夏休みに観た映画をまとめてみるノート(ネタバレなし)
夏休みが始まっちゃう!
自主管理と自己責任によってズボラな人間が指弾されるようになるブルーピリオド、大学生活。私は賞味期限を残り三年と七ヶ月残した状態で夏休みに突入した。
しかし、休み期間を返上してまで行うような制作物の予定はないし、かといって人と会うにもコミュニケーションの難がある。そんな木漏れ日を浴びる日々の中、予備校の先生が言った言葉を思い出す。
「大学は研究期間だから、何かやりたいことのある人が行く場所なんだよ。何もしない人は、ハッキリ言って、邪魔だよね」(〇〇先生ごめんなさい)
……このままではせっかく大学生になった意味がわからない!
ということで、毎日できることとして映画鑑賞を始めた。一応何かやっているという大義名分のもと、自己肯定感を損なうことはないだろうし、映画の脚本や構図を学んでいれば後々に活かせる点も発掘できるだろう。
映画はフィルムに残された思案の残滓なのだ。映り込む人物や背景から読み取れる監督の感情からは、その生涯を間接的ながら紐解くことができる。表現手段は状況に対する捉え方の見本市だ。人によって違う人生観を汲み取れるのが、映画の良いところだろう。
鑑賞のルール
とりあえず大学内の設備であるイメージライブラリ(以下イメラ)とNetflixを使って映画を貪ることに。イメラとは武蔵野美術大学内にある映像資料を保存する専門施設。大量の映画が埋蔵している実質無料の映画館だ。武蔵美生のくせにここを使っていない人は随分と損しているので是非使った方が良い。
元々実写映画ではなくアニメ映画を好んで見るようなテンプレナードだったので、実写作品も積極的に鑑賞しようと思う。イメラは資料が豊富なので実写映画には困らない。というかアニメ作品の方が少ない。
とりあえず、「アニメ→実写→アニメ→実写→…」というルーティンで鑑賞を行うこととした。やはりルーツとも言えるアニメは外せなかったのだ。
また鑑賞中は積極的に画面の構図をノートに写して、構図の研究も行う。これぐらいやらなければただ遊んでいるだけになってしまうからだ。
さて、鑑賞作品の方に移ろう。
作品集
滅茶苦茶な量になってしまった。取り立てていうことのない作品も含んでいるため、見て欲しい作品に画像を添付した。それだけ読んでも概ねOKです。
<7/22> ・シン・エヴァンゲリオン劇場版:||…エヴァンゲリヲンシリーズの最終作ということでとりあえず視聴。事前に暗いことで有名な旧作は全て観ていたため、まず全体的な爽やかさに驚く。特に第3村のシーンはエヴァシリーズでは珍しいほど前向きな内容で、監督の立ち直りを情景や人々の態度から感じることができた。二十年近くエヴァを追っかけていた人にとっては感動モノだろうというのが、ひしひしと伝わる。万人にオススメの一作。
・未来世紀ブラジル…前々から話は聞いていたので視聴。強烈なキャラクターや新鮮なストーリーはなかったものの、世界観が絶句するほど素晴らしかった作品。いわゆるディストピアもので、同テーマの作品に通底する閉塞感をパイプの配線によって見事に表現、一度も空を写さないカメラワークも効果的に働いていた。現実逃避と抗えない事実に翻弄される哀れな主人公も見ていて面白い。伝説のラストは構図もさることながら、音楽でも悲壮感を強調している見事な終わり方だった。事前に知ってしまったのが惜しかったが。最も良かった一作。
<7/23〜31> ・ニモーナ…Netflixで見かけたので視聴。まさかのゲイ設定主人公に驚かされながらも、事前説明のない世界観をスムーズに受け入れることができた。というのは擦られすぎて味がしなくなった中世西洋と近代ギミックを掛け合わせた世界観という、当たり前を見直した結果お馴染みの味になったことが作用しているだろう。主人公二人の絆や信じるものの変遷など、王道だが若干外れたストーリーも魅力的。普通のバディに飽きた人にオススメの一作。
