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SOUND! SHOCK SERIES の軌跡を辿る!セガサターン30周年記念アルバム『SEGA RALLY CHAMPIONSHIP - 30th Anniv. Album -』前編・伊藤“モバ”良弘 インタビュー by 佐伯憲司 / 鶴岡八幡


「セガラリー」記念アルバムを徹底紹介!

ウェーブマスター/SOUND! SHOCK SERIESのセガサターン30周年記念アルバム第2弾『SEGA RALLY CHAMPIONSHIP - 30th Anniv. Album -』(以下セガサターン30周年記念盤)。2025年には30周年を迎えるアーケード版『セガラリー・チャンピオンシップ』(以下セガラリー)のお祝いを兼ねており、アーケード版、セガサターン版のリマスター音源をはじめ、3曲の力の入ったキャッチーな新規アレンジトラックを収録したまさに祝賀かつ入魂のアルバムになっている。

"歌うサウンドクリエイター"こと光吉猛修氏が「デイトナUSA」に続いてアーケード版の作曲を担当。そして光吉氏と同期で「バーチャレーシング デラックス」(スーパー32X)から本作(セガサターン版)とレースゲームで共演を果たした幡谷尚史氏をはじめ、アトラスを卒業し『セガラリー』好きが高じてギターで共演を果たした目黒将司氏ら豪華ゲストによる本アルバムの聴きどころなどが解説された「SEGA SOUND STREET」は必聴!

さらに本アルバムに関連して、Beep21誌上で光吉氏自身が筆を執ったコラム「SEGA SOUND STREET on Beep21」02 セガラリー チャンピオンシップ」と後編もぜひご一読ください。

さて、「セガラリー」に関連したアルバムはアーケード版リリース直後から、これまで何作も登場している。今回のセガサターン30周年記念盤を聴いてまず驚いたのは、アルバムの構成はもちろん、その音の良さだ。SOUND! SHOCK SERIESのリマスターCDは企画、構成、サウンドといろんなところに魅力があるということを改めて思い知らされた。

そこで、セガサターン30周年記念アルバム第1弾「Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -」が好評を博したこともあり、ライター佐伯と鶴岡八幡が、A&Rプロデューサーのモバ伊藤こと伊藤“モバ”良弘氏(株式会社ウェーブマスター)に本アルバムの記事化のお話を持ち掛けたところ、ご快諾いただけたので、セガ・サウンド好きがきっかけでユニークな来歴を持つモバ伊藤氏自身のエピソードから、本アルバムの制作にまつわるリマスターへのこだわり、30周年記念アルバムのこれからなど、SOUND! SHOCK SERIESの軌跡とともに、レーベル担当者ならではの幅広いお話をお伺いすることができた。ぜひご一読いただきたい。

オフロードや公道におけるラリーレースを初めて本格的に3Dで再現したレースゲーム『セガラリー・ チャンピオンシップ』。1995年2月に登場したアーケード版より14トラック。同年12月発売のセガサターン移植版より25トラックをリマスタリング収録。そして本アルバムの為に制作された新規リアレンジとして、セガの床井健一氏、福山光晴氏をはじめ、元アトラスの目黒将司氏がギタリストで参戦するなど豪華なアレンジトラック3曲+カラオケVer.1曲の計43トラックがCD2枚組収録されている。さらにブックレットには、アーケード版を担当した光吉猛修氏、セガサターン版を担当した幡谷尚史氏、幸﨑達哉氏、リアレンジ楽曲を担当した床井健一氏、そして本アルバムのゲストパフォーマーである目黒将司氏のコメントが掲載されている。

発売日:2024年10月17日
品 番:WM-0879~80
価 格:3,630円(税込)
ブランド:SOUND! SHOCK SERIES
発 売・販売元:株式会社ウェーブマスター
特設ページ:https://wave-master.com/ent/src/

▼本作の試聴動画はこちらからどうぞ!

▼好評を博したセガサターン30周年記念アルバム第1弾『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -』の記事もあわせてご一読ください。

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インタビュイー紹介

株式会社ウェーブマスター
制作部 SOUND! SHOCK SERIES
A&Rプロデューサー 伊藤“モバ”良弘

宮城県「ハイテク セガ 仙台」のアルバイト・スタッフを経て、1991年3月に株式会社セガ・エンタープライゼスに中途入社しアミューズメント施設運営事業(※店長業務や後に東北地区の景品・販促担当業務)に携わる。2000年10月にドリームキャストのビジュアルメモリや携帯端末を利用したインターネットサービス「サイバークーポン」を企画しセガ本社へ異動。2001年には「サイバークーポン」から派生したセガのアミューズメント施設向け会員システム「セガ モバイルフレンズ(略称:セガモバ)」を立ち上げる。以後、モバイルサイト「ヒトカラ」「セガカラMelody」「セガにゅ~NaVi」「セガプラザ」でのキャンペーン営業等に従事。2017年8月末を以て株式会社セガ・インタラクティブを卒業、2018年2月より株式会社ウェーブマスターにてA&Rプロデューサーとして勤務開始。

