帰るべき場所
「宿り木がない」
若手の頃、よく上司先輩に悩み相談をしていた。
人事ローテーションだと言ってしまえばそこまでだが、私は一つの部署に長く居た経験が乏しい。私自身が飽き性というのもあるが、便利使いをされているのもあるだろう。専門性が求められたり、経験が物を言う職場では殊更に悩みが大きかった。
最近になって、複数のコミュニティの方々と再会した。初期赴任地の長野、出向先の会社、通っていたビジネススクール。出会った時期も区々で、過ごした年月の長さも違う。
長野では、私の活躍を歓迎してくださる方との再会だった。私の成長が嬉しいと話してくれる存在がいることが、こんなにもやる気に直結するのだと思い知らされた。長野の1年は私なりに一生懸命な期間であったが、それが少しでも伝わっていたのだとしたら嬉しい。
出向先には保険の手続きで赴いたのだが、わざわざ元上司に会いに来ていただき、手厚い歓迎を受けた。この期間は私の職業人生で最も青く、最も一生懸命が詰まった期間であったことに疑いないが、それに呼応する形で理解者の数も多い印象である。転籍の誘いにのっていたらまた別の人生もあっただろうが、のらずに忠義を尽くしたことも結果的に今良い関係を築けている理由の一つかもしれない。
ビジネススクールの同級生とは、たった三ヶ月の付き合いで、まさかこんなにも長続きする関係になるとは当時は思ってもみなかった。私のキャラクターを理解し、励ましてくださる大人ばかりで、久しぶりに会っても当時の授業の話で盛り上がれることは幸せなことだと思う。授業料以上のものを得た感覚である。
気付けばたくさんの優しい人に触れ、帰るべき場所が出来上がっている。私も早く多くの人の帰るべき場所になりたいし、かつての私のような悩みを持つ人にこの経験を伝えたい。
帰省シーズンに思いを馳せて。