ようこそ、僕たちの部屋へ【夢見る恋愛小説】
私は今から、この怪しい扉の奥へ
一歩踏み出そうとしている。
ただでさえ入りにくい雰囲気なのに、
入り口の謎の黒猫ちゃんが
私の勇気を試すかのようにこちらを見てる。
知らなかった…。
私の住む街にこんなところがあるなんて。
それは先週末のことだった。
ここのところ仕事が忙しくバタバタしていて
友達との連絡も疎かになっていた私。
突然、昔からの仲良しグループに
呼び出された。
私を含めて5人、それは久しぶりに
集まった女子会だった。
みんな今も近場に住んではいるのだが、
それぞれの生活に普段は忙しい。
「最近どう?元気?」
そんな会話をひとしきり終えて、
みんなが本題に入る。
私以外の4人が、このなかでは昔から割と
何事にも客観的で冷静な私に頼みがあるという。
「このクリニックに行ってきてほしいの」
え?なになに私が疲れてるからって
オススメの病院の話?私そんなにヤバい?
冗談半分の返答をする私に対して、
4人は真剣そのもの。
よくわからないのでとりあえず、4人から
詳しい経緯を聞いてみることにした。
まず最初にそこを発見したのは、
夫の不倫疑惑に悩んでいた友達だった。
悩んで色々調べているうちに、
悩みを聞いてくれるクリニックということで
そこにたどり着いたらしい。
彼女は言う。
「いかにも相談を聞いてくれるタイプの先生って感じの人がいて、カウンセラーっぽい優しい包容力ある声でアドバイスを交えながら話を聞いてもらって、すっきりしたの。
ただ、ほわんとしてると思ってたら時折ビックリするくらい色気がある表情をする瞬間があったの」
はぁ…、よくわからないが、
ひとまずその子に紹介されて次にそこへ
行ってきた子の話を聞こう。
「私が行った日の先生は、聞いてたのと全然違ったの!まずはリラックスした状態で話を聞きましょうってお風呂で温まってから話を聞いてくれて。すごく聞き上手でリードされてる感じなのに、急に照れ笑いする時があってたまらなかった」
いやいや、何の話だっけ?
と突っ込みたくなるが待ちきれない様子で、
3人目の友達が話し出す。
「私が行った日はね!少女漫画から出てきたみたいな先生が真剣に幼なじみの彼氏との悩みを聞いてくれて緊張したんだ。けど慣れてきたら先生の引き笑いめっちゃウケるし、後半は気づいたらほぼ先生がしゃべってた」
ふぅん…?
もういいよ、あと1人の話も聞いてしまおう。
「私はもう、子どもの反抗期ひどすぎて育児に疲れ果てた状態で行ってきた。まず簡潔に私の話を聞いてくれて、物理的に反抗期の期間とか、悩むより今なにができるかとかズバッと導いてくれて育児のモヤモヤもイライラも解消した」
『いや、訳わかんないんだけど?』
やっと私が発言できるタイミングがきた。
でも、返ってきたのは期待外れの答え。
「私たちも訳わからないから、呼んだの!」
参ったな…
彼女たちの共通点は、悩みが解決したこと。
ただ、それぞれが主張する先生の特徴もバラバラでなんだか腑に落ちないので、
昔から客観的な私に最後に行ってきてほしいと言うお願いらしい。
『しょうがないなぁ…ま、私も最近仕事ハードすぎて疲れてるから試しに行ってみるよ』
4人からの依頼を受けて、私は今日
この謎のクリニックの入り口にいる。
私が入り口に近付こうとも、
黒猫ちゃんはそこを動かなかった。
いざ、診察へ…
【黒猫】
「僕から説明するにゃん。
最後に診察を受けた子も、お悩み解決!
疲れた時はぬいぐるみのお友達に
悩みを話してごらん?と先生に言われて
は?って言ったら
「僕の言う事聞けないんですか?」って
態度豹変した先生のギャップに
やられてたにゃん。
つまり、このクリニックの先生は1人じゃ ないにゃん。
最後の子は気付いたみたいだけどね?
謎に包まれたクリニックで、
バラバラの診察を受けてなんでみんな
よくもわからず悩みが解決したかって?
それはだにゃ…」
【医師A】
「こぉーら、お前は勝手にしゃべりすぎ」
【医師B】
「はいはい猫ちゃんはご飯の時間だよ♪」
【医師C】
「にゃんにゃんにゃーん♡」
【黒猫】
「僕に決めゼリフ言わせろにゃー!」
【医師D】
「ほら入り口閉めるぞ」
【医師E】
「なぜ悩みがなくなるかって?
彼女たちは、そもそも
‘ 心 ’ を奪われたからだよ♡」
【謎の白猫】
「次はあなたの街で、当クリニックの
入り口が開かれるかもにゃ?」
~ END ~
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今回のお話の元になったのは…
このプレビュー動画の中に一瞬出てきた↓
こちらのワンシーン↓
ちょっと今までと違う、
意味深な雰囲気に仕上げてみましたが
賛否両論出そうでアップするのドキドキ
してます…
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