「アウトラン」や「アフターバーナー」がきっかけ~アルバイトから正社員、そしてセガ・エンタープライゼスへ

──前作に続き、セガサターン30周年記念アルバム第2弾「セガラリー」も好評ですね! 先日配信された「SEGA SOUND STREET」もCDのライナーノーツとともに非常に聴きごたえがありました!

モバ伊藤 ありがとうございます!

──それもふまえて興味を持ったのが、レーベルサイドであるA&Rプロデューサーのモバ伊藤さんのことなんです。まず、モバ伊藤さんの来歴を読者の方々にご紹介もかねてお話しいただけますか?

・専門学校時代「ハイテク セガ 仙台」でアルバイト

モバ伊藤 高校卒業後、専門学校に通いながら「ハイテク セガ 仙台」というセガ直営店のゲームセンターにアルバイトスタッフとして入ったんですよ。

──セガに興味があってバイト先を直営店にされたんですか?

モバ伊藤 はい! 高校時代にセガが誇るサウンドの巨匠・Hiro師匠の「アウトラン」「アフターバーナー」や、並木“Mickey”晃一さんの「サンダーブレード」「ギャラクシーフォース」等のサウンドを聴いて、セガが大好きになっちゃって、ゲームよりゲーム音楽やS.S.T.BANDの方に魅了されたんです。田舎町の出身だったので近所にゲームセンターがなくて、当時隣町だった古川市(※現:宮城県大崎市)にて “それらの名作” に出会ったんです。それでかぶれて(笑)。ちょうど高校を卒業し、仙台の専門学校に通うことになって「ハイテク セガ 仙台」に足を運ぶようになったころ、アルバイト・スタッフを募集していて…。

──まさにちょうどいいタイミング(笑)。

モバ伊藤 ダメ元で応募してみたら、採用されまして。1年ほどして、営業所の所長や地区部長から「伊藤くんちょっと社員にならないか?」みたいな話が降ってきたもんですから、「セガに入れるんだったら、試験を受けてみようかな!」とチャレンジしてみたら間違って(笑)受かっちゃったっていう。当時セガは、全国にアミューズメント施設を増やしていて大量に採用していたという背景もあって、ある意味運が良かったと思います。

──間違ってはさすがに言いすぎかなと思いますが(笑)。

・1991年3月にセガに入社 → 「サイバークーポン」の企画をきっかけに2000年に本社へ異動。

モバ伊藤 そこから入社に至って約10年ほど、アミューズメント施設運営事業の現場に携わりました。本社異動へのきっかけですが、その当時、現場(※青森県八戸市「ムーンベース・セガ」)にいながら本社へとある企画を提案したら「ちょっと本社に来なさい!」と言われまして。一本釣りっていうか。そのきっかけというのが、入交(昭一郎)さん(当時社長)が企画した、「全社から職域関係なく新しい企画をつのる」という公募でした。2000年代当初、ゲームセンターの閉店ラッシュも始まっていて…。まあ、これまで(2024年)もセガは何度かリストラを経験してきましたが、当時はドリームキャスト事業の撤退で初のリストラが始まろうとしていたころです。

──家庭用ゲーム市場とアーケードゲーム市場のどちらが主力になるかの端境期というか、ちょうどドリームキャストがリリースされたあと、セガだけでなくアミューズメント業界全体が混乱していたころですね。

モバ伊藤 「これからのゲームセンターはどうなっていくんだ?」というころですね。そういう時代背景のなか私は、セガのシナジー効果「ネット(DC)からストリート(セガ店舗)へ!」を推進する施策としてドリームキャストのビジュアルメモリとiモードを利用した印籠型のインターネットクーポンサービスサイト「サイバークーポン」を、セガ本社のインターネット推進室(※当時セガ公式サイトを運営)に居た仲良しの増子くんとふたりで企画し2000年6月23日に本サービスを開示しました。(※サービス開始時期の対象店舗はセガ・アミューズメントテーマパーク「ジョイポリス」(東京・新宿・横浜・京都・岡山・福岡)にて展開)

セガ「サイバークーポン」。対象施設の店頭窓口にてクーポン画像を掲示することで、各種チケットのディスカウントサービスなどが受けられた。

──ありましたありました!

