサラリーマン、専門職の人々はこれ以上に働いているか同じくらいかと思う。

 なにが印象的にバカンスがいっぱいあると思わせる原因になっているかを考えると、①法律でバカンスは年に5週間、日曜日は会社を閉めなさいと決めてある。②徹底的に個人主義のため、働く人はとっても働き、働かない人は働かない。それが全体の印象として働かない人のほうにスポットが当たる。③一生懸命やっているという姿を見せることよりも、スマートに(貴族チックに)している姿を好む性質がある。こんなところだろうか。

 それに対して、日本の仕事環境の印象は、①法的にバカンスを重要視していない。②個人主義を叫んでいても結局は集落意識のため、全体の印象としてみんなで一緒に働いている印象。③ガムシャラに頑張っている姿が好まれる。スマートにこなしていると手を抜いていると思われかねない。

 子供たちのバカンスに関しては、フランスの学校は夏休みが2ヶ月あり、11月(toussaints)に2週間、12月(noel)に2週間、2月に2週間、4月に2週間、5月に5日間の休みがある。日本の学校は、夏休み1ヶ月と10日、冬休み2週間、春休み2週間ぐらいだろうか。ざっと比べて、2ヶ月間、フランスの子供の方が休みが多い。

 これをゆとりと見てしまうのが、日本の文部科学省のいうゆとり教育の発想だろうか。私はフランスの小学校2年生の例をよく知る機会を得たのだが、朝8時半から午後4時半までフランス語、算数、週1回の体育、時々催し物の練習という授業形態で、いつも宿題を持って帰る。バカンスを多く取るため短期集中型で、子供たちはとても疲れている。

 これに対して日本での小学校2年生時は長い休みがないかわりに、3時間目ぐらいまでで学校が終了し、午後2時ぐらいには帰途につく。そして帰ってから自由時間(今の子供たちは、塾通いなのだろうか…?)がある。それに、音楽、体育、算数、国語、理科、社会とバラエティに富んだ授業があり、とても充実しているプログラムだと思われる。

 というわけで、実質は同じぐらいの時間を学校で過ごしている割合になるだろうか。それを、日本の学校は休みがなくて、ゆとりがないと勘違いしていないだろうか。もっと、アメリカやフランスなどを見るんじゃなくて、自分自身をよ~くみて、いい状態のところは保たなければならないと思う。

 結局、フランス人が時間を上手く使っているように見えるのは、夜の時間を使っているからだと思う。日本に伝わる、夜のお出かけは、一部のブルジョワ階級の人たちの振る舞いを言っているのだと思われるが、その夜の招待は、私がしていたベビーシッターや家政婦さんを雇って成り立っている。いわゆる時間を買っているわけだ。それか、親に子供を頼んで出かける。これも習慣で受け入れられやすい。

 この夜のお出かけのための社会が出来上がっていて、美術館、映画館、レストランが、子供たちが寝込んだ夜の9時以降から盛り上がるようになっている。美術館は曜日を設けて、1週間に1度夜遅くまで開いているなど。レストランは、とっても遅い開始にも対応している。

 フランス人は夜を楽しむのが好きらしく、その使い方がおしゃれなんだと自画自賛しつつ言ってくるが、日本人の私にとっては、やる事成す事いつも…のろい!と見えてしまう。そして、夜中までゆっくり話しながら楽しんだ後、明日の朝のことをすっかり忘れて帰途に着く。この「すっかり」な忘れ方が私には出来ない。彼らは朝に強い人種なのだろうか(私はしっかり寝なきゃ起きれない主義)。眠ることよりも、起きて夜を楽しむほうを優先するということを刷り込まれているように見える。

 そういえば、彼らの生活のすべてのリズムが、夜を中心に据えたリズムになっている。朝もお昼も仕事の仕方も、人への対応もすべて夜を楽しむためのしょうがない時間って感じ(だから特に朝に強いわけではないのだ)。結局、彼らは個人主義でわがままで、お気楽なのかもしれない。たまに真面目なフランス人がいるかと思えば、その真面目ぶりが、他の面では全く見えなかったり、真反対の性格に見えたり。批判精神に富んでいて、本音を表に出さず、また意識的にスマートに見せているだけなので、私にはよく分からない謎の人たちに見える。

 「日本人はよくわからない」と彼らは大っぴらに言うが、彼らの方が相当わからない人々なのだ。ただし、笑顔はとても訓練されていると思う。フランス人の笑顔は、かなり良く出来た仮面である。子供の頃から親をみて、唇の上げ方、歯の見せ方を訓練されていて、高校生を終える頃には、その仮面笑みを完璧に習得している。私は、歯の矯正が終わってから笑顔の練習を試みた事があるが、タイミングよく、言葉を発しながら、笑顔を作るというのは難しいものだ。これをフランス人はかなり上手くやる。これが観光大国になり得た大きな要因と見た。

 日本人の多くは、この営業スマイルにやられて、ゆとりを持っていると勘違いさせられてはいないだろうか。私は、その営業スマイル返しを試みて、笑顔を作ることが相手にとってだけでなく、自分にとってもゆとりを作り出すことにつながるのかを試してみたいと思っている。

※この文章は、2014年7月6日に書いたものです。

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