弥生 短歌 前半
早咲きの桜流れてさよならを口にしそうになるね僕たち
モノクロの声なき海に影ふたつ三月春はまだ忍び足
雨が降るあえて言うことないけれど君の唇震えていたね
街灯は寂しげですか海沿いの寡黙な雪の降る街でした
指先で撃たれたふりの子犬より私の方が可愛く死ねる
ふわふわと風に漂い春になる君の助手席空いていますか
ミモザ揺れ小首傾げるすまし顔僕は僕なり君の手のひら
君の冬雨に触れれば溶けるのに 紅茶飲もうよ毛布もあるよ
君に吹く風は優しいはずだから大丈夫だよ。ひと息いれよ。
青空に今日も笑顔のはずだけど笑えぬ時の雲が恋しい
咲ききって風に吹かれる蒲公英の綿毛に抱かれ消えていきたい
知ってるよ君が求めるひだまりに私はいない。そういうことを
おやすみと綴る言葉で気づいてよ すっかり紅茶冷めていること
街灯が募る思いで照らす夜にあの日の雪はいまも降りつつ
少しだけこっちにおいで手をつなご風が冷たいそんな日だから
柔らかな気持ち包んでシャボン玉ぷくり漂う老いても恋よ