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【初学者向け】「審判・訴訟・審決」の違いについて
「無効審判や取消訴訟、確定審決などがありますが、審判・審決・訴訟の違いを教えてください」
という主旨のご質問がありました。
このご質問について、今回は弁理士試験の受験勉強の範囲内で、できるだけ平易にお答えしてみます。
1. 審判
まず「審判」とは、特許庁がした行政処分に対する、準司法的な不服申立て手続のことです。
「特許庁がした行政処分」とは、たとえば、出願審査に対する「拒絶査定」(特49条)があります。
また、たとえば実用新案権の設定登録(実14条2項)も行政処分の1つです。
このような特許庁の処分(手続の結論)に対して、納得がいかず、結論をひっくり返したいときがあります。この時にする不服申し立てが「審判」です。
この審判は、準司法的手続き、すなわち裁判類似の手続きで進行します。
2. 審決
そして、審判における終局的な結論が「審決」です。特許法でも、
「審決があったときは、審判は、終了する。」(特157条1項)
とありますね。
審査における結論としての行政処分が「査定」
審判における結論としての行政処分が「審決」
という整理もできるかと考えています。
3. 訴訟
この流れで説明すると、特許庁が下した審決という行政処分に対して納得がいかないときに、司法の場でする不服申立てが「訴訟」です。
もちろん、「訴訟」とは審決に対する不服申立てに限らず、およそ私たちが何らかの問題について法律的に解決を図りたいときには、最終的にはすべて司法(裁判所)での判断を仰ぐことになります。
これは、日本国憲法76条2項に、
「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」
と規定されていることに対応してます。
つまり、行政機関が私人に対してなんらかの不利益な処分をした(たとえば拒絶査定)として、その不服申し立て手続をその行政機関が設けていたとしても(拒絶査定不服審判)、その不服申立ての結論(拒絶審決)に納得できないときのために、必ず裁判所に訴訟を提起することができる、というわけです。
不服申し立ての最終ステージは必ず裁判所、これが、
「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」(76条2項)
の意味です。
冒頭のご質問の回答は以上です。
4. 勉強の進め方
最後に、学習を進めるにあたって、今回のような疑問が生じたときに誰か回答してくれそうな人に質問をする姿勢は非常に大切です。
「やり続ける」
「助けを求める」
この2つは、望む結果を出すための必要十分条件ですから。
一方で、質問しても答えがかえってくるために時間的なブランクが生じますので、自分で解決するためには、『法律用語辞典』
たまーに参照してます
— 弁理士試験の出題予想@「50打席亭無安打」[短答51(/60)点・論文280(/400)点over] (@benrishijuken) September 25, 2020
より上位の概念(たとえば「処分」)
について語義を確認したいときに重宝してます
『法律用語辞典』https://t.co/F0FX4EtAes#弁理士試験の受験勉強
のようなリファレンスを用意して、逐語的にチェックできる学習環境を用意しておくことを強くオススメします。
また、勉強するときに民間の学校に通って誰かに教わっているのであれば、質問の相手はその先生に集中させたほうが得策です。受講料には質問に答えるための費用も当然含まれていますし、継続的に教わっている先生に質問を集中させることによって、あなたの理解のクセや学習の進捗に関する情報が、特定の先生に蓄積することになるからです。
したがいまして、もし教わっている先生に質問しづらいという状況があるのでしたら、まずはその状況を改善したほうが良いかと考えます。
その場合は、
「先生に質問しづらいのですけど、なにかよい改善方法はありますでしょうか?」
と尋ねればよいです。
もちろん、このことは「僕に質問しないでほしい」ということを意味しません。
僕に質問してもらうこと自体はなんら問題ありませんし、僕自身も受験生のナマの疑問が知ることにはメリットがあります。
ただ、質問を寄せられたとて、回答することを必ずしもお約束できないため、質問する相手として適任だとは正直思えません。
とはいえ、これからもアカウントがある限り誰からのDMも受け付ける*考えですので、気軽に質問できるということであれば、引き続き遠慮なくどうぞ。
*このことは質問に対し回答する、対応することを直ちに意味しないことは軽く念押ししておきます
5. 知財検定2級のススメ
最後に、弁理士試験の受験勉強を進める過程で今回のような内容の疑問が複数出てくるようであれば、まず手始めに知的財産技能検定の3級または2級の問題を全問正解できるレベルにまで知識をそろえたほうが弁理士試験の合格の近道かもしれません。
初学者が弁理士試験の受験勉強だけを続けていると、基礎的なことが抜け落ちたままカリキュラムが進んでしまい、基礎固めができないという状況に陥りがちです。
この不具合を解消するために、学習の初期の段階で知財検定2級の合格を目指しつつ、そのレベルをクリアした後に、弁理士試験の短答式試験や論文式試験の対策に本格的に入っていくことを推奨しています。
もっとも、既存の受験カリキュラムでは知財検定と弁理士試験の接続が必ずしもなめらかではないため、新たな教材づくりを通じて、弁理士試験の最終合格まで一直線で進めるための体制を整えようと、計画を実行中です。
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