地球の安全な歩き方2 ー 人の流れとマナー
20年以上、アジアとアフリカを舞台に国際協力を仕事にしてきました。そのため、日本では治安が悪いと言われる国で生活していたこともありますが、幸いにも今までに大きな犯罪被害に遭わずに済みました。また、もう一つのライフワークとして護身術としての武道をやってきたこともあり、安全対策に対して他の同業者よりも意識的に取り組んできたところがあります。そのため、自分なりのノウハウがあるので、前回に引き続き、海外生活での安全対策について述べたいと思います。
前回のおさらい
前回は人混みの中でスリやひったくりに遭わないために、まず、気をつけることは、しっかりと前を見て歩くべきと述べました。それができたなら、次は、自分の周囲全体に対して視覚と聴覚を最大限に使って注意力を高めることも述べました。その具体的な方法の詳細は、とてもマニアックな心身操作法の説明になるために省く旨も書きました。今回は、こうした注意力とは少し視点の異なることを説明したいと思います。
人の流れを意識する
歩行者で混み合った、例えば、ラッシュ時の駅などの場所では、大多数の人がほぼ同じ速さで同じ方向に歩いて人の流れができています。この流れに合わせて歩くことが、スリやひったくりのターゲットとならないためには重要です。なぜなら、流れに合わせて動く相手に近づくには、流れに逆らう必要があり、目立ってしまうからです。そのため、自分が流れに乗っていれば、違う動きをする人が怪しいと見当がつけられます。そういう人を見つけたなら、そっちに視線を向けて、しっかりと相手を見ましょう。相手は気づかれたと分かれば、あなたをターゲットから除外します。
人混みでしてはいけない行動
上に述べた通り、流れに乗って動くことが大事ですが、それと反対の良くある行動について説明したいと思います。まずは、人の流れの中で急に立ち止まることです。これは、周囲の人の動きを全く気にしていないので、格好のターゲットです。なので、人混みで立ち止まる必要がある場合は、壁や柱などがある流れを邪魔しない場所まで移動してから立ち止まりましょう。また、電車やエレベーターの入り口を塞ぐように立つことも人の流れを止める行動です。そのため、出入り口に立つことはなるべく避けましょう。止むを得ないときは、人の動きに注意して、ドアが開くときには邪魔にならないように道を開けましょう。
護身とマナーの良さは一致する
上に書いたような行動は、つまり、人の流れの邪魔をしないことなので、マナーの良さにつながることに気が付かれた読者も多いと思います。こんなことを書いていると、昔、オーストラリア旅行で見た光景を思い出します。バスに乗ろうとすると、何人もいた乗客がサッと道を開けてくれました。特に護身などに注目しなければ、マナーの良い人たちといった印象を受けるのみでしょう。でも、私の受け取り方は、「(武道的な意味で)なかなか出来る人たち」でした。身のこなしが日本の電車内での動きより何倍も軽やかだったので、こんな印象を持ちました。
武道で礼儀が強調される理由
武道とは戦い方を学ぶことなので、粗暴な者に教えると社会にとっては害悪になりかねません。そのため、大抵の武道では戦い方と同時に礼儀をきっちりと教えます。ただ、個人的には上に述べた通り、武道が目指す護身にかなった行動はマナーの良さ、つまり、礼儀にもかなうことが、もう一つの理由ではないかと考えます。こうした考え方を他の武道の師範から聞いたことはありませんが、日本の武道は華美や見苦しさを嫌い、シンプルな美しさを求めるので、間違ってはいないと思います。なぜなら、シンプルな美しさとは、つまり、機能美のことであり、武道にとって機能美とは護身として役に立ち見苦しくない、つまり、礼儀にもかなう動きと言えるためです。
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