「竜とそばかすの姫」 ~ 沢山のメッセージに耳を傾けよう
映画って、観る自分の状況によって、
受け取るメッセージが変わるから不思議だと思いませんか?
少々時間があって、最近、録画してあった映画を観ています。
「竜とそばかすの姫」
2021年7月公開だから、ちょうど3年前の細田守監督の作品。
過去に2度くらい観たことがありますが、
歌が素敵だなぁ、という感想しか持っていませんでした。
インターネットや現実の世界での経験を通じて、
少女が成長していく様子が描かれていると言われています。
ところが、今観ると、色んなメッセージが聞こえてきました。
主人公の女子高生すずのアバター「Bell」が、
仮想空間「U」で人気になっていくシーンで、
ちょっとオタク気質な友達ヒロちゃんが、
アンチの声に「死ぬ~」と叫んでいるすずに向かって、
「既得権者がびびって騒いでいるだけ」
「肯定しかされない奴って、コアなファンだけな奴な証拠。
小さい、小さい!」
「Uじゃ、嘘のない賛否両論が本物を鍛え上げるんだよ」
「もう半分には評価されているってこと。自信もて!」
と励まします。
今のSNSの世界で起きていることが、思い浮かびます。
大半の人が、肯定な評価をされるべく、
世の中のマジョリティと思われる意見に乗っている現状。
やっぱり、賛否両論あって当然で、
自分の意見・発信には自信を持ちたいと思いました。
もちろん、現実社会でもSNSでも、批判されるのはかなり辛いですよね。
そこで支えになるのは、現実世界の人間関係だと思います。
すずも、現実の周りの人々からの支えで、立ち向かっていきます。
他にも、メッセージが聞こえてきます。
「U」の世界で、自らを「U」の警察と位置付ける集団「ジャスティス」。
そのリーダー、ジャスティンがこんな事を言います。
「どんなところにも悪人はいる、人に迷惑をかけて秩序を乱す奴はいる」
「やりたい放題して世の中をせせら笑っている奴はいる」
「だからそれに対抗する為に力が必要なのだ」
「どんな場所でも正義は必要だとされている」
「悪を叩きのめす力が必要なのだ」
「それが我々だ!」
個人的に、「正義」を振りかざす人は危険だと思っています。
「正義」とは主観であって、人、それぞれの正義を持っていると思います。
パレスチナやウクライナの戦争も、それぞれが正義を標榜しています。
唯一言えるのは、「正義だからって、何をしてもいいという訳ではない」
だと思います。
異なる意見を受け入れる「寛容さ」。
現代はこれが欠如して、正義の御旗のもとで戦争となっています。
そして、「U」の世界で、「竜」となっている少年の父親が発する、
「親の言うことを聞くのは当然のことだろう!」
という言葉。
10年前の自分であれば、そんなに抵抗のなかった言葉です。
でも、今は、親の立場を使った暴言だと分かっています。
原因は、「親の未熟さ」だと思っています。
精神的に子供のまま、親になった人は、
子供を納得させる言葉が見つからないと、「親の立場」を持ち出します。
「自分が正しい」と言い切ります。
子供に響かない言葉は、親が信用されていないか、言葉が未熟だからです。
また、言葉は暴力になること。
父親から酷い言葉を受けているシーンでは、
少年の身体は、まるで実際に打たれているかのように反応します。
恐らく、細田監督は、
言葉は物理的な暴力と同じ、いや、心に残る分、より酷いものである、
と伝えたかったのではないでしょうか?
SNSで世界中で発せられる他人に向けた酷い言葉は、本当に暴力です。
実際に、それが原因で亡くなる方もいます。
「言論の自由」が尊重される世界は、
他人を傷つけても許されるのでしょうか?
親は子供に対して、何を言っても許されるのでしょうか?
最後に、「Bell」が現実世界の少女すずのままの姿で唄う曲。
「臆病と不安 縛られるけど
強く優しく なれたなら」
すずの母親は、すずが6歳の時、
増水した川の浅瀬に取り残された子供を助ける為に、川に飛び込み、
子供だけを助けて、亡くなってしまいました。
その悲しみ、孤独感を引きずるすずに、母は
「強く優しくなりなさい」
と言いたかったと思います。
それを、すずは気づき、そんな歌を歌います。
そして、身を挺して、すずは他人の子供を救う行動に出ます。
私は、ジブリや細田監督の映画の大半から、
以下の2つのメッセージを受け取ります。
「強く優しくあれ」
片方だけでは、現実は変えられないでしょう。
片方だけでは、自分や他人を傷つける結果にもなりかねないでしょう。
現代社会にも通じる教訓のような言葉だと思います。
特に、知力、経済力、権力を手に入れた「強者」は、
他人に優しくなければならない、
その為に、その力があると思わなければならない、
と思います。
そして、
「誰の人の心の中に、光も闇も同居している」
人は、正義と悪にきれいに分かれるものではありません。
生まれた時は誰しも、正義でも悪でもありません。
その後、現実社会での生活で、自分なりの正義、悪を持ちます。
人の心の中に、混沌も秩序もあります。
だから、みんなが悩み、幸せの定義も分からずに、足掻きます。
でも、周りの人の優しさという支えがあるから、
厳しい現実世界でも、前向きに生きていくことができると思っています。
周りに感謝しつつ、「強く優しくありたい」。
これらの映画は、そう思わせてくれます。
あなたは、どんなメッセージを受け取りましたか?