酒好き主婦のときどきホテル生活 vol.8
vol.8 クライマックスは、ノーマルテイストで
もうすぐクリスマスって感じの12月下旬の雨の日。
[ Mitsui Garden Hotel Osaka Premier ]
初めてのホテル。
ホテル事情通の人に「いいよ」と勧めてもらって…
楽しみ。
15時チェックイン。
最上階の15階。
荷物を置いてとりあえずラウンジ活動。
コンセプトフロア(13F〜15F)に泊まるとラウンジの飲み物や簡単なおつまみなど無料でいくらでも頂ける…という夢のようなラウンジ。
18時からはワイン、ビールが飲み放題になるそうなのでそれは嬉しい。
お茶をおかわりしてお菓子もおかわりして、30分ほど過ごして部屋に戻る。
そういうわけで持ちこんだお酒は少なめ。
グラスはホテルが用意してくれるサービスがあるそうなので今回は持参しなかった。部屋の食器棚にちゃんとワイングラスとシャンパングラスが用意されていた。嬉しい。
冷蔵庫にお酒を収納してから、早速スパに行く。誰もいない貸切状態。
チェックイン後のお風呂はどこのホテルでも空いてる。この時間は狙い目。
気持ちいい空間だわ〜。半露天風呂な感じ。ずっとクラシックが流れている。屋外にジャグジーがあって試しにと思って出てみたら寒い。入らずにすぐに戻ってくる。
以前は旅館にしかなかったような空間が今は街中のホテルにもあるから嬉しい。しばらくひとりぼっちてつかる。気持ち良すぎて自然と「あぁ〜」と声が出てしまう。
写真は撮ることができないので、ホテルのホームページの写真を借りた。
20分ほどで出る。この間誰も来ない。
*
さて、始めようか…
おつかれ生です。
ひと缶目、ほぼ一気飲みする。
私、あらためて言うのもなんなんだけどね、ほんとに疲れているみたい。
口内炎が数個できてるし、いくら寝ても体がダルいのよ。
知らず知らずのうちに師走という型にハマってるというか、ハマらされてる(こんな言葉あったっけ?)んだなぁとつくづく思うわけ。
若い人たちはこれからどんどんテンションが上がっていくというのに、昭和女はどんどん疲れがたまるわ。年末のなんやかんや考えるとさぁ「時間よ止まれ」って本気で思うわ。
生ビール2缶飲んで少し仮眠。
でも眠りに入りながら(これも変な表現だな)思ったことなんだけど、ほんとうに疲れている人はブログなんて書けないよ。「疲れた」っていうことさえ言えなくなるような気がした。だから私は「疲れた」ってアピールしてるだけで疲れてないのかも…と思う。大丈夫かも…疲れてないかも…。言い聞かせながら仮眠。
午後6時過ぎに目が覚めた。すでに外は完全に夜の雰囲気。
夜景が綺麗。いつも見ている景色だけど自宅のベランダから見るのとはちょとまた違う。気分的な問題だと思うけど。
お化粧直しをして晩ごはんを食べに外に出る。今回はどこも予約してなくて街をぶらぶらしながら美味しそうな店を探した。
若い子がたくさんいる店は避けるようにしている。理由はうるさいから。ザワザワしたうるささは好きなんだけど、ギャーギャーしたうるささは苦手。
あてもなく歩いてたら日本酒がメインの居酒屋を見つけて入る。カウンターの隅っこに陣取ってその店特製のイカの塩辛と冷酒でとりあえず落ち着く。他にさつま揚げなんかを注文してチビチビとやる。最後にお茶漬けを食べた。
おじさんたちがボソボソ話している。ほとんどが経済の話。こういう感じが好き。おじさんたちの話を横で聞きながら「あぁ、おじさんらしい会話してるな」と思いながら飲む。
経済の話から『馬鹿と無知』っていう本の話になった。おじさんのひとりがこの本を読んだらしくてその内容を話している。ベストセラーになっているのは知っているが、どういう内容なのか私は知らない。聞き耳を立てる。
本編の中に『日本人の3人に1人は日本語が読めない』という項目があるらしくて、おじさん曰く「たぶんこの本は、お馬鹿な人に読んでもらって少しでも賢くなりましょうってコンセプトだと思うんだけど、馬鹿は日本語が読めないって最初に言ってしまったら、もう誰がこの本を読むのさ?」とおっしゃている。
笑ってしまう。確かにそうだ。誰のために書かれた本なんだろう…
でも『馬鹿は自分が馬鹿だと気がついていない』という項目もあるらしくて、私は「そういうことか」と納得した。
居酒屋で長居するのは性に合わないので、おじさんたちのその話にオチがついたところで店を出た。
部屋に戻る。
ラウンジでお酒が飲めるのを思い出して、2度目のラウンジ活動。
次々に飲んでいく。
外国のお客さんが多くて周りでは英語は飛び交っている。まるで外国にいるような雰囲気だ。
隣のテーブルにいた人はシアトルから来た人らしくて、たまたま隣り合わせになったご夫婦と意気投合してご主人たちは仕事の話、ご婦人たちは食べ物や観光の話をされていた。私はゆっくりと読書をしながら飲んでいた。
さっきのおじさんたちといい、ここの英語といい、心地よい。
