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語学書の著者のコラム

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ベレ出版語学書の著者による、本を書くこと以外のお仕事の話、教えること、ことばにまつわること、言語について。
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#韓国語

言葉が増えれば世界も広がる —私が多言語に携わることとなったのは

青木隆浩 第四回:多言語を通して見えてくる文化 1.言語から文化を知るみなさん、こんにちは。今回は多言語を学ぶことで見えてくる文化や歴史的背景についてお話いたします。 私はこれまでに中国語、韓国語、モンゴル語、ロシア語などを学んだことがあります。これらの言葉が話されている国は互いに国境を接していることから、それぞれの言語を比較したり、その変遷をたどったりしていくことで、相互の関係が見えてくることもあります。 まず、単独の言語の話から始めましょう。 各言語の語彙から、そ

韓国語圏フィールドワークの世界

髙木丈也(慶應義塾大学 総合政策学部専任講師) 第3回 私の韓国語圏フィールドワーク②:中華人民共和国世界のコリアンをめぐるフィールドワーク。今回は中華人民共和国(以下、中国)の朝鮮族の話をしましょう。 朝鮮半島から中国への移住皆さんよくご存知のように中国は多民族国家で、漢族以外に55の少数民族が暮らしています。そのうちの1つが今回、ご紹介する朝鮮族です。私は2014年以降、彼らの言語や文化に興味を持ち、機会があるごとにその居住地域を訪れてきました。 朝鮮族が多く居住す

韓国語圏フィールドワークの世界

髙木丈也(慶應義塾大学 総合政策学部専任講師) 第1回 学生との韓国フィールドワーク約3年ぶりにこのコラムを担当することになりました。慶應義塾大学 総合政策学部の髙木丈也と申します。私は普段、韓国語や韓国語圏の社会について研究をしながら、大学で韓国語を教えています。でも、大学教員が実際にどのように教育や研究をしているのかは、多くの方にとって見えにくい部分もあると思います。 そこで今回から4回にわたってお送りするこのコラムでは、私の教育・研究のごく一部分をご紹介してみようと

【日本語と韓国語の言葉は本当に似ているの?】第4回 韓国の俗信物語

チョ・ヒチョル  俗信は日常生活に深く根を下ろし、人々が無意識のうちに守っているものもあります。韓国の俗信は日本と共通のものもあれば、似て非なるものもあります。また、世代によっては知らない内容や守らなくなっているもの、新しく生まれてくるものもありますが、ここでは韓国の代表的な俗信をいくつか紹介します。  一昔前、ソウルの街を走っていたSONATAという韓国産の車のエンブレムからSという文字がはぎ取られる事件が相次いでいました。それは当時、エンブレムのSという文字を持ってい

【日本語と韓国語の言葉は本当に似ているの?】第3回 翻訳できない韓国語

チョ・ヒチョル  日本と韓国は地理的にも近く、有史以前から今日まで多くの交流を行なっているので、文化においても似ている部分も多いですが、中には韓国独自のものもあり、翻訳しにくい言葉も多々あります。ここでは翻訳できないいくつかのことばを取り上げてみました。 ▲『翻訳できない世界のことば』(創元社2016年発行、エラ・フランシス・サンダース著・前田まゆみ訳、91ページ)  数年前に出版された『翻訳できない世界のことば』(創元社、2016年)は 「他の国のことばでそのニュアン

【日本語と韓国語の言葉は本当に似ているの?】第2回 日韓同形異義漢語②

チョ・ヒチョル  今回も前回に続き、日韓同形異義漢語の話しです。 (3)八方美人(ハッポウビジン)VS 팔방미인(パルバンミイン)  日本で使われている漢語の意味・用法は韓国のものととても似ています。ある本の中で、日本語と韓国語の類似した5つの単語の中に「八方美人」という語があげられていました。私が日韓同形異義漢語を語るとき、いつもいちばん先に取り上げる「팔방미인(八方美人)」が、残念ながらその本では同形同義漢語としてあげられていたわけです。  クリントンさんがアメリ

【日本語と韓国語の言葉は本当に似ているの?】第1回 日韓同形異義漢語①

チョ・ヒチョル  日本と韓国のギクシャクには言葉によるものも多いような気がします。特に漢字語の中には字面は同じなのに意味にずれができたものが多いのです。ここでは2回にわたって「日韓同形異義漢語」についていくつか取り上げてみました。  日韓両国は漢字文化圏に属しています。韓国はふだんあまり漢字を使っていませんが、語彙の中で漢字語が占める割合は6、7割にも達しています。  さて、中国の漢字・漢語が日本と韓国に伝えられてからもう2千年近くにもなります。ただし、日本と韓国に入っ

韓国文化・社会の現場から 第3回「こんにちは 안녕하세요?」

髙木丈也(慶應義塾大学) 韓国語の初級テキストに必ず出てくる単語を手がかりに、韓国の文化や社会に対する理解を深めましょう。  韓国語を学ぶと、最初に習う定番フレーズといえば、やはり안녕하세요?(アンニョンハセヨ)ですね。韓国語を学んだことがない方も、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。  さて、このフレーズ、日本語では「こんにちは」と訳されることが多いようですが、実は朝や夜にも使うことができます。つまり、「おはようございます」、「こんばんは」という意味にもなるの