・首…北野武作品を見たかったため視聴。画面に全く女性が映らなかった事実が印象深い。これは当時の権力や社会的活躍を可視化した為に起きた現象であり、ミソジニーではない。むしろ戦国武将の社会に蔓延していたマチズムがいかに馬鹿らしいのか、強調するのに一役買っているだろう。誰も信用できず、いつ首が飛ぶのかわからない。マチズム社会で進展する違和感やかっこ悪さを可視化した名作だ。新しい戦国武将を見たい人にオススメの一作。
・バッドガイズ…Netflixで見かけたので視聴。子ども向けパルプフィクション、とでも言うべきか。人生において大きな悩みになる”悪い奴らの更生”というテーマを扱った点は面白い。良いことをすると本能的に良い気分になるという設定には同意できないが、まず道徳として子ども達に見せておくべきだろう。ケモナーだという自認がある方にオススメの一作。
・ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌…ちびまる子ちゃんの映画が珍しかったため視聴。ストーリーはよくある出会いと別れの感動ドラマだが、全体の半分ほどを占めるMVシーンに力が注がれている。それぞれのMVで絵柄がじゃんじゃん変わりリズミカルに色彩が躍動する。ただ単に歌唱を聞かせられるより、映画型MVでやろうといった当時の人には感服する。また、夕方の描写も印象的。なんとちびまる子ちゃんで奥行きを先行して意識できるカットがあったのだ。懐かしの曲を聞きたい人にオススメ。
<8/1> ・虹男…タイトルに惹かれたのでぼんやりと視聴。モノクロ時代のミステリー特撮なのだが、いわゆる時代に迎合していた作品の一種。今見ても大して面白くないというのが正直な感想。こういう作品は結構あり、当時主流だったスピード感・セリフ回し・構図・キャラクターが画面の中でひしめいており、近年の作品に慣れた人が見ても楽しくはないだろう。エンタメのアップデートに取り残された映画。特撮好きは楽しめるオススメの一作。
<8/2> ・スパイダーマン:スパイダーバース…アニメ史を変えたらしいので視聴。最大の特徴は画面にグラフィティアートのようなレイヤーがかかっているため、厚みのある映像を楽しむことができる点。キャラクターの感情や雰囲気を色彩で過度に表現しているため、情報量は常に多い。しかし、アニメでしかできないであろうカット割や回想の挿入は心地よい。唯一残念なのはスパイダー6人のうち、3人への言及が少ないこと。エンタメとして完成されたオススメの一作。
<8/3> ・マルサの女…伊丹十三作品を見たかったため視聴。愉快なストーリーと絶妙に面白いキャラクターが魅力的な作品。モブから主人公に至るまで、理性と本能の狭間で全力を尽くして生きており、役者が演じているという非現実感を感じさせない笑える動きに引き込まれてしまう。主人公と敵に芽生える奇妙な友情にも妙な人間味を感じられ、脚本の都合が顔を出さない。脱税と国税査察部のディティールが細かい点も魅力の一つ。昔の日本を感じたい方にオススメの一作。
<8/4> ・スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース…前作が面白かったので流れで視聴。以前ほどの衝撃はないものの、持ち前のテンポと画面の派手さは健在。逆に言えば、ストーリーとキャラクターで勝負するしかないということ。実写や素描の敵、筆跡の残る背景など新しい試みはあるものの、前作と比較するとあまり進化が感じられない点が残念。次回作が約束されているためか、ストーリーも尻切れトンボ気味。スパイダーマンファンにオススメの一作。
<8/5> ・最強のふたり…適当にNetflixで見つけたので視聴。変わったバディものという印象であり、補い合うというよりは環境を受容してときほぐしていく過程を見ている印象。重すぎる事件や鼻につく啓蒙もないのでゆったりと見られる感動の簡易摂取。手頃に海外の感動が欲しい人にオススメの一作。
・鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎…受験中見られなかったので視聴。凄惨だ無惨だと言われている割に、大して悲惨だと思えなかったのが残念だった。これはフィルムの性能向上によって失われた技術なのだろうが、暗闇よりも明瞭に見えるオブジェクト(キャラ、背景、エフェクト)が目立つために未知の恐怖が薄れてしまうのである。加えて本作はアクション映画の文脈も汲んでいるため、危機に陥ってもなんとかなるのだろうと予想してしまった。真正版に期待。バディ好きにオススメの一作。
