私の起業ビジョン:母親を救うことが虐待を防ぐ鍵
起業を決めたものの、何をするのか?何をしたいのか?
日々、ニュースで『虐待』に関する報道を目にするたびに、心が締め付けられるような気持ちになります。特に、命が奪われるケースを見ると、「どうして守られるべき命が守られなかったのか」「なぜ私が守れなかったのか」という強い無力感を感じることがあります。それがなぜなのか、自分でもわかりませんでした。
ある時、経営者の友人と話している中で「なぜ私はこんなにも虐待に対して反応するのか?」という問いに答えが出ました。それは、自分自身が幼少期に虐待を受けていたこと。ずっと忘れていた、あるいは無意識に隠していた記憶でした。
こうして振り返ってみると、私が心から願っていることは「虐待や自殺、戦争など、不自然に命が奪われる現実を変えたい」ということでした。
でも、どうやって?
児童養護施設を増やすこと?違う。
それでは悲しみを抱える子どもが増えるだけで、根本的な解決にはならない。
虐待が起こるメカニズムを深く考えたとき、その出発点が「お母さん」だということに気づきました。私自身も母から虐待を受けていました。「なぜ、お母さんが子どもを虐待してしまうのか?」そこには確かに愛があったはずです。にもかかわらず、何かが狂い始め、愛が憎しみに変わってしまったのです。
私が見つけた答えは、「お母さんたちの苦しみや孤独を癒し、サポートすることこそが、虐待を防ぐ鍵である」ということです。愛が正しい形で子どもに向けられるように、まずはお母さんたちを守りたい。
24時間保育園の開設
「お母さんが自分の時間を大切にし、他人に頼れる環境を整えれば、虐待を防ぐ手助けができるのではないか?」そう考え、私は24時間保育園の開設を思いつきました。
そう思いながら模索していたとき、居住市内の児童養護施設が求人募集しているのを見つけました。すぐに応募し面接に臨みました。面接官は施設長さんで、まずは私の志望動機とビジョンを伝えました。
すると、施設長はこうおっしゃいました。
「あなたのビジョンは本当に素晴らしいと思います。しかし、ここにいる子どもたちは、親との辛い別れを経験し、深い傷を抱えています。もしあなたが将来、自分の目標を達成するために退職することになれば、せっかくあなたに心を開いた子どもたちは再び悲しい別れを経験し、さらに傷つくことになるでしょう。」
その瞬間、自分がどれだけ無知で独りよがりだったかを痛感しました。子どもたちのためだと思っていた私の行動が、実は彼らをさらに傷つけることになるかもしれないと気づいたのです。私はその場で謝罪し、面接を辞退させていただきました。
しかし、施設長さんは私を優しく受け入れてくださり児童養護施設の現状を丁寧に教えてくれました。そして、私の目標についても応援してくださったのです。
帰りの車の中で、私は涙が止まりませんでした。施設にいる子どもたちの話が、あまりにも自分の過去と重なりすぎていたのです。30年以上封じ込めていた「虐待の傷」が、再び開いたかのような感覚に襲われました。
保育園について調べを進めるうちに、認可外保育園は利用費用が高額であること、また開業には莫大な資金が必要なことが分かってきました。さらに、私自身に『保育業』のノウハウがないこともあり、現段階での実現は非常に難しいと痛感しました。
では、『今の私』にできることは何なのか?
これを考えることが、私にとって最も大切なステップでした。能力や資金を現実的に見つめたとき、出てきた答えは、これまで長年経験してきた『介護事業』でした。そして、その中でも資金面で少額で始められる『訪問介護事業』が最適だという結論に至ったのです。
大切な方向性が見えてからは、すぐに行動に移しました。
2021年3月15日、『最高の日』に法人を設立。そして同年7月1日には訪問介護事業を開業することができました。
もちろん貯金のなかった私は、友人や親戚、国金に頼りながら資金を集め、少しずつ返済をしつつも、現在では何とか安定した経営を行えています。