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増えるペット葬儀。悪質業者が跋扈するも現役住職が「ペット葬儀は積極的に行うべき」と考える理由

 長年家族同然に暮らしてきたペットが亡くなるというのは、言葉に尽くしがたい深い悲しみを伴うものです。その最期のお別れの場として、多くの方がペット葬儀を選んでいます。

 私が住職を務める天明寺では、ペットの火葬や納骨など、ペットの供養に関わるさまざまなご要望にお応えしております。しかし、近年ではペット葬儀がビジネスとして注目され、悪徳業者が参入することでトラブルが発生するケースも増えてきています。

 現状、多くの寺院はペット供養に消極的です。しかし、私はペット葬儀が困窮する寺院を救う大きな可能性を持っていると考えています。寺院がペット葬儀に積極的に取り組むことで、地域社会のニーズに応えつつ、新たな信頼関係を築く機会にもなるのです。

 今回は、ペット葬儀の現状や課題について考察し、寺院がどのようにしてこの分野に積極的に取り組むべきか、私の考えをお伝えしたいと思います。


亡くなったペットは「ゴミと同じ分類」

 株式会社矢野経済研究所の調査によると、ペット葬儀の市場規模は2兆円近くに達し、今後も拡大傾向にあるとされています。この調査結果からもわかるように、非常に多くの業者がペット葬儀市場に参入しています。しかし、この業界には深刻な問題が存在しています。

 その問題の根底にあるのが、ペットの遺体が法律上「一般廃棄物」として分類されていることです。つまり、私たちが日常的に出す可燃ごみと、亡くなったペットの遺体が同じ扱いを受けてしまうのです。

 当然ですが、人間の場合とは異なり、遺骨は埋葬法に基づいて厳格に供養されなければなりません。しかし、ペットの場合は「一般廃棄物」として扱われるため、葬儀や埋葬を目的としたビジネスに、多くの業者が参入しやすい現状があります。

 中には、山中に遺体を不法投棄する業者や、火葬施設を持たずに火葬を行っていると虚偽の広告を出している業者など、悪質な業者も存在しています。

 人間の場合、このような業者が参入する余地はありませんが、ペット葬儀の分野ではそうした業者が簡単に参入できてしまう現状があり、この点は非常に憂慮すべき事態です。

仏教としての考えは

 では仏教の観点としては死んでしまったペットはどのように扱われているのでしょうか。

 亡くなったペットに対してどのように扱うべきかという明確な教えはありません。現状では、動物と人間を区別すべきという考えを持つ寺院が多く、動物に対してお経をあげない住職も少なくありません。仏教の公式な教えの中に、ペットに対する具体的な見解や規定は存在しないのが現状です。

 厳しい視点から見ると、多くの寺院がペット供養や埋葬に消極的であることが、結果的に悪徳業者が参入しやすくなる要因になっていると指摘できるでしょう。

 私自身の考えとしては、ペット葬儀に対してはまず法整備が必要であると考えています。具体的には、信頼できる宗教法人にのみペット葬儀の認可を与える仕組みを作ることが一つの入り口として有効でしょう。また、自治体自らがペット霊園を整備し、火葬や納骨を公的に行うことで、悪徳業者の排除にも繋がるのではないかと考えています。

 さらに、寺院が積極的にペット供養に取り組むことも重要です。ペット供養は、厳しい状況にある寺院の復活を促す切り札にもなり得る可能性があります。寺院が地域社会において信頼される存在として、ペット供養を通じて新たな役割を果たすことができるのではないでしょうか。

ペット供養は需要がある

 冒頭でも述べましたように、天明寺ではペット供養を行っております。そのきっかけとなったのは、檀家さんから「飼っていたペットを境内の墓地に納骨したい」というご要望でした。

 実を言いますと、天明寺には以前からペット供養の要望が寄せられておりました。当初、私も「人間とペットでは供養の仕方が違います」とお伝えしていた時期がありました。しかし、そうした要望が増えてくる中で、私自身も考えを少しずつ改めるようになりました。そして、5年前に造成した天明寺の樹木自然葬では、人とペットが同じお墓に入れるようにしたのです。

 また、境内の一角でペットの火葬サービスも提供するようになりました。火葬したペットの遺骨は、一度、自宅に持ち帰り、四十九日を過ごす方もいれば、そのまま納骨を希望される方もおり、遺族(飼い主)のスタンスによって異なります。

 お彼岸やお盆、そして一周忌など人間の供養と同じ、もしくは人間以上の手厚くペット供養を希望される方もおります。

 さらに、亡くなった愛猫に戒名をつけてほしいというご要望も頂いたことがあり、その際はご希望通りに戒名を授けました。

 ペット供養が仏教として適切かどうか疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、私は現在のペット供養は『あり』だと考えています。仏教の教えにはペット供養に関する公式な見解がないと先ほど説明しましたが、古くからニワトリや牛、馬などの家畜を供養する儀式が存在してきました。これらの儀式は、家畜が人間の生計を支えていたことに対する感謝の意味合いが強いものでした。

 ペットは生計に直接的に貢献していないかもしれませんが、家族の一員として共に生活している存在です。その点を考えると、ペット葬儀や供養はごく自然なことと言えます。また、このようなペットへの愛情の高まりやペット葬儀のニーズは、経営に苦しむ寺院の復活を助ける切り札にもなり得ると考えています。

ペット供養は6件に1件が檀家に

 ペット供養が寺院復活の切り札になるという非常に重要な点についてお話させていただきます。その理由は至って明快で、ペット供養を行うことで新たな檀家さんが増えるからです。

 過去の記事でも触れましたように、寺院運営は檀家さんの存在によって支えられています。しかし、多くの寺院が檀家の減少に悩んでいる現状があります。この現状を打開する可能性を、ペット葬儀は秘めているのです。

 具体的なデータを基に説明いたします。天明寺では、5年前にペット葬儀を開始して以来、20件の火葬と100件以上の納骨を行ってまいりました。ペットの火葬は、専用の車両で行っていただいています。このうち、20件の方がその後天明寺の檀家となってくださいました。数値で見ると、約6件に1件の方が継続して天明寺との関係を希望されているということになります。

  私が携わった飼い主の方々を見ていると、家族の死よりもペットの死で大きなショックを受ける方も少なくありません。たとえば、旦那様が亡くなられた際に涙を見せなかった奥様が、ペットの死に際しては深い悲しみに暮れることは珍しいことではありません。

 それほどまでにペットに対する愛情を持つ方が増えており、その心に寄り添える寺院であれば、自然と「檀家になりたい」とおっしゃってくださる方も現れるのです。


 一方で、注意すべき点として、人の供養とは異なるため、税務署から収益事業とみなされ、課税対象となる可能性があります。たとえば、ひつぎや骨壺の提供といったサービスは、葬儀社が提供する場合と同様に課税対象となることがあります。ちなみに天明寺では、収益事業と見なされる可能性があるものについては、適切に課税対象として分類しています。

 こういった注意点はあるものの、ペット葬儀が持つ大きな可能性は疑いようのない事実です。寺院運営に悩むご住職の方々には、ペット葬儀という選択肢を前向きに検討されてみてはいかがでしょうか。

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