♯8 耳管開放症という障害。

それぞれの立場

滲出性中耳炎は聞こえが悪くなる。
自分の声も人の声も。

滲出性中耳炎は子供が呼んでも振り返らない、テレビの音や声が大きくなった、常にイライラしている、といった判断基準もあり、痛みや耳だれがない分こういう小さな所で親は気づかなくてはならなかったりする。

引っ込んだ鼓膜が膨らむと聞こえる音量も変わる。
今まで聞こえなかった音がクリアに聞こえる。
治療をして急激に聞こえるようになる事が子供には強いストレスになり、うるさいと耳を塞ぐ子もいる。

ポリッツェル法は嫌じゃなかった、という子はいなかったのではないか私は思っている。

強制的に鼓膜が膨らむ、下手すれば破れる。
ボコッ、バリバリ、ボワッ、言い表せない音が聞こえる。
そして音の聞こえが変わる。
自分の呼吸音が耳に直接聞こえる。

現代風に伝えるならば、イヤホンを使って電話をしている時に相手がマイクに向かって息をフウゥゥゥと吹きかけてくる。
こちらが聞こえる音はまるで台風のような煩い雑音。

あの音が自分の呼吸音だと思って欲しい。
とにかく自分がうるさいんだ。

自分の息、呼吸。
自分の脈、心拍。
自分が動く服の擦れる音、チャックの甲高い音。
外を歩けばクラクション、車の走行音。
外に出て何がうるさいって薬の入ったビニール袋の音が一番堪えた。

イライラするのは大人だけではない。
むしろ大人はイライラの原因も対処も経験でどうにか出来てしまうことが多い。

子供はどうだろう。
聞こえない事が、聞こえづらい事が当たり前になっていた生活の中で、何で返事をしないの。
どうして急に大きな声で喋るの。
何でそんなに大きな音を出すの。
何でそんなにイライラしているの。
言ってくれなきゃ分からないでしょう。
ちゃんと教えて、話をして。

明確な痛みがあるわけじゃない。
まだ生まれて数年の子が自分の聞こえている音の範囲が正常ではない事にどう気づけと言うのでしょうか。
どう伝えろと言うのでしょうか。
言葉に表すことも出来ない耳の違和感、腹立たしさ、ストレスを子供が出来る表現は泣くこと以外何があったのでしょう。

今、これを見ていてくれているあなたは子供の立場でしょうか。
それとももう親の立場でしょうか。

私はどちらも否定するつもりも責めるつもりもありません。

感情を上手く表現出来ず泣く子も、子供の気持ちを感覚を症状を汲み取れなずイライラしてしまう親も。

上手く行かないんですこの病気は。
どちらも必ず切迫詰まるんです。
どちらも必ずストレスに追い込まれるんです。
そして完治に時間がかかるんです。

でも、もし今自分の子を病院に連れて行っている状況ならどうか最後まで、医師がもう大丈夫でしょうと声をかけてくれるまで必ず通ってください。

大丈夫、大体の子は治るんです。
適切な治療を行えば治るんです。
子供は耳管が短い為なりやすい病気なだけです。

私のように一生ものにならないように。

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