ケニアの食卓 昼食のバリエーション
はじめに
30年近く、アジアとアフリカを舞台に、国際協力という仕事をしていましたが、最後は、去年まで3年間赴任したケニアでした。ケニアには以前にも3年間赴任したことがあり、通算6年間、母国日本以外で最も長く滞在した国です。そのため、思い出が沢山あり、その中には毎日のことである食の思い出も大きな部分を占めています。そして、近年はスマホの発達で、いつもカメラを持ち歩いている状態なので、食べることが好きな私は、ほぼ毎食を撮影しています。そこで、3年間で撮り溜めたケニアの食卓を紹介したいと思います。
職場の食堂
私の働いていた職場は、ナイロビの北東に接するティカと呼ばる街にあるケニア国立農業研究所でした。自分のオフィスは、日本の援助で1970年代に建てられた建物を、近年、リノベーションしたものでした。そこから数分歩くと、食堂のあるメインの建物に着きます。これは、もっと、新しく、立派な建物ですが、なんでもビルゲーツ財団の援助で建てられたそうです。食堂のダイニングは、広々とした中庭に面したリゾート風の造りで、一般的に職場の食堂としてイメージされるものより立派なものです。こういう趣味も富豪のビルゲーツ氏によるものなのかと、勝手に合点していました。ただ、そこで供される昼食は、富豪の趣味とは異なり、素朴でバリエーションのないものでした。日本で同じような品揃えならば、文句が出そうなところです。でも、慣れてしまえば、普段の食事というものは素朴で飽きないようにできているので、毎日、美味しくいただきました。
ライス
以前の記事に、職場の昼食としてウガリとビーフシチューについて書きましたが、これはケニアを含む英語圏アフリカで、とても代表的な普通の食事です。そして、少ないながら昼食のバリエーションがあり、それは、主食をウガリからライスに変えられることです。ライスはインドで食べられているような長粒米で、調理法は日本のご飯のように白米だけということは稀です。大抵は、細かく刻まれた野菜が一緒に炊き込まれていたり、サフランライス、あるいはピラウ(ピラフが語源と言われるアフリカ風炊き込みご飯)だったりします。日本では、長粒米は好まれませんが、私は海外生活が長いせいか、元々、エスニック料理が好きなせいか、長粒米には短粒米とは違った美味しさを感じます。特に、インドのカレーやケニアのビーフシチューには良く合います。そして、付け合わせの葉物野菜は、ウガリにはスクマウィッキー(ケールの微塵切りいため)ですが、ライスにはキャベツ炒めになります。主食によって、葉物野菜が変わる、このこだわりが面白いです。
ムキモ
ビーフシチューと一緒に食べる主食は、まだ、他にもあります。ムキモと呼ばれる一種のマッシュポテトです。洋食のマッシュポテトと違うところは、緑の野菜が一緒に練り込んであり、見た目が緑色なところと、メイズ(甘くないとうもろこしでウガリの材料)が入っているところです。食感は洋食のマッシュポテトより重くなく、量がたくさん食べられます。私や同僚の日本人はムキモを少なめに盛ってもらったものですが、ケニアの人はてんこ盛りにして食べるのが普通です。
チャパティ
上記以外に、チャパティも主食として一般的です。これは、元々、インド起源のクレープ状の食べ物で、今は、日本でもインド料理屋などで見かけ、そこそこお馴染みになった、あのチャパティーと同じものです。これが、ケニアでは、ローカルフード化しており、インド料理とは認識されていません。この現地化の程度を日本の食べ物で例えるならば、トンカツ程度です。そして、チャパティの面白いところは、他の主食(ウガリ、ライス、ムキモ)とは違って、ビーフシチューと同じ皿に盛られずに、別皿に供されるところです。なんとなく、チャパティーだけは一つの皿に収まりが悪いところが、そうする理由のようです。
まとめ
昼食のバリエーションといっても、主食が4種類でおかずは同じというものです。実は、もう2種類ほどの食事のバリエーションがありますが、これでも毎日になると、いつも同じものを食べているように感じます。それでも、日常的に食べる大衆料理というのは長い時間をかけて淘汰された、ある意味、究極の食事なので、繰り返し食べても不思議と飽きがこないものです。外国に住む醍醐味の一つは、こうした現地の当たり前の食事を口にできることです。高級料理であれば、東京には様々な国の料理店があります。でも、各国で食べられている普通の料理は、やはり、現地で食べるしかありません。そして、それらは各々の気候や風土にあったもので、その土地の良さを手軽に体感させてくれます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?