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ざまぁみろの一撃
だっりい。二日酔いだよ。起きたら昼前だった。こんな寝られたのいつ以来だろ。というか酒で失神してただけか。まぁいいや。酒を飲んだ夜は大体ろくに食ってないんで、空腹に何かぶち込みたくなる。何にもねぇな。めんどくせぇけど、なんか買ってくるかな。シャツと短パンの身軽な軽装で気楽に外に出られる。夏の良いとこはこれだよな。かと言って他に何も浮かばず、その季節ももう終わる。遠目には積乱雲も立ち込め、空の半分ぐらいに晴れ間が見える。どうせ一雨降るんだろ。土の臭いがほのかにかすめた。
近所のスーパーに向かう。ちょうど駅前からの通りに面してる。駅の方を見ると、提灯がくくられて出店と舞台があるのが分かった。ああ、そういや祭りだっけか。いつもより通りに人が多い。なんか柄の悪いいかにもなバカ面もちらちら歩いてる。ったく、うるせぇんだよ。うるさいってのは何も音だけじゃねぇんだってのが最近になって分かった。特に音も鳴ってなかったが、喧騒の要因が目に留まるだけでうんざりする。最近は他人に対しての思い遣りなんかまるでなりを潜めて、まわりがどいつもこいつも道端のクソみたいに映る。実際そういう奴らと相対する機会が多くなった。そんな連中の浮足立ちなんて見せられると、本物の地獄絵図でしかない。やるなら地獄でやってくれよ。いや、ここが地獄か。俺にとっては。プイッと空を向くと晴れ間はさっきより少なく、例の雲が近づいてきてる。あ〜あ、こんな祭りの日に豪雨が控えてるのか。俺はさっさと安物を買い漁ると、バカノアツマリ、あ、違うか、イナカノマツリを尻目にそそくさと屋根の下に戻った。
安物の濃い味が酒に浸った五臓に染みる。食欲が失せるとすぐに退屈が迫ってくる。それを数分誤魔化す為のタバコに火を点けボーっとしてたら、外からバタバタ地べたを雨足が叩き始めた。グッと暗くなった。雨もどんどん強くなる。おいおい、外の奴ら大丈夫かよ。しかもゴロゴロ鳴ってねぇか。パッと光が明滅したかと思ったら、すぐに落雷の音が聞こえた。すげえ近いなこりゃ。その辺落ちたんじゃねぇのか。タバコを消すと、またすぐもう一本を手に取った。いいね、もっとやれ。せっかくだから出来る限り長く降ると良い。祭りなんだから、このまんま全部吹き散らかしちまえよ。たまには奴らのお膳立てなんてしないで、俺のストレスに添い遂げてくれたっていいじゃねぇか。でも二本目のタバコの火が消える頃、雨も止んじまった。で、すぐに日が出てきた。なんだよ、つまんねぇな。続けざまに三本目に手が伸びた。まぁでも、この先こんな雷雨だけじゃ済む訳ねぇからな。あ〜あ、だから言わんこっちゃねぇのに。そう呟きながら、いつか鉄槌が落っこちてくとこを少し離れから眺める時を頭で巡らせて目を閉じた。どいつもこいつもうるせぇんだよ。ざまぁみろ。