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#024 そのご飯はどこからきたのか

 多くの方にご覧いただいた以下投稿から約1カ月。新年早々にお米について続報が届きました。

 今回は軽めに続報について触れつつ、その他のニュースと合わせてご紹介していきます。


〇米騒動の解決策はついに禁断の「輸入」へ

 2024年の「令和の米騒動」は沈静化することなく年越し。旺盛な需要を反映して在庫の手当てを先んじて行おうとする動きがドミノ倒しで波及し、ついには民間輸入が行われるまでになりました。まだ現時点では限定的な数量に留まるものの、この動きの結果如何によってはさらなる拡大が見込まれるでしょう。

よく聞くワード①「ミニマム・アクセス米(MA米)」
 日本が海外から最低限輸入しなければならない米のこと。国際貿易の自由化の流れの中で、最低限の輸入機会を提供する必要があるとされ、1986-1994年のウルグアイ・ラウンド交渉によって導入が決定。国内の米市場に過度な影響を与えないよう、国が一元的に管理しています。輸入量は現在、年間約77万トン(玄米ベース)に設定されており、アメリカやタイ、中国などから輸入されています。

よく聞くワード②「SBS(Simultaneous Buy and Sell)入札:売買同時入札制度」
 国際貿易において,輸入業者が政府に売る価格と,卸業者が政府から買う価格を,両方の業者があらかじめ相談して決め,連名で入札する制度。 1984年牛肉輸入の際に採用され,95年のコメの部分開放開始に伴って再度採用。コメ輸入の場合,輸入差益 (マーク・アップ) の上限 (1kgあたり 292円) をこえない範囲内で最も差益の大きいものから順に落札されます。

1.輸入価格と国内価格

 記事の「関税を払っても安い」という表現には改めて驚きます。単純にアメリカ産のお米に価格競争力があるというだけでなく、国産の価格がそれだけ高騰しているということに他なりません。

 アメリカの優位性は単純な耕作面積の差ではありません。一区画あたりの農地面積の差が稼働する耕作機械の性能や作業効率に影響します。これら生産能力の差だけでなく、農家に対する補助金、資源の有無、農業政策の方針なども加味した上で総合的に競争力が決まります。

2.「令和の米騒動」の原因

 2024年は前年度比18万トンの増加(2023年度662万4000トン)。このように生産量が増加しているのにもかかわらず卸間価格のスポット価格は高騰しました。現実的な物量ではなく集団心理によるものが大きいのかもしれませんが、これらの解消策はまだ検証中の段階。

 農業従事者の減少や長らく米価低迷によって耕作面積は減少の一途をたどってきました。それが今年の主食用米の高騰を受けて減少に歯止めがかかる可能性はありますが、生産基盤の弱体化はそう単純に解決するものではありません。

 転作の品目のひとつである飼料用米の耕作面積は2023年産13.4万haで過去最高だった2022年産から0.8万ha減少。既に2030年の達成目標である9.7万haを上回っていますが、主食用米の不足感を受けて計画見直しが図られるものと思われます。急激な変更は現場に過度な影響を及ぼしかねないため、今後も農政を注視したいと思います。

〇度重なる値上げに消費も減少

 総務省の家計調査によると2024年11月は前年同月比0.6%減。個別の項目を見ると米は3.1%減の2729円、生鮮肉は4.5%減の6650円、牛乳は7.8%減の1226円、生鮮野菜が5.4%減の6305円と軒並み減少。昨今の値上がりを加味すると金額以上に実際の消費量は減っていることになります。

 パンは0.2%減の2836円ということで、金額だけを見ると米の消費額を上回っており、今後の米価格の推移によっては消費量がさらに減少傾向となるかもしれません。

〇「値上げ」で生まれる希望もある

 値上げによって家計が苦しい一方で、その中で新たな取り組みによって希望が生まれることもあります。小売価格が上昇することで生産者の中から自ら販売する者が現れたり、新たな販売方法が開発されたり。

 調査から全体的な消費動向は確認できるものの、その動向に影響を受ける程の生産量がある経営体ならいざ知らず、うちのような小規模農家にとってはほぼ影響はないようなもの。小売価格で販売ができれば中小規模農家でも生き残る道はまだまだ残されています。

 もしかしたらあなたの気づかないうちにアメリカで育てられたカリフォルニアのバラの名を冠したカルローズ米を既に口にしているかもしれません。これからご飯を食べるとき、どこで誰が育てたお米なのかをどれだけ認識して食べているかを考えてみてください。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。主食であるお米の高騰ということもあり、年を超えても継続的に記事が投稿されて相変わらず関心の高さを感じます。引き続きスキ・コメント・フォローなどを頂けますと励みになります。

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