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悪質ペット葬儀会社はなぜなくならないのか?
ペット葬儀に関するトラブルが後を絶ちません。
今月も読売新聞でペット霊園の突然の閉鎖に関する問題が取り扱われました。記事によると、ペットの遺骨を納めていた霊園が連絡もなしに閉鎖され、以降は供養することができなくなってしまったそうです。
また、火葬場の建設や火葬の実施を巡って近隣住民と揉めるということも少なくないようです。人を弔うための火葬場を新たにつくることは簡単ではありません。しかし、ペットは法律の規制がないためにどこでも火葬できてしまいます。この件はMBS 毎日放送が詳しく報じています。
この他にも火葬や供養すらもせずにペットの死骸を山中に遺棄するなどの業者も過去に逮捕されるなど、ペット葬儀に関してはさまざまな問題が山積されている状態です。
では、なぜこのような悪質ペット葬儀会社はなくならないのでしょうか。今回はペット葬儀の問題点についてご紹介いたします。
ペット葬儀は法律の盲点になっている
ペット葬儀の問題が起きる大きな原因として、ペットと人間の死体は全く違う扱いになるということがあります。この点は前回の記事「増えるペット葬儀。悪質業者が跋扈するも現役住職が「ペット葬儀は積極的に行うべき」と考える理由」でも触れた通りで、誤解を恐れない言い方をしますとペットの死体は私たちの生活において生じるゴミと同じ分類となっています。
人間が亡くなると事細かな取り決めがあり、取り決め通りに葬儀や埋葬を進めなければなりません。しかし、ペットに関しては取り決めがほぼ何もない状態です。そのため、業者が事業として参入しやすいのです。
一般社団法人「日本動物葬儀霊園協会」によると、ペット霊園関連の事業者は1000社以上あります。参入するための資格や免許は必要ありません。このことから悪徳業者が入り込む余地が非常に大きいのです。
事業として何も規制がない、言うならばペット葬儀の現状は無法状態なのです。誰でも簡単にはじめられてしまう、まずは入口としてこの点が問題としてあります。しかし、ペット葬儀に関してはこの点以外にも大きな問題があります。そして、その問題も含めてペット葬儀でのトラブルが頻出する構造を作ってしまっています。
ペット葬儀は儲からない?業者が次々と撤退する理由
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実はペット葬儀はそこまで儲かるビジネスではありません。
ペットの飼い主の要望、ペット葬儀会社の料金設定により変動はありますが、ペットの火葬は1万円から6万円程度が相場となっています。
この金額だけを見ると、そこまで割は悪くないように思われる方もいるかもしれません。しかし、参入が自由なので競争が生まれます。ペット葬儀会社の多くは広告費用を投じ、大手のショッピングモールと提携して、集客を実施するという方法も多く取られているようです。
競争を勝ち抜いてペットの飼い主から火葬や供養の依頼をされなければ事業として成り立ちません。そして、そのために少なくないコストを投下することは必要不可欠です。
そのような諸々のコストを踏まえると火葬料金の1万円から6万円では利益を生み出すのは難しくなります。しかし、火葬料金を上げようとしても、同業他社との競争もあるため簡単には値上げに踏み切れません。
儲かると思って参入するものの思ったような利益を出せない構造がペット葬儀にあるのです。ペット霊園の閉鎖などがなぜ起きるのかと言うと、このようなビジネスとしての難しさが原因としてあります。しかし、ビジネスとしてははじめやすいので次から次へと業者が参入します。
一方、ペット葬儀に関しては収益事業を別にしっかりと持った上で展開している企業もあります。事業自体の可能性を考慮すると現状でペット葬儀に参入するとしたら、このような形の方がリスクは少ないのではないでしょうか。
悪徳業者から身を守るために依頼者ができること
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トラブルとしては、ペットの火葬場が近くに作られたなどの住民トラブルもありますが、最も多いのはペットの飼い主が被害者となるケースでしょう。
飼い主のペットに対する思い入れが強ければ強い方がお金になるのがペット葬儀ビジネスです。火葬の他にも遺影や納骨堂など、愛するペットのためにもっと供養をしたいと思われる気持ちはよくわかります。
ペット葬儀は人の良心につけこんだビジネスという面があり、悪徳業者に大きな非があるのは言うまでもありません。しかし、厳しい言い方となりますが依頼者側も安易な面があるのではないでしょうか。
ここまで紹介してきたようにペット葬儀は法の整備が全くされていません。多くのトラブルが起きている現状を踏まえて、今後、法整備が進む可能性は高いでしょう。しかし、現状においてはそうではなく、やりたい放題がまかり通ってしまっているということは肝に銘じておくべきでしょう。
現段階においてトラブルを避ける最も良い方法は、民間企業ではなくお寺や自治体などが実施しているペット葬儀に依頼をすることです。もちろん民間企業でも良心的に親身にペット葬儀を実施している業者も存在します。しかし、悪徳業者が容易に入り込めてしまう現状においては、あまりお勧めはできないというのが率直なところです。
天明寺が取り組むペット供養とは?
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私が住職を務めている天明寺のペット葬儀の取り組みを紹介します。
天明寺では火葬については専門業者と提携の上で執り行っています。供養についても一通りの相談に乗ることが可能です。また、樹木・自然葬でしたらご家族と一緒での埋葬もできます。
先ほどもお伝えしたようにペット供養に関しては天明寺だけでなく、他のお寺や自治体などでも実施しています。しかし、そういった取り組みすらも知らないという方も現状では多いようです。
理由のひとつとして見つけにくさがあります。
民間のペット葬儀会社は当然ネット集客にも力を入れています。そのため検索をした時にトップページに表示されることが多く見つけやすいのです。一方、お寺や自治体がネット検索に力を注いでいることはほぼありません。飼い主がペット葬儀会社に相談してしまう背景にはこの見つけやすさも大きな要因としてあります。
かつては亡くなったペットは庭先に埋めるという方が多かったと思います。もちろん今でもそのような埋葬をしている方もいらっしゃいますし、このような埋葬に全く問題はありません。
しかし、飼い主の思いからビジネスという形で供養についてのサービスが誕生しました。天明寺やその他のペット供養を執り行っているお寺の多くは、そのような世間の声を受けて取り入れたという形です。ペットの供養に関しては仏教経典に定まっていないこともあり、仏教的には一定の共通ルールを敷くことは今後も難しいと思います。
いずれにしても現段階においては、自治体とお寺に依頼すれば間違いないので「住んでいる地域 ペット納骨 寺」などで検索してトラブルに遭わないように供養をするのがよいでしょう。