ビールと白ワインと赤ワインを2杯ずつ飲んで部屋に戻る。
寝る前にもう一度お風呂に行こうと思って準備する。
お酒を飲んでるのでささっとつかって出る。
この時間帯は5人ほど入ってらした。
お風呂上がりの一杯は赤ワインソーダ。これは結構好き。ビールのような喉越しで赤ワインの風味を味わえる。グイグイ飲む。
テレビのニュースを見ながら飲んでたら急速に眠くなってくる。
やっぱり疲れてる?あんまり疲れてるってアピールしたくはないのだけど。
歯磨きしてベッドに入る。
夜中に一度目が覚めて「あれっ、私歯磨きしたっけ?」と思ったけどそのまままた眠ったみたい。
朝起きてバスルームを見たらちゃんと歯磨きした形跡があった。なんで私は歯磨きにこうもこだわるんだろう?普段からそう。いつも朝起きたら「私、寝る前歯磨きしたっけ?」と不安になる。何かのトラウマかしら。そんな大袈裟なもんでもないか…
私はちょっとした自慢なんだけど、歯医者に行くと必ず「綺麗に磨けてますね、何も指導することはないです。このままこれを保っていけば大丈夫」などといつも誉められるのだ。それがあるからちゃんと歯磨きしなきゃという強迫観念があるんだと思うわ。重荷ってやつ?虫歯の1本や2本できたっていいじゃないか!というおおらかな気持ちになりたいわ〜。
私が将来認知症になったら、まず最初に「歯磨きしたかな?」ってことが疑問になるような気がする。あくまでも想像だけど。
2日目
朝4時半に目が覚めて、二度寝できずに朝風呂に行く。
誰もいないだろうと思っていたら、先客がひとりいた。「おはようございます」と挨拶を交わす。彼女も早く目が覚めて眠れなかったのだろうか。箱庭に大きな木が植えてあるのだけど、ライトアップされたその木から雫が垂れてる。それで雨が降っているのだということがわかった。そういえば屋外ジャグジーの周りも雨水が跳ねてる。それはそれでとても美しい情景だった。
先客の彼女が帰ってから私ひとりになった。今朝はバロック調のクリスマスソングが流れている。「もうこのままここに死んでしまってもいいや」と思うくらい気持ちがいい。私は気持ちがいい空間に佇むとすぐにそう思ってしまう癖がある。そう思った瞬間「いやいや、まだ朝ごはんを食べてないじゃなか」と朝ごはんに意識がいく。ここの朝ごはんは九州の食材を使っていて美味しいと評判だ。お風呂を出てちゃんとお化粧をして朝ごはんに行く。
相変わらず盛り付けにセンスがない。
私がレイアウトすると必ず酒のつまみみたいなものばかりになる。この後ミニもつ鍋とか飲茶セットとかデザートを持ってきて完食。おいしかった。
朝ごはんを食べてる時に、見るからにヤンキー系のお姉さんがひとりでやってきた。私がお茶をもらいにいく時に一緒になってコーヒーマシーンや給湯器などのセルフサービスの機械がずらっと並んでいるところで「この機械は圧巻やけど、年寄りとかちゃんと使えるのか心配やわ。もっと年寄りにも優しい機械にしなあかんと思わへん?」と話しかけられ、私も時々この機械はどうやって操作するのだろうと思う時があるから「確かに、お年寄りにはハードルが高いよね」と言ったら「せやろ」と納得していた。見かけで判断した私が悪いのだが、見かけによらずしっかり考えているんだなと思った。
とても素敵なヤンキー姉さんだった。
このヤンキー姉さんとはチェックアウトの時にも一緒になって、お互いに軽く会釈をした。
朝ごはんの後、またお風呂に行く。これが最後。
今度はしっかり入る。雨は上がっていた。じっくりつかって温まる。ホテルインターゲートのお風呂も好きだけどここのお風呂も好きだわ。庭が見えて空模様がわかるからね。
お風呂の中で考えたことがある。
人間ってどんなに大業を成した方でも平凡に生きた方でも、それなりに心残りってあるのだろうなということ。
年末になると「今年は...」という会話が至るところで繰り広げられるけど、私はいつも後ろ髪を引かれながら年末を迎える。あれもしたかった、これもやるべきだったと数え上げたらキリがなくて、もうこの時期になったら取り返しはつかないのだけど、それは私に限ったことではないような気がする。
立派な方もそれなりに「あぁ...」と思うことはあるのだろうなと。
言ってしまえばそれが人間なんだなと。だから悔やむのはやめようと思う。
だから今年も後ろ髪引かれながら行く。これは決まりだ。
でも悔やまないってこと。人間である以上それが当たり前なのだ。
(と、最後はちょっと人生語っちゃった、すまん)
持ってきたお酒はぜんぶ完飲して、11時チェックアウト。
いつものことだけど帰りはキャリーケースが軽くなる。
ヤンキー姉さんさようなら。あなたに会えてよかったわ。
帰りに違うホテルのパン屋に寄ってパンを買う。
そのあたりから現実に戻る。
街中は日本式クリスマスで溢れている。
vol.1〜vol.8までマガジンに収録してあります。