COUNTRY YARD (2024.12.15) at 八王子 RIPS / "ONE MAN SHOW"
2024年12月15日、日曜日。
COUNTRY YARDが約1年ぶりにライブを行う。昨年11月のUNMASK aLIVE主催の"ONE & ONLY FESTIVAL 2023"に出演して以降、バンドの活動、そしてSNS等の一切の更新すらも沈黙を保ったままだったこの1年。時は経ち今年11月1日。SNS上で突如発表された今回のワンマン公演。会場は八王子RIPS、キャパシティは250人。今後の予定が未定な中、1夜限りの公演にしてはキャパ設定が狭すぎる気がする。案の定、チケットは争奪戦だった。
1年という空白期間は決して長いわけではない。僕の好きなバンドのひとつ、BUMP OF CHICKENは一時期2年ほどライブをしていなかった時期もある。けれども、何故か「どれだけ待っていたか」という気持ちが強く、正直不思議な感覚だった。それは、バンドのことが好きだからという理由も勿論あるが、それ以外の何かもあると思う。
この日は、17時オープン、18時スタート(上のボードでは17:30スタートになってるが…)というキャパの割には余裕のある時間設定。徐々に人で満たされてゆくフロア。そして、予定開演時刻の18時を迎える頃、ステージには八王子RIPSの店長 兼 39degreesのギターボーカルであるバンドウ氏がステージに現れ、まだまだ人が入場できていないことをアナウンス。この時点でもうだいぶ良いくらいには入っていたかなと思っていたが、ここからまだまだ人が入ってきて、結果的には後ろまでギッチギチのパンパン状態に。ここまでパンパンに入った光景、久々に見た気がする。
余裕のある時間設定なんて書いておいて、気づけば押すこと30分、時刻は18:30。「お待たせしてごめんなさい」とYu-ki Miyamoto(Gt, Cho)を筆頭に遂にメンバーがステージに登場。各々の楽器をスタンバイ、そしてメンバー、機材を照らすかのようにステージ上に置かれたランタンのようなライトに光が灯り、今COUNTRY YARDのライブが幕を開ける。
1曲目は『Strawberry Days』。久々のライブでも1曲目にこの曲を持ってくるあたりが実にカントリーらしいと思う。赤い照明がステージを照らし、曲の持つサイケデリックな雰囲気、じわじわと高まっていく高揚感。少しの緊張感すら感じる。
「We are "COUNTRY YARD" from Tokyo.」
Keisaku "Sit" Matsu-ura(Vo, Ba)がそう言った次の瞬間、Shunichi Asanuma(Dr)から鳴り始めたのは『Quark』。イントロが鳴った瞬間、待っていたと言わんばかりにモッシュが発生し、何人もの人がステージめがけて飛んでゆく光景。そして、その飛んできた人をSitがグータッチで迎えるこの光景。これをずっと待っていたんだ。
『Quark』が終わり、Sitがメンバーひとりひとりとアイコンタクトで確認をした後、「本気で来いよ」と客席を更に煽れば、バンドは『In Your Room』を投下。間奏では、顔でギターを弾く男Hayato Mochizuki(Gt, Cho)の痛快なギターソロ、そして、Miyamotoの全身で表現するギタープレイもそのひとつひとつがCOUNTRY YARDをなす大切な要素。そしてSitが「はい、せーの!」と振れば場内に沸き起こるシンガロング。最高以外の何物でもない。
「今日はお前らのこと信じていいよな。誰も悲しい顔で帰るなよ。皆幸せな顔、笑顔で帰るんだよ。」
「1、2、3、4、5、6、7…」
無論、タイトルコールされるは『Seven Years Made My Now』。そして「Anywhere, Everywhere」とSitが呟けば、そのアルバムのオープニングを飾る『River』が演奏される。
最初のMCでは、改めて今日来てくれたことへの感謝を告げるSit。
「俺らはこうして周りを仲間に囲んでもらって、目の前にも仲間が広がっていて。今日は大家族会かなにかですか(笑)」
この日はパンパンのフロアもそうだが、ステージ袖も親交のあるバンドマンやメンバーの友達で溢れかえっているのが、客席からもわかった。そう話したのち、
「でも、この言葉は俺の口から言わないとな。いつも心配かけてごめんな。その分を一瞬で取り返す。」