・ハッピー・デス・デイ…惰性で視聴。ホラーの皮を被ったバトル・ミステリー。主人公が異様にタフで中盤から攻勢に転じるため、よく殺人鬼キャラに感じる苛立ちを解消してくれる作品。何気にキャラクターも癖があり、ループの中でジワジワと印象に残ってくれる。普通のホラーが嫌な人にオススメの一作。
<8/6>
・紫式部 源氏物語…前々から目をつけていたため視聴。冗長でなく、無駄なシーンが多いワケでもないのになぜか眠くなってしまった。おそらく平安の空気を建物から衣擦れの音に至るまで完璧に再現してしまったため、当時のエンタメを脳に浴びせられ不和によって混乱を起こしたと思われる。無駄のない構図と宮廷以外描かれていない背景、荘厳な曲など見どころは多いものの、源氏物語そのものに惹かれていないとキツイだろう。古典好きにオススメの一作。
・デッドプール…新作に備えて視聴。さすがマーベルと言うべきテンポとド派手アクションが光る。アクションは派手すぎると意味がわからないため、デッドプールぐらいが見やすくてちょうど良いだろう。ストーリーの奥行きや演出は見飽きたと思える。やはりマーベルはキャラクター商売が上手いと如実に感じた。コメディアクション好きにオススメの一作。
<8/7> ・くもりときどきミートボール、くもりときどきミートボール2…子供の頃見ていたため改めて視聴。今見ると子供向けというフィルターが尋常ではないほど強く、キャラクターの過剰な性格に若干疲れてしまう。もう体力はないのだ。今更3Dアニメーションが華麗なことに驚くこともなく、ストーリーも普通の冒険活劇なので、子どもと一緒に楽しむのが最善か。逆に言えば、安定して面白い。なお、主人公が社会からあぶれる様は異様にリアル。ファミリーにオススメの一作。
<8/8> ・コンスタンティン…一度は見ておこうと思って視聴。アクションではあるのだが、人間にできる範囲で悪魔と戦っている様が見ていて心地よい。自身と同じ地平にいると感じるからだろう。退廃した主人公と未熟な助手など基本を抑えた見所も多い。キリスト教に裏打ちされた世界観はどこにも見られない独自のものであり、世界観に全て振った作品である。知らない世界が好きな人にオススメの一作。
<8/9> ・犬王…大昔にCMを見かけたので視聴。文化の再現というより、歴史に残ってないんだからどれだけ盛っても良いよねという精神でロストテクノロジーをガンガン出してくるところには潔さを感じる。一人のキャラクターを魅せる演出が光るミュージカルものであり、歴史よりもその場のノリに重点を置いているため奇抜な光景が常に画面に広がる。ストーリーよりも演出の方が好きな人にオススメの一作。
・デッドプール2…続編に備えて視聴。前作と規模感は変わらないものの、おちゃらけたノリや奇天烈なキャラクターは進化している。デッドプールが意外と悲哀のあるやつだったり、仲間にほぼギャグキャラがいたりと意外性も豊富。それ以外は特に。デップーファンにオススメの一作。
<8/10> ・魔法にかけられて…安くDVDを購入したので視聴。手探りで作ったんだろうなという感想がまず第一にやってきた。起こる事件がさほど深刻でなく、せっかくニューヨークを舞台にしたのだからもっとリアルな社会問題を絡めても良かったのではないかと思えてしまう。なまじ幻想の住人であるディズニープリンセスは、実存の都市には不釣り合いなのだ。夢に現実が侵食されているような違和感がある。あとリスの声がうるさい。マイナーなディズニーファンにオススメの一作。
<8/12> ・ゴジラ-1.0…友達が勧めてきたので視聴。これはゴジラ映画ではなくミリタリー映画である。本作においてゴジラとは単に厄介な怪物としての扱いでしかなく、戦後の日本を蹂躙したり主人公が確執を拭ったりする以外の役割を与えられていないためである。しかし、ゴジラを倒すものが人間である以上、最新兵器で戦う男たちを描くのは必然なのだろう。実際に戦艦や戦闘機のディティールは細かい。だが、エンタメに毒されたキャラクター達が鼻につく。演出は安定していると言えるが。ラストはお約束すぎて否定的に捉えている。ゴジラを知りたい人にオススメの一作。
