ここで生まれたら”悟り”が開けるかも⁈ ブッタ生誕の地「ルンビニ」
私にとって”忘れられない旅”とは?
私は旅行が大好きで、国内外を問わずよく出かけます。主に自然の中でリラックスすることを目的としており、大きな目標や変化を求めているわけではありません。普段は『今回も良い旅だった。リフレッシュできたし、また明日から頑張ろう』と思う程度ですが、時々心を動かされる旅があります。
そういう旅が、私にとっては、”忘れられない旅”です。今回は、そんな“忘れられない旅”の一つをご紹介します。
ブッタ生誕の地「ルンビニ」に私が行った理由
私はもともと仏教徒ですが、日本人によくあるように、お墓参りやお葬式、法事の時だけ拝む程度で、信仰心はあまり強くありません。お坊さんのお経を聞いていても、退屈で眠たくなるタイプの人間です。
今でもそのスタンスは変わりませんが、草薙龍瞬さんの著書『反応しない練習』に出会ってから、ブッダに興味を持つようになりました。
それまで私は、ブッダを教祖のような存在だと勝手に思い込んでいました。しかし、実はアドラーのように素晴らしい哲学者だったのかもしれない、と感じるようになったのです。『反応しない練習』を読んで、ブッダの教えが今でも十分に通じるものだと考えるようになりました。
ブッダの人生を知っていくうちに、彼が王子として生まれながらも離婚を経験し、どんなに厳しい修行をしても悟りが得られないと感じたことなど、私の想像とは全く異なる人物像が浮かび上がってきました。
それでも、ブッダの教えには心に深く響くものが多く、法事の時にお坊さんのお経を聞いているだけでは気づけなかった新しい世界が広がっていきました。
そして、現在ネパールに赴任していることもあり、せっかくの機会なので彼の生まれ故郷であるルンビニに行くことにしました。どんなところで生まれたら、こんな考えになるのだろうと、興味が湧いてきたのです。
Buddha Airに乗って
まず、Buddha Air(ブッダ航空)に乗って、Gautam Buddha Airport(ゴータマ・ブッダ空港)まで向かいました。名前が駄洒落のように聞こえますが、これは偶然で、カトマンズからルンビニに行くための一般的なルートです。
Buddha Airはネパール国内では大手の航空会社で、信頼性が高く、安全で快適な空の旅を提供してくれます。
今回は、たまたまネパールに遊びに来ていた母と一緒に、この旅を楽しみました。
国連事務総長とニアミス?!
空港に降り立ち、車でルンビニに向かいました。車窓から見える風景は、とても穏やかな田園風景で、平らな土地に広がる豊かな田んぼが地平線まで続いていました。
土壌は恐らく粘土質が高く、少し窪んだ場所には水がたまり、そこに美しい蓮の花が咲いていました。仏像が蓮の花の上に座っているのは、ブッダの故郷の花だったのだなと、深く納得しました。
そんな中、ホテルの入り口の道路がネパール軍によって封鎖されていて、通れないという事態が発生しました。運転手さんに「どうして通れないんですか?」と聞くと、「今日は国連事務総長が来るから道路が封鎖されてるんだよね」と、のんきに答えます。「何分くらい封鎖されますか?」とさらに尋ねると、「長くても1時間くらいじゃない?」とのんきに言いますが、1時間って結構長いですよね。仕方なく、近くの商店で缶ビールを買って、タバコでも吸いながら待つことにしました。
そして、30分後…
アントニオ・グテーレス国連事務総長御一行を乗せたヘリコプター3機が、大爆音を立ててやってきました。
のどかなルンビニに不釣り合いな大爆音でしたが、運転手さんも、近所の人たちも、工事中の作業員さんも、みんな手を止めて携帯で写真を撮ったりして、歓迎ムードです。誰も「うるさい!」とか「道を塞いでる!」なんて文句を言わないんですよね💦
まぁ、私たちも日程がぎっしり詰まってるわけじゃないし、気にしないことにしました。
ブッタの涅槃イメージってこの場所なのかも?!
ホテルでチェックインした後、いざ観光に出かけました!どこに行っても蓮の花が咲いていて、とても穏やかで素敵な場所です。
ただ、どこを見ても「グテーレス国連事務総長、ようこそルンビニへ!」という看板があり、景観が少し損なわれていました(苦笑)。でも、きっと事務総長もこんなに歓迎されて喜んでいるでしょうね。
彼の経歴について詳しくは知りませんが、ポルトガル出身なのでカトリック教徒である可能性が高いと思います。それでも、ルンビニの人たちはそんなことを気にしません。彼がどこの国の人であろうと、どんな宗教を信じていようと、ルンビニに興味を持って訪れてくれたことを歓迎しているのです。とても寛容で素敵な人たちです。
そんなとき、駐車場から出る際に、一台の車が一方通行を逆走して道を塞いでしまいました。すると、たくさんの車がクラクションを鳴らし始めました。
私は運転手さんに、「みんな、逆走した車に怒ってクラクションを鳴らしているんでしょ?」と聞きました。すると、運転手さんは「みんな、自分が進む意思を伝えたり、危険を知らせるためにクラクションを鳴らしているんだよ。それに、こんなことで怒るのはおかしいよ」と答えました。
「こんなことで怒るのはおかしいよ」と言われてしまい、私は「どうしてこんなことで怒っていると思っていたんだろう?」と考え、頭が真っ白になってしまいました。次の会話を続けることができませんでした。
その瞬間、「あー、これがブッダの生まれた場所ルンビニなんだな。」と思いました。私が、心を動かされた瞬間です。
ここで生まれたら”悟り”が開けるかも⁈
蓮の花が咲く、とても穏やかで静かな場所。
異教徒かもしれない偉い人が大爆音を立ててヘリで来たり、道を封鎖しても、「来てくれてありがとう」と言える人たち。
誰かが小さな失敗をしても、穏やかに笑って許している感じ。
これが、ブッダの生まれ故郷です。
最後に、運転手さんに「ブッダって、ネパール人だったのかな?それともインド人だったのかな?」と尋ねました。すると、運転手さんは「何言ってるの?ブッダが生きていた時代には、ネパールもインドも存在していなかったんだよ。だから、その質問には答えようがないよ(大爆笑)」と教えてくれました。確かに、その通りです。
ブッダの生まれ故郷は、とても寛大で静かで、瞑想に適した環境が整っています。住んでいる人たちも素晴らしく、ここで生まれたら悟りが開けるのかもしれないと、思わせるような場所でした。
今回の”てん子語録”
ブッタの生まれ故郷は、蓮の花が咲くとても素敵なところ
ブッタの生まれ故郷の人たちは、外国の偉い人や小さな失敗に対しても寛容に対応する素敵な人たち
ブッタの生まれ故郷は、ここで生まれたら悟りが開けるのかもしれないと、思わせるような場所
ブッタの生まれ故郷を訪ねる旅は、そこで生活している人たち、そこに残っている自然、全てに感動させられて心を動かされる”忘れられない旅”になった。
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