"Ken Yokoyama" (2024.09.23) / いしがきMUSIC FESTIVAL 2024 (盛岡)
毎年この時期に盛岡で行われる、入場無料の音楽フェス、いしがきMUSIC FESTIVAL。前日までの大雨の心配もどこかに行ってしまうほどに天気にも恵まれ、無事に開催された。そして今年のメインステージである"ISHIGAKI STAGE”のトリを務めるのはKen Yokoyama。先に記述してしまうが、ライブ中のMCでKen Bandがこのフェスに出演するのは、今年2024年を最後にするという発表があった。あまりにも唐突な発表に戸惑いもありつつ、しかし、"Ken Yokoyama"にとって最後となったいしがきMUSIC FESTIVAL出演のステージの記録を残していく。
すっかり空も暗くなった定刻18:15、フェスのジングルがなり、ステージ後方から数多くのライトがステージを照らし、やがてジングルから2~3分ほど経ち、松本"EKKUN"英二(Dr, Cho)を筆頭にKen Bandの面々がステージに現れる。
「今年も呼んでもらいました、いしがき。最後まで楽しんで帰ってな!」
「東京から来ました"Ken Yokoyama"です。We play PUNK ROCK!」
そう言い叫び横山健(Gt, Vo)が客席に背を向けた状態で『Parasites』のイントロを弾き始めライブは開始。やがて演奏を終えると、「Oi!-Oi!」と客席を煽り始める。そしてそのコールを止めたかと思えば、次の瞬間、横山が弾き始めたのはHUSKING BEEのカバー『Walk』のイントロ。そしてそのまま『4Wheel 9Lives』へと雪崩れ込み、激しいステージライトも相まってどんどんライブそのものの勢いが加速してゆく。
「俺が日本一大好きなフェス。」
横山がそう呟き、続けて話し始める。
「俺たちは今年の初めに『Indian Burn』っていうアルバムを出して、ツアーで盛岡にも来たんだけど、こうしてこのフェスにアルバムを引っ提げてまた戻ってこれたことも嬉しい。」
そんな言葉から続くは、そのアルバム「Indian Burn」より『My One Wish』。途中、ギターシールドが断線し、横山のギターの音が鳴らなくなるトラブルが発生するも、そんな中マイクスタンドに身を委ねて歌い続ける横山の姿にグッときた人は少なくないだろう。
直後のMCでは、断線した理由を「Junちゃんが踏み過ぎたから!」とJun Gray(Ba, Cho)が貰い事故状態に。「なんでもっと太いのにしとかないんだよ!」と横山にツッコむも、今度は「Junちゃんのあそこ並みの太さのやつ?」と横山から容赦ないツッコミ返し。しかし、そこはベテランJun Gray、「そうだね。」と言い返せるあたりその余裕はまさにアナコンダ級。
そして話は最近のKen Bandがフェスに出演する際の選曲の話に。
「フェスっていわゆる鉄板曲を並べて、でゆくゆくはライブハウスに来てくれればなあ、って思ってたんだけど、今はなんかそれ違うなあと」と話し、ゆえに最近フェスに出演する際は新しい曲をメインに並べてライブをしているという。
「でも、このフェスはちょっとそれ違うと思うんだよなあ。」
と話し一瞬客席内から驚きやある種の期待のような歓声が上がるも、
「でもセットリストってもう決めちゃってるのよ。なので新曲を演ります(笑)。」
と話す横山。しかし、次の言葉が出た瞬間、それは横山流のジョークだと理解できてしまうのは難しくなかった。
「喰らってくれ!!」
この言葉の後に鳴らされる曲、『Punk Rock Dream』以外にあるだろうか。そしてこの日も容赦なく、客席へと横山はマイクを投げ飛ばしてゆく。ライブハウスだろうがフェスだろうが、ライブに対するスタンスが全く変わらない様をこの日も見せてくれる。そしてそのまま南英紀(Gt, Cho)の弾くギターに合わせて歌い始めたのは『These Magic Words』。終わり際、「根拠はないけど、大丈夫。きっと大丈夫。」と強く言葉を残し、3カウントで曲を締めた。
「初めて出させてもらったのが2010年。そこからコロナで開催できなかった年を覗いて俺たちは12~13回とほぼ毎年出させてもらってる。だからこのステージからの見慣れた光景が愛おしい。」
「初めて出させてもらった年、起きてホテルの窓のほうから太鼓の音が聞こえて。で、窓を開けたら雨合羽を着た人たち(雨は途中で止んだ)が街の中を歩き回ってる光景があってなんて素敵な光景なんだろうと思った。それから俺の中で盛岡は音楽の街になった。」
しかし、次の瞬間、冒頭にも書いたあの話が横山の口から飛び出る。
「俺たちがこのフェスのステージに立つのは今年が最後になるわ。この先俺たちがこのステージに立つことはないと思う。色々考えたんだけど、これからはまた新たな才能との出会いや新たな楽しみとの出会いのきっかけの場となってほしい。」
そう述べ、この日が"Ken Yokoyama"にとっていしがき出演最後のステージになることが告げられた。
そして、「いしがきMUSIC FESTIVAL、ありがとうございました。」と感謝の言葉を述べるも、その言葉の重みは計り知れない。
「次に演る曲は、このステージがきっかけでできた曲。このステージで共演してなにか一緒に演ろうってなってできた曲。今日は一人足りないけど、一人欠けてるけど、俺が代わりに歌うよ。」
そう言って弾き始めたのは、いうまでもなく『Brand New Cadillac』。最後は「チバユウスケ!!」とその一人欠けていた人物の名を高らかに叫んだ。
「あと1曲やって今日はおしまい。いしがきMUSIC FESTIVAL、長い間ありがとうございました。もうこのステージには立つことはないけど、でも盛岡のライブハウスにはたくさん来るから!今度はライブハウスで会おうぜ!」
そして、ステージ前方で日の丸を掲げていたファンのその日の丸を「ちょっとそれ貸して」と貸りて目の前で広げながら、「おー!俺が初めて日の丸を掲げたのもこのステージなんだよ。」とどこか感慨深げに話す横山。
「最後に演る曲もこのステージで鳴らす意味の大きい曲を演って帰るよ。震災後のパンクロック、『Ricky Punks Ⅲ』!」
タイトルコールを思い切り叫び、その日の丸を左肩にかけたまま、全力で曲を鳴らし、"Ken Yokoyama"にとって最後となるいしがきのステージに幕を閉じた。
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