弥生 短歌 後半
最後まで冬は君だけ見送っていつかまたの日ひと匙のジャム
ちょこちょこと言葉散りばめセキレイが名残雪にも春のお知らせ
いつかねと約束できる今が好き月が満ちても欠けたとしても
まどろみに時間と君を奪い合う勝てなくたって好きが満ちてる
溜息を水色にして雨の朝ときおり金魚尾ひれゆらゆら
感情の処理が上手にできなくてバネ定数を計算してる
この冬は氷砂糖の海であり青が戻れば風も寂しく
今はまだ春が怖くてガタガタと心細さを毛布に隠す
振り返る冬の刺繡を刺しながら春の陽ざしを許してしまう
灯台に最後の雪が降る頃はあなたのいない海が泣いてる
恥じらいは花が散るまで 蹴り上げる窮屈だった片方の靴
音もなくしんと降る雪散る桜失くした街にあかりが灯る