「バカの壁」を超える梯子の作り方(3) 〜動画解説版
「バカの壁」とは、養老孟司先生が書かれた、2003年のベストセラーの題名です。
「バカの壁」とは人と人との話が通じない場合を意味する造語です。
『話せば分かる』でなく、『話しても分かり合えない』状態です。
この「バカの壁」は、SNS時代、ますます多く存在し、かつ、それらは高く、厚くなりました。
どうして、「バカの壁」は生まれるのでしょう?
実際、「バカの壁」は、純理性的な説得の場である、裁判においても起こっています。
原告と被告、原告代理人と被告代理人、地方裁判所と高等裁判所、高等裁判所と最高裁判所との間で、全く物の見方が変わっている事件があります。
私は、裁判では、不思議な勝ちも不思議な負けも、あまり経験してきませんでしたので、
裁判において「バカの壁」をどうにかしてやろうと思ったことはありませんでした。
しかし、この数年間で、何件か、ほぼ主張証拠が出尽くしたにもかかわらず、
相手方代理人と全く見立てが違う、
あるいは、裁判官と見立て違う、深刻な事件に遭遇しました。
そこで、初めて真剣に、「バカの壁」について考え、悩みました。
裁判の場で、「バカの壁」が顕在化する、最高裁判所の破棄(差し戻し・自判)裁判例を検討することにしました。
古いものは、後藤勇「続・民事裁判と経験則」「民事裁判と経験則」の2冊(両者それぞれ7〜80件の破棄裁判例があります)を中心に、
新しい平成年代のものは、判例データベースを検索して数十件を拾い出し、自分で図を書きながら読み、メモをしました。
その作業を通じて、「バカの壁」が裁判においてなぜできるのか、理解できました。
そして、その「バカの壁」を、どう超えていくのか。
どんな梯子を使えば良いのか、おおよそ分かりました。
そして、「バカの壁」が裁判においてできるメカニズムと、一般社会で、「バカの壁」ができるメカニズムとは、同じであると気づきました。
その超え方も。
実は、私は、養老孟司先生の「バカの壁」を読んでから、
ずっと「もし『バカの壁』があるなら、それを超える方法だってあるはずだ。その方法を教えてくれないのは不親切ではないか。」と思っていました。
また、SNSなどで、相当に知的レベルが高い人同士が、「バカの壁」に遭遇し、互いに相手を汚い言葉で罵倒し合う様子を目にし、「なぜ、『バカの壁』ができているのに気づかないのだろうか。
なぜ、『バカの壁』を超える努力をしないのだろうか。」と残念に思いもしていました。
私が気づいた、裁判における「バカの壁」を超える方法、梯子は、恐らく、ずっと多くの人の議論、交渉、説得にも役立つのではないかと思い、公開させて頂くことにした次第です。