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酒部朔
2022年6月15日 03:43
引き金を間違って引いたそれはケチャップ尊厳とかは瞬時に失せる残響もいずれ消える映画的スローモーションにもならないで容赦なく瞬間的に彼女は失われた父の骨眠るみずうみまで4時間の旅行列車からは鹿の群れが見える彼女の服を散らかしてきてしまったな用途のわからない服がたくさんあったカルデラのみずうみ死ぬならそこと決めてあった地球が丸かろうと平らだろうと山は山肺が木槌で何度も殴られる感
2022年6月11日 04:04
螺旋松の種落ちるマツポックリの隙間からくるくる着地誰もいない森螺旋あなたを追う階段逃亡したのは王子様逃げるならいらないけどカエルの王子は欲しい螺旋うまく巻けなかった髪雨水伝って落ちる南国の鳥の鮮やかな尾夜の動物園揺れるストレス螺旋子供の握るタニシ雨を喜ぶカタツムリサザエよりかは醤油垂らしたツブ貝螺旋体の中の二重螺旋犯行現場に残した血が気がかり
2022年6月10日 02:45
意地悪な猿が桃を投げる食べられない硬い桃だあたしは炎の矢で木ごと焼く散り際の猿の吐息が甘くって顔を逸らす紫陽花は返り血を優しく拭ってくれるから好き砂糖の入ったコーラは糖尿患者には垂涎の的ぬるいノンシュガーほど惨めなことはない今日は双極性の躁の患者が歌い踊る日鬱のカーテンはあまりに厚い血を細く垂らした川には精霊流し多重人格の人たちが上流から流す喧嘩もなく花が撒かれる脈絡
2022年5月25日 04:09
知らずのうちに落っこちたアリスはもういないらしい言葉たらずなあなただからイートミー食べすぎている赤の女王の振動が伝わって物語は終わろうとしている次の女王はアリスになった穴はがちゃがちゃ変容して僕のための穴となるだろう僕はといえば身支度をしてタイを身につけお呼ばれにうまくやるさ帽子売りともうさぎはケージに押し込み兵士の剣を拝借しておいたきらり光が王宮から見えて女王アリス
2022年5月22日 01:53
安全剃刀の音朝から響いて洗面台の角に当てる音する私は二度寝のクマに襲われ抱き合い布団絡れこんでる掛けっぱなしレコードの針見放して浮きスイッチの緑付きっぱなしバッテリーのない掃除機がすうすう言う炭酸水を飲む牛乳を温めるコーヒー淹れ怖いものない最強目玉焼き日曜の朝方はわたしたちの勝ちで終わる
2022年5月9日 03:31
よあけまで起きていようかこのまま眠れないときはわるい事した数かぞえると言ったら先生は僕の方がはるかに多いと仰った診察室のドアを閉めて先生のしたわるい事を思った窓から見た花壇には赤と黄色の鶏頭が咲いている何度も読みかえさずにわざと乱雑に封筒に入れた便箋一枚一枚廊下に落ちて白く光っている踏み分けていえ踏まないように歩くそんなふうにして眠りが降りるのを待つ神様がいくつか
2022年4月28日 03:18
2月生まれ占いは絶好調予定が全てうまくいく君に会うことをかっことじで全部保留にしている顔を上げると赤信号で占いは到底当たると思えない目の奥がたまに痛んで僕を小さくする住んでいた古いアパートが解体されるので毎週写真を撮りに通った5週間で更地になったそこには居場所を無くした幽霊が2、3人物憂げに佇んでいる新しい建物が建つのは早かった僕はよそへと越した越した家は角部屋
2022年4月25日 06:25
何度か浮かぶ、何度か浮かんで怒られる。沈みかける。背泳ぎは得意なほうだった。コーチは男子の背中に、もみじと言って、ビンタを張って跡をつける。笑う。その手がわたしの首を掴んで浮かせる。男の人の手、いや。水着になるの、いや。更衣室の床が濡れているの、いや。みんなでサウナ室に何分も入れられるの本当にいや。綺麗な水のことを考える。少し甘い白樺の樹液。山奥の水源。つららからしたたる。前世は烏瓜を