モバ伊藤 このサービス展開を機に2000年10月にセガ本社(総合企画部)へ異動となるわけですが、まだそのころは全く音楽の仕事とは関係なく、趣味としてセガ・ゲームミュージックを嗜んでいました。本社異動時期に丁度、セガのアミューズメント施設事業は構造改革の件で地域5社へ分社化が進んでおり、立場上セガ本社側はフランチャイザー、地域5社はフランチャイジーになるわけです。それまでは各店舗ごと「セガ フレンズ メンバーズカード」(※三つ折りのあのスタンプカード)で、お客さま会員の管理と独自の特典サービスを行っていたんですよ。今どきのDXじゃなくて本当にアナログなシステムで。

「セガ フレンズ メンバーズカード」。アミューズメント店舗ごとにスタンプを押していた、まさにアナログ施策として配布されていたカード。スタンプを集めて店舗でサービスが受けられた。

──ああ……スタンプサービスは店舗でのアナログなものでしたね。

・2001年「セガ モバイルフレンズ」=「セガモバ」立ち上げに参画

モバ伊藤 そこで私は、今度は本部側の人間として、お客さまが全国のセガ店舗を回ってもロイヤリティを得られるサービスを、身近なガジェットを利用してOne to Oneマーケティング=店舗とお客さまとのつながりを創り、通い続けてもらえる戦略の施策として立ち上げたのが「セガ モバイルフレンズ」=「セガモバ」だったわけです。本部からのクーポンメールやこんなキャンペーンをやりますよという「プッシュ型」の販促もできますし、セガモバ端末「モバナビ」での来店ポイント加算やポイント消費及び「サイバークーポン」利用にて、そのお客さまの行動履歴もデータとして蓄積できますし。それからまったポイントですが、店舗ではワンプレイサービスやメダル交換サービスだったり、ケータイ上では「待受画像」の交換や毎週レベルで開催されるプレゼントキャンペーンへのご応募の際にご利用いただきました。

「セガモバ」の概要(当時のパンフレットより)。携帯電話とアミューズメント店舗をつなぐサービスとして2001年サービス開始。歴代イメージキャラクターには 森下千里さん、MEGUMIさん、Sugarさん、小倉優子さん、石原さとみさんを起用。

──懐かしい……! そのころ、セガ・アミューズメント(当時)所属でありつつ、分社化していた開発部門、SEGA-AM2(当時)、ヒットメーカー(当時)やソニックチーム(当時)、ウェーブマスター(当時)にも営業で回られていたわけですね。話が今に近づいてきました。そして“モバ伊藤”さんのニックネームの由来となる「セガモバ」の話にも繋がりました。

モバ伊藤 そうですね。当時は分社化していた開発部門にも協力してもらって、クリエイターのサイン入り家庭用ソフトがポイント抽選で当たるプレゼントキャンペーンなどの企画やら営業で各分社をガンガン回っていたころに、Hiro師匠や光吉さんらともお会いすることができたんです。それ以降セガモバでのサントラCD販促施策のみならずド厚かましくもサントラCD化の提案までしてくる「あのうるせーヤツ」になったわけです(笑)。ちなみに“モバ伊藤”の命名ですが「メールや内線で総合企画部の伊藤と言われても誰だかわかんないから、今度からモバ伊藤な!」ってHiro師匠から言い渡され現在に至ります(笑)。

──「セガモバ」は東京ジョイポリスでイベントもやっていて、取材でお伺いしました。「SGGG」の金子 剛さんや[H.]のメンバーとしてHiro師匠、光吉さん、ふっく福山(福山光晴)さんたちがステージに立っていたり、西村ケンサクさんの前説や「セガモバ」のイメージソング「また、ここで逢いたい...」とか……。

モバ伊藤 その節は大変お世話になりました。改めましてセガモバ・イメージソングですがA面として「モバってますか~っ (^o^) 丿 / 歌:宮岡志穂」は、“聴くセガモバの解説書”というコンセプトにて電波系洗脳ソングに仕上げていただきました。B面となる「また、ここで逢いたい... / 歌:光吉猛修」は、“お客さまとセガ店舗とを繋ぐ赤い糸”というテーマでAOR調のバラードソングでしっぽりと。要はオープニングとエンディングのテーマをセットで制作いただいた感じです。作詞は武村 大さんと私(※「モバってますか~っ(^o^)丿」のみ)で、作・編曲は「セガガガ」や「龍が如く5」、「~維新!」に参加された金さんこと金子 剛さん。スーパーバイザーにはHiro師匠を迎え、強力な布陣で臨んだ問題作となりました。

いちセガ・サウンドファンからアルバムやおまけCDなどを企画~さらにウェーブマスターへ転職への長い道のり

・2006~7年ごろ、セガ・サウンドCD-Boxの企画、制作に参加

──ゲームミュージックアルバムにたずさわるようになったのはそこからですか?

