体を鍛えることと語学学習の共通点について #4
恒石昌志
quick fix approachの罠
さて、今までの連載1~3回で習慣の重要性、そしてどう習慣化するかという話をしてきました。最後はquick fix approachの罠について語ります。
Quick fix approachは「何かを簡単に解決できる手法」と訳すことができます。
例えば、〈これだけすればXX日で英語がペラペラになる〉、〈このサプリメントを飲めば痩せられる〉、〈これだけやれば健康になれる〉など簡単で努力いらず、そして短期間で劇的に効果の上がる方法を謳ったものです。
私は、世の中のほとんどのquick fix approachはデタラメであると考えています。
筋トレ・ダイエットの世界では人間の生理学を無視したとんでもないダイエット体験談(短期間で大幅体重減など)があります。人間が燃やせるカロリーは決まっていますから、毎日絶食してもゼロカロリー状態が続いても痩せる体重は理論上計算できてしまいます。
食物はエネルギーがありますから、これを食べると痩せるという食べ物は存在しません。
語学学習の世界ではあまりにも極端なものはありませんが、〈週1時間この教材をやれば〉など、かなりお手軽さを謳ったものを見かけます。
大事なことは基本的なルーティーンをずっと続けることです。
このように習い事の習熟に失敗する人の多くは、たいしてパフォーマンスに影響を及ぼさない些末なことに時間とエネルギーを使います。
英和辞典はどの出版社のものがいいか、オンライン英会話はどのサービスがいいか、このようなものはどれを選ぼうが学習の成果に大きな影響を及ぼしません。
これは筋トレでサプリメントにこだわりまくるのに似ています。
サプリメントの選択は筋トレの結果にほとんどが大きな影響を及ぼしません(ほとんどのサプリメントは論文ベースで効果が確認されていない)。
繰り返しますが大事なことは、これさえ選べば劇的に成果が出るという甘いマーケティングの売り文句を無視して、淡々と習い事を続けることです。
英語学習も、私の周りにはいわゆる通訳レベルの方がいますが、通訳レベルの英語力をお持ちの方でも毎日3時間は英語を意識的に普通に勉強されている方が多いです。
私も雑誌やpodcastなどの英語のinputとoutputなどでそれぐらいは時間を使っていると思います。ただこれは習慣化されており空気のようなものなので、私としてはまったく辛いと思いません。
このように習慣が空気のようになると、周りからたいそうな努力をしているように見えても本人にとってはただのルーティーンワークです。
筋トレにも語学にも近道はない
そしてQuick fix approachが効かないということを言い換えると、劇的な結果が出るにはある程度の長期間の時間のコミットメントが必要ということです。
これには今までの連載で繰り返した通り、空気のように勉強すること・鍛錬することを習慣化することです。
この長期間が何年か、と言われるとそれぞれの人の求める習熟度によって違いますので一概に言えませんが、決して一晩、一週間で結果が出るものではありません。
近道がないことがわかれば、この道を一歩一歩歩こうと思いませんか?
かくいう私も今まで偉そうなことを書きましたが、体を鍛えることも語学学習もまだ道半ばで、自分の歩ける歩幅で一歩一歩道を歩いている途中です。
あなたも一緒にこの道を歩いていきましょう。
どこかで自分の道程を振り返った時に、よくここまで歩いたなと思える日が来ると思います。