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ケニアの食卓 庶民のご馳走:ニャマチョマ

はじめに

30年近く、アジアとアフリカを舞台に、国際協力という仕事をしていましたが、最後は、去年まで3年間赴任したケニアでした。ケニアには以前にも3年間赴任したことがあり、通算6年間、母国日本以外で最も長く滞在した国です。そのため、思い出が沢山あり、その中には毎日のことである食の思い出も大きな部分を占めています。そして、近年はスマホの発達で、いつもカメラを持ち歩いている状態なので、食べることが好きな私は、ほぼ毎食を撮影しています。そこで、3年間で撮り溜めたケニアの食卓を紹介したいと思います。

庶民のご馳走

ご馳走といっても、現代の日本では色々な国が起源の様々な料理が食べられるので、ご馳走の定番はないかも知れません。フレンチ、イタリアン、中華、和食、各国エスニック料理と、種類も、また、値段の高低でも数限りなくあります。でも、私が子供の頃、昭和の庶民にとっては、調理法はともかく、牛肉を食べるとご馳走と感じたものです。外食でご馳走と言えばビフテキだったし、家庭での贅沢はすき焼きでした。昭和も末になると、ステーキよりは手軽で、すき焼きより肉の素材の味が楽しめる焼肉も一般的になりました。ケニアでも事情は似ており、庶民にとってのご馳走は、調理法云々よりも、どかっと肉が食べられることです。

ヤギ肉の炭火焼

ケニアの庶民的でふんだんに肉を使った料理の代表といえば、「ニャマチョマ」という料理です。「ニャマ」とは肉という意味で、「チョマ」とは焼いたという意味です。つまり、「ニャマチョマ」とは焼肉の意味ですが、日本の焼肉とは随分と違っています。まず、肉としては牛肉や豚肉も食べますが、何といっても、定番の一番人気はヤギの肉で、キロ単位に大きく切った肉の塊を炭火でじっくりと焼きます。味付けは塩だけなので、肉の素材の味がダイレクトに味わえる素朴な料理に仕上がります。

ニャマチョマの注文

庶民の気楽な料理なので、注文に複雑な手順があるわけではないのですが、それでも、最初はどうやって注文して良いのか戸惑ったので、説明します。注文は席に座ったままでもできますが、普通はオープン式の厨房に行って肉を見ながら、どれを焼いてもらうか選びます。大きさも部位も色々あるので、私が注文するときはシェフに人数を伝えて、ちょうど良い大きさで美味しい部位を教えてもらいます。大抵、お勧めはモモの部分です。そして、注文した肉が炭火で焼かれ始めたのを確認して席に戻ります。

肉の焼き加減

生肉から焼き上げると美味しいのですが、調理に最低40分はかかります。そのため、人気のニャマチョマ専門店は、大抵、半焼きにした肉を注文を受けてから焼き直します。すると20分以内に食べられるので、お客にとっては待ち時間が短縮されて助かります。ただ、この半焼きの加減で、かなり調理の良し悪しが決まってしまいます。半焼き時に火が通り過ぎると、仕上がったときにはパサパサとなり、肉の美味しさは半減してしまいます。反対に、半焼きの塩梅が上手な店のニャマチョマは、ジューシーで本当に美味しいです。

ニャマチョマの作法

こんがりと焼き上がったニャマチョマは、まな板皿の上に置かれて席まで運ばれます。そうして、お客が肉の焼け具合を確認した後、ウェイターが肉を一口サイズに切り分けます。それが終わると、いよいよ食事の開始です。肉は手づかみで、塩を皿に盛って、塩を付けながら食べます。よく、一緒に食べられるものは、カチュンバリと呼ばれるサラダと主食のウガリです。カチュンバリは、トマト、玉ねぎ、コリアンダー、唐辛子をみじん切りにして混ぜたものです。日本人にとっては、サラダというより、薬味と言った方が分かりやすいかも知れません。一方のウガリは、東アフリカでは代表的な主食で、甘くないトウモロコシの粉を熱湯で練って、餅のようににしたものです。ニャマチョマを食べる時は、あくまで肉が主役なので、主食のウガリも少なめに食べます。そして、これらの食べ物は、全て、豪快に手づかみで食べます。

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まとめ

ニャマチョマは、素朴なだけに肉の美味しさがダイレクトに味わえる料理です。私もこの記事を書きながら、唾が出てきてしまうほどです。そして、これがご馳走となっている理由は、しっかりと肉が食べられる以外に、もう一つあります。一つのまな板皿にみんなで手を突っ込みながら食べることで得られる親睦です。日本であれば、鍋料理が、ちょうど同じようなものです。同じ鍋を突っつく楽しさと、同じ皿から肉を手づかみする楽しさは、遠い国の間でも人間として共通した感性があることを実感させてくれます。




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