その言葉が導くかの如く、次に鳴らされたのは、『Don't Worry, We Can Recover』。
「改めましてCOUNTRY YARDです!」
Sitがそう告げると、バンドは『I'll Be With You』を投下。イントロのワンツーの掛け声もばっちりきまり、そしてラスサビの冒頭では、Sitがマイクスタンドを持ち上げ、客席に曲を委ねる。そしてそのまま降ろしたマイクの向きが後ろになったまま、客席に背を向けて最後までSitが歌を歌いあげていく。続くは『Umi』。浮遊感漂うサウンドが客席の中を流れゆく感じが聴いていて心地よい。
機材の交換を挟み、次に鳴らされるのは『Alternative Hearts』。そして「We're still alive」と曲中で何度も歌う『Orb』の演奏後には「勝手に殺すんじゃねえ!生きてるわ!」とSit。更に「今夜は良いベッドで寝れます」と『Bed』。更に『Smiles For Miles』と4曲をプレイ。『Smiles For Miles』をライブで聴くといつも脳内にPVの映像がフラッシュバックしてくる。4人が個々に歩む姿、そして最後に4人が円形になり互いの姿を見つめながら曲を鳴らす場面。その観点で言うと、『Alternative Hearts』もそうかもしれない。
演奏後Miyamotoが話し始める。
「それぞれの価値観が変わってきて、それを整えて今日ここでライブすることができている。次の予定は決まってません。期待しつつ、でも期待しすぎずに待っててほしい。ShunちゃんはdustboxやKOTORIでドラムを叩いてるし、Sitもmokuyouviをやってるし、そうやって個々の活動の幅を広げていけたらとも思う。俺も何かやろうかな。とにかくこの4人でCOUNTRY YARDなんだということを改めて思えた。」
続いてSitも話を始める。SNS上で何が良くて何が悪いとか、これは良くてこれはダメみたいな論争が繰り広げられてるのを目にしたりする。けど、そうじゃなくてまずは相手のことを信じて受け入れることそれが大事なんだということを話してゆく。例え、今この話してるMCが長いと思った人がいたとしても、それすらも良しとして受け入れればいいんだ、そう思う人がいても良いのでは、そうあっていくべきと語る。
「後半戦、始めていきます。今夜の八王子の星は綺麗かな。もし星がない夜空だったなら…お前が輝けばいいんだ!」
タイトルコールされるは『Starry Night』。曲が始まれば、また一瞬にしてステージめがけて何人もの観客が飛んでいく。この日はステージと客席の間にスペースはない、いわばゼロ距離。ゆえに何度も飛んできた人たちがメンバーのマイクスタンドに当たって、スタンドがずれたりマイクが外れたりという場面が散見された。しかし、それすらも寛大な心で受け入れるのはこのCOUNTRY YARD。特にSitのマイクスタンドは何度もそうなっていたが、Sitから笑顔が絶えることはない。
そして曲が終わると、Sitは徐にとある曲を歌い出す。
「おいKUZIRA!いるんだろ?まあやんねえけど!」
Sitなりの同じレーベルメイトであるKUZIRAへのラブコールなのではと思う。直後に鳴らされた『Tonight』がラブソングなだけあって余計にそう考えてしまう。考えすぎか。
「近い距離で見える景色も楽しいけど、遠回りして見える景色も良くない?」
そう語れば、続くは『Long Way Around』。そしてSitが言葉を紡ぐ。
「またライブができるようになったら報告します。それまで待っててほしい。次で最後の曲になります。今日は4人で決めてアンコールはやらないことにしたので、次の曲で本当に最後です。短い時間だったかもしれないけれど、今この4人でできる最高な時間だったと思います。」
会場からは自然と拍手が沸き起こる。そして、
「4人を代表して伝えさせてもらいます。今日は来てくれて本当にありがとうございました。」
そして最後にタイトルコールされたのは『Dokoka』。嚙みしめるように最後の曲を聴くのと同時に、今日この1日がまるで走馬灯のように脳内を駆け巡る感覚。ひとつの映画を見ていたような感覚。
「We are "COUNTRY YARD" from Tokyo.」
「ありがとう、また会おう!」(Sit)