モバ伊藤 そうですね。サントラCDの企画・制作に本格的に首を突っ込む様になったのは。
その頃には、社内外的にも「セガのゲームミュージックにすごく詳しいヤツ」と認知もされ、調子にのった結果、「OutRun 20th Anniversary Box」(2007年2月8日)という11枚組の超大作CD-Boxの企画を立てたんです。Hiro師匠をガッツリ巻き込んで(笑)。本作は、セガ・サントラとしては初の1万円を超える高額商品を世に放ちました…これがきっかけになりますね。

OutRun 20th Anniversary Box。初代アーケード版『OutRun』から、最新作であるプレイステーション2版『OutRun2 SP』までを収録したCD11枚組のBox仕様で207曲を収録。Hiro師匠自らの作品評、歴代のサウンドクリエイターからの貴重なコメントなどを収録したブックレットも付属。

──あれ、モバ伊藤さんが企画を担当されたんですね!
モバ伊藤 しかも、PlayStation 2(PS2)版の『OutRun2 SP』が発売されるタイミング(2007年2月)だったので、それに合わせようということで。付随情報となりますが、そのPS2版の初回限定版に付属した特典CD(コンピレーションアルバム)「OutRun Sound Tracks - Complement -」や、またその前のXbox版『OutRun2』(2005年1月)の初回限定版に付属した特典CD「OutRun2 Sound Tracks - SIDE B -」も、私が企画させていただいたものでして、ブックレット用にコンポーザーの皆さんからコメントを集めたり、僭越ながら私が記述した解説もっています。

モバ伊藤氏が企画を提案したXbox版「アウトラン2」に同梱された特典のサウンドトラックCDのブックレットの表/裏表紙。家庭用製品の企画にも参画していたのだそう。

モバ伊藤 で、その「OutRun 20th Anniversary Box」後のタイトルより、更なるセガセガしいサントラCDの新ブランド “SOUND! SHOCK SERIES” の展開を2007年7月5日よりスタートしました。(※私はセガに居ながら、当時のウェーブマスターのプロデューサー辻坂健次さんへ「SOUND! SHOCK SERIES」のブランド企画を提唱し現在に至ります。)第一弾タイトルは元S.S.T.BAND/B-univの並木“Mickey”晃一さんを10年ぶりに大フィーチャーした「SUPER HANG-ON 20th Anniversary Collection」。

“SOUND SHOCK SERIES”のブランドコンセプト(「SUPER HANG-ON 20th Anniversary Collection」のオビより)

──おおお……伊藤さんのセガサウンド好きがついに本領を発揮し始めたと?

モバ伊藤 その次のBox物が「AFTER BURNER 20th Anniversary Box」(2007年11月29日)ですね。あのころは直接の仕事とは関係ないことを有給を使ったり、終業後の空き時間や休みの日を使って、"自分がやりたい、聴きたい"がために企画を立てて動いてましたね。Hiro師匠や関係者の方々と一緒に。

──ええ!  あれもモバ伊藤さんの企画だったんですね。その当時ってどの部署にいられたんですか?

モバ伊藤 まだセガモバ事務局のときです(笑)。

──ええっ! まさに暗躍というか、部署を超えて、しかもファンが喜ぶような企画をメイン業務と並行してやられていたと。

モバ伊藤 そうした布石もあって、数々のSOUND! SHOCK SERIES作品につながっていったんです。今では通じないやり方で、実績の積み上げ方なども含め今の人達にとっては何の参考にもならない話ですが……。20数年前の社内風土は寛容で、みんなでそういう企画を話すとこころよくノッてくれて、垣根を越えた人と人との信頼関係でいろんなことができるいい時代だったなと想いますよ。学生でいうところの放課後にやっているんですけれど、結局はセガグループを横断して実績を残せたプロジェクトになったんです。とはいっても本業ではなかったので。今、企画を立ち上げてやろうとしたら「人件費は? 予算はどこが持つの?」みたいなすごくシビアな話になりがちですが……。当時、新規提案するBox系サントラの楽曲を洗い出すとすごいボリュームな訳ですよ…「これ、リスト誰がまとめるの?」っていうことになって、結局言い出しっぺの私が寝る間を惜しんで全部リスト化するわけですよ(苦笑)。

