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#14.クレーム作成時のこだわり

 今、企業知財として自分がこだわってることを記事にしてみようと思います。

 私は企業知財の特許技術者となって約4年ですが、異動してきてから今日まで色んなところで『クレームの重要性』に関する指導を受けてきました(今は指導する機会もありますが)。自分へのメモも兼ねて、まとめていこうと思います。

1.特許請求の範囲は権利書

 これは弁理士の勉強をした人、してない人でも知財に関わる人なら誰しもが知っていることだと思います。

 だからこそクレームは、明確でないといけないし、読み手が一義的に解釈できる表現であるべきだし、広い範囲が良い、と誰しもが教えられていると思います。では、まず権利範囲が広いとはどういうことなのでしょうか?

2.先行技術との差異は1つ

 私がクレーム作成で一番こだわっているのは、先行技術に対する構成要件の差異を一つにすることです。これが最も広い権利範囲だと考えています。

 弁理士の実務修習時のグループワークで、広い権利範囲について様々な意見を聞きました。クレームを短い文字数で書く、不要な限定を外す、という意見を言う人が多かったです。ただ単に文字数を短くしたり、物の修飾語を外していくと、2つの構成要件の関係性が明確じゃなかったり、定義が不十分な用語が突然と登場するクレームになってしまいます。だから、文字数が長くても、構成要件に修飾語がついているからと言うだけで、権利範囲が狭くなる、ということは言えないと思います。クレームの体をなさなくなっては、いけませんからね。

 また、これだけコモディティー化している世の中ですから、新規材料、新規デバイスの発明なんて稀です。先行技術がない特許は、短い文字数で特許取得も可能かもしれませんが、私の仕事ではそんな発明ほぼほぼありません(それは、それで問題かも)。

 裏を返すと先行技術の調査が重要だと言うこともわかりますね。

3.その1つの要件で発明の課題を解決する

 単に1つの構成要件で差を出すだけでは、新規性が出るだけです。その1つの構成要件で発明の効果が生じ、発明の課題を解決できることにより、進歩性が出てきます。だから、先行技術との差を出す構成要件で、発明の課題を解決させるように、クレームと発明のストーリーをまとめます。ここで発明のストーリーとは、課題→解決手段→効果のことです。以下の記事もご参考ください。

 なお、この考えは日本の特許のみと考えてください。私はアメリカでは、いわゆる『おいて書き』のところで差があるだけでも出願してしまいます。日本では、特徴部に差がないと、組み合わせ容易や周知技術の転用として、進歩性の拒絶理由を受けることになります。アメリカでは進歩性は求められません。日本とアメリカは特許の考え方が全く違いますので、ご注意ください。

 私達はよくこの差異を出す部分を、発明の特徴、発明の本質、なんていう表現をすることもあります。

4.発明の特徴でない構成要件は可能な限り外す

 そして最後の仕上げです。まず最初からクレームを広く、短くしようとは考えずに、上からの流れで行くと、ある程度、長いクレーム案ができると思います。

 上述した差異を出す構成要件(発明の本質)以外は、発明の課題が生じる状況となるために必要な構成要件のみ残します。

 よく技術者や技術者上がりの人がクレームを作ると、その製品を実施する時に必要な構成を全て構成要件に加える人がいます。特許の実施可能要件ってのは明細書の開示のことであって、クレームの構成のみで発明ができなくても拒絶理由にも無効理由にもなりません(課題を解決できない構成だと拒絶理由をもらいますけど)。これが最後の仕上げです。

 さらっと書きましたが、これは4年経験した今でも日々これ成長と言った感じです。まだまだ成熟してきてません。。


 いろいろと書こうとかと思いましたが、今回は先行技術との差だけの話題でクローズします。他にもクレームを作る時にこだわっていることは沢山ありますので、また折りを見て別の記事にまとめていこうと思います。読んでいただきありがとうございました。

記事を読んでいただきありがとうございました。 支援をいただければ、また新しい記事を書くモチベーションに繋がります。よろしくお願いします。