『インターホンが聴こえない』 ~難聴者の日常生活~
(前頁 ~プロローグ~) ※難聴者さんインタビュー①
■ プロフィール
「GenGen」(ゲンゲン)
・フリーダンサー
・27歳
・W-inds、湘南乃風、TRFなどのバックダンサーの経験あり
・2019年、THAT'S WHY!! 加入
・2021年パラリンピック閉会式出演(2021追記)
■ GenGenさんの難聴と手話
・生まれつき 音感性難聴 原因不明
・左は全く聴こえない 右に補聴器、全部は聴こえない
・主に口話を利用 手話は「ベラベラ」ではない
・普通学校に通う
・家族は聴こえる
素のGenGenさんを出して頂きたく、インタビューは、フリートーク形式。
取材中もメモは取らずに、ボイスレコーダー利用。
インタビューの中で、
「普通に聴こえてると思われている感じが一番モヤモヤする」という話があった。
GenGenさんは、私からの質問を全部は聞き取れていないだろうし
私も、GenGenさんの言葉を全部聞き取れなかった。
フリートークで会話をしながら質問をした為
「ちゃんとインタビューになっているのか」と気にかけて下さるシーンも。
難聴者かどうかではなく、GenGenさん自身にとても魅力があった為
幅を広げて私生活から考え方まで、あらゆる事を無遠慮に訊いてしまい、
取材自体がGenGenさんをモヤモヤさせてしまったと感じている。
しかし、そうしたフリートークの合間にこそ難聴である事の「ありのまま」があったように思えた。
改めて認識したのが「難聴者さんは、一人一人、全然違う」という事。
他の難聴者さんが、皆同じ環境・状態にあるというわけではない事を念頭に、読み進めて頂ければと思います。
* * *
インターホンが聴こえない
朝は将来の為の勉強をし、
昼はトレーニングの為、ジムに行く。
夕方~夜は、クラスに行き、ダンスの練習。
都内で一人暮らしをするGenGenさんは、帰って自炊する事が多い。
これが平均的な一日の過ごし方。
運転免許は持っており、時々ドライブもする。安全運転を心がけている。
旅行も好き。以前は沖縄に一人で行き、潜ったりもしていた。
3ヶ月間、アメリカにも行った。
ファッションとヘアカラーにはこだわりたい。
オシャレが大好きな、フリーのダンサー。
都会的な暮らしをするGenGenさんだが、
インターホンの音が聞こえない為、モニター付インターホンがある部屋に住んでいる。
ダンスの為に住まう場所を選び、設備も考えると、それなりの家賃となる。
買物は、行き慣れているところに行く。
初めての店では、表示を見せる。(写真)
飲食店での注文は、呼び出しボタンが無いと店員を呼ぶことが難しい。
免許は一般と違い、警察署で検査を受けてからでないと発行できない。
日常の諸々の手続き等の中で電話対応はできない。
誰かに頼ったり、時間と手間をかけて対応する。
先天性難聴のGenGenさんは「言語獲得前難聴」つまり話す事を学習し難い状況にあった。
「た」行や「さ」行が上手く舌を使って話せているかどうか自分では解らず、「し/ち」「す/つ」が言えない。確かにGenGenさんの発音は健聴者のそれとはチョット違う。
名前を伝えるシーンでは、何度も聞き直される。
聞き直される事で、自分の発音が上手く出来ていない事に気付く。
マスクがあると、相手の話は解らない。
テレビや映画は字幕がないと解らない。
コロナ後は「マスクがあると解らない」という事は理解してもらえるようになってきたとは思う。
しかし、補聴器を付け会話も出来る為「聴こえている」と思われる事がストレスになる。
「テレビを一緒に見る」「電話で会話する」といったような、「普通の事」ができない為、必然的に一人でいる事が落ち着くと思える時もある。
友達も、大勢の中に入るというより個別に仲良くなる事が多い。「大勢で楽しむ」という憧れはある。
「聴こえない、普通の事が出来ない」という事で、難聴者であるGenGenさん本人のストレスだけではなく
周囲が自分に対してストレスを感じる事も、感じ取ってしまう。
これが、そういう耳を持って生まれたGenGenさんの日常生活である。
Interviews and Contributions(取材・寄稿)
yuka (BeOneプロジェクト代表)
※私ども「ハニポ」 はBeOneプロジェクトの活動・運営を無償サポートしています
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