──当時だから許された、今では通じない力業ではありますが、"好き"のパワーゆえですね。外から見る限り、セガサミーグループは厳しい時期も多々あったかもしれませんが、基本、風通しのいい会社に見えます。とはいえあの時代ならではの空気というものはあったかもしれませんね。○○周年記念という企画の勝利、タイミングもよかったこともあるでしょうし。当時の私たちは、モバ伊藤さんの本業のほうで東京ジョイポリスなどで行われた施策のリリースだとかを記事にしたり、イベントの取材でお伺いしたりなどしていたんですが、人脈作りなどを経て、さらに放課後にCDの企画などを出されていたんですね。

モバ伊藤 本業は本業としていろいろやっていて、本当にやりたいことは皆さんのご協力もあって時間を作ってやる、というところはありました。仕事ですから大変ですけれど、好きなことをやって実績が作れたり、信頼関係ができていった部分はありましたね。

──"やりたいことが仕事にできる"というのは素晴らしいことです。

・2018年2月、ウェーブマスターへ再就職

──そんなモバ伊藤さんがウェーブマスターに転職されたのはどういった経緯で?

モバ伊藤 家庭の事情で26年務めたセガ(※当時:セガ・インタラクティブ)を2017年8月で卒業することとなりまして、お世話になった関係各社さまへもご挨拶回りをしたなかで、当然ウェーブマスターへも伺いましたら「なんで辞めちゃうの? 今後どうするの?」みたいなお話も頂きまして…。後日、ダメ元で当時の役員(※現上司)に「ウェーブマスターへ再就職もワンチャンありですかネ!?」と…併せてセガ・インタラクティブ(※)を退職後に再度同社での活躍を希望する者の再雇用を支援する「グロウバック制度」も根拠に売り込んだんです(笑)。
※セガ・インタラクティブ(2015年~2020年にセガに吸収合併されたアミューズメント機器開発・製造・販売等を担当した子会社)

──そんな制度があったんですね。セガサミーグループにはいわゆる出戻りの方もいらっしゃいますので、そういった制度を歓迎する社風は昔からあったのかと思っていました。
モバ伊藤 出戻りといえば、現セガ社長である内海(州史)もそうなんですが。結局、私はセガ卒業後半年も開けずに2018年2月からウェーブマスターにて先ずは業務委託でのお仕事第一弾となる「Hiro ReMix WorKs」を制作し同月リリース。続く第二弾は超大作且つ高付加価値商品となる「S.S.T.BAND - 30th Anniversary Box -」を同年12月にリリースし、その実績を汲まれ晴れて2019年2月にウェーブマスターの正社員として再スタートを切ったのです。

──人に歴史ありというか、モバ伊藤さんの経歴だけでもいろんなエピソードがありました。あの時代ならではの紆余曲折といいますか……。セガ・ゲームミュージックサウンドの発展とともに、その近くに寄り添っていた貴重な人材だったのだなと、改めて記録として残しておきたくなる興味深いお話です。ありがとうございます。

セガサターン30周年記念アルバム~ウェーブマスターのサントラのリファレンスになるようなものを出したい

──それでは、「SEGA RALLY CHAMPIONSHIP - 30th Anniv. Album -」について、いよいよ本題に入りたいと思います。「セガサターン30周年アルバム」に「セガラリー」をラインナップに加えることになったというのは誰が言い出していつ始めたことなんでしょうか?

モバ伊藤 まず、私どもの事業計画や商品ラインナップは年間単位で策定していくわけです。その上で、"何でこの時期にこの商品なの?"っていうところを1年後まで考えていく必要があります。2024年は最初に"今年セガサターンが11月22日に30周年を迎える"という大きなトピックが浮かびました。では、"セガサターンのタイトルで何を出すべきなのか?"とラインナップを決めるうえで重要だったのは、"弊社版のサウンドトラックとして、まだ出せていないものにしよう!"という発想だったんです。そこからタイトルをいろいろ洗い出していく中で「セガラリー・チャンピオンシップ」、そして「バーニングレンジャー」(※11月22日にリリース)が浮上したわけです。要は、“光吉&幡谷コンビによる2タイトルをまずはやりましょう”ということで、お二方へご相談差し上げましたらノッていただけたんですよ。

──なるほど!

モバ伊藤 セガサターン版がリリースされていた当時のアルバムは、「セガラリー」でいえば「IGNITION」をはじめ、東芝EMIさんのYOUMEXレーベルからリリースされ、その後はキングレコードさんからもリリースされたりと、いろんな事情があって。そこで、ウェーブマスターとしては、令和にしてセガグループ生粋の弊社版サントラCDをリリースしてやろうと考えたわけです。

◆初代「セガラリー」と主なアルバムの稼働日/発売日◆

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