《物語》花言葉
夫が単身赴任をして2年。
お互いの生活にも慣れてきた。
「ピンポーン」
何か荷物だ。
それは大きな花束だった。
美しい花々から良い香りが溢れている。
夫からだ。
「誕生日おめでとう。
いつもありがとう。会いたい。
また帰るよ。」
シンプルな言葉が嬉しい。
花なんていいのに。
私が玄関先でしみじみと
花束の香りを感じていると
近所の奥さんが通りがかった。
「どうしたの、それ?」
と言われ
「今日、誕生日だから夫が送ってくれたんだ」
そう言うと
彼女は少し睨むような顔をした。
「黄色いバラの花言葉知ってる?」
と聞かれ
「?」
「知らないなぁ」
「…ふ〜ん」
意味深に去ってしまった。
彼女と夫は一時期不倫していた。
私が気づいていないと
思っているようだが
私はそこまで馬鹿じゃない。
このことは
今も私をどうしようもなく苦しめる。
単身赴任をしてから
少し安心していたが
この花言葉
気になって調べた。
黄色い薔薇の花言葉は、と。
「友情」
「思いやり」
「優雅」
「温かさ」
もう〜、私にピッタリじゃ〜ん(照)
ただし
「薄れゆく愛」
というのもあるらしい。
ふんふん、なるほど。
ストレートな夫が
花束ごしにメッセージなんて
そんな遠回しなことをするはずがない。
私の好きな黄色を選んでくれただけだ。
携帯が鳴った。
「あー、オレ。」
夫からだ。
「誕生日おめでとう、何もできないけど」
「ちょうど今、お花が届いたよ。
ありがとう。」
「お!良かった、どんなだった?こっちでは細かな指定ができなかったけど」
私は写真を撮って送った。
夫は満足したようだ。
そう。私は黄色が好き。
明るい色が好き。
花言葉なんて関係ない。
全て綺麗で美しいもの。
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