<8/13> ・君の名は…なぜか見ていなかったため視聴。くどいほど理想化された青春像には売れたことへの納得がある。若干SF要素が難解な程度で、キャラクターの相関から各々の目的に至るまでスッと理解できるわかりやすさも魅力の一つ。背景美術と細かな所作は本当に丁寧であるため、不思議な現実感を抱くことができる。ただ、キャラクターがわざとらしい演技をするため、苦手な人は苦手か。俺は好きだよ。最近ワクワクしていない人にオススメの一作。
<8/14> ・おくりびと…サッカン氏のネタ絵を見た影響で視聴。ほんのり優しく、過ぎた生を丁寧に扱う心地よい雰囲気が好印象。派手なシーンも強烈なキャラクターも綺麗な風景もないのにストーリーが保っているのは、現実の約束と脚本でのケレン味が見事にマッチしているためだと言えるだろう。祖父母が語る昔話を聞いている感覚に近い。コメディが混じってくるのもアクセントになっている。牧歌的でありながら、各々力強く生きている人間ドラマは苦しくも向き合うべき教訓が含まれている。静かな映画を見たい人にオススメの一作。
<8/15> ・マインド・ゲーム…湯浅政明作品を見たかったため視聴。アニメの持てる底力を全力で引き出した作品で、荒々しい線で構成された世界とサイケな色味、確固とした実在感の背景などは本作でしか見られないだろう。ストーリーはさほど目を光らせる点がないものの、エフェクト等の演出によって過度に笑える光景が仕上がっている。芸人を起用した声も癖になる。ケレン味に作品の存在感を投げ打ったため、かなり人を選ぶ作品になっている。最近殻にこもっている人にオススメの一作。
<8/16> ・復活の日…元Twitterでオススメに挙げられていたため視聴。尋常じゃないほど長く思える作品。これは虹男にも言えたことだが、エンタメのアップデートにおいていかれてしまった感が強い。確かにウィルスの描写はリアルで、南極で生き延びる設定も納得がいく。ただ、どこで喜んで泣いて感動すれば良いのか、現代に生きた私にはわからないのである。とにかくリアルなSFが見たい人にオススメの作品。
<8/17> ・映画大好きポンポさん…大学に行き損ねたため視聴。映画作りをつぶさに、だが専門用語は少なく映画作りを魅せた作品。どちらかというと監督の苦労を描いたドキュメントか。地味で少しずつ動き、方々に迷惑をかけまくる内情を知ることができるため、映画ファンなら一度見るべきと思えるが、美化されている様に感じる面が異様に多いのが難儀。主人公は結局才能だけに見えてしまい、サブキャラも全員人が良すぎる。心地よい鑑賞という点で右に出るものはいないが、正直感動ポルノにも見えかねないのは残念。むしろB級作品の内情を見たかった気もある。手頃に良作を見たい人にオススメ。
・クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝…クレしん映画全制覇のために視聴。冒険モノとしては他のクレしん映画に軍配をあげるがとにかくアクションのキレが凄まじい本作、皆まで言わずともルル・ル・ルルのアクションがやけに華麗なことが特徴。おそらく一番アクションは良いのではないか。手足の細かいキレや殴打後の揺れまで完璧に再現しており、見応え抜群。あと野原夫妻の惚気がやけに多い。強いおねいさんが見たい人にオススメの一作。
・クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者…上と同様の理由で視聴。要素が多くてまごついている印象を受ける。誰にフォーカスを絞るのか決めきれていないように思えるのは、モブとはいえ造形が特徴的なラクガキングダムの面々とユウマ母子がいるせいだろう。もっと出番を減らしても良かったのでは。今までのクレしんには見られなかったユウマのキャラクター像と一連のストーリーは面白かったが、四人(+野原一家)というサブキャラが既にいるのだから思い切って切り捨てた方が見やすい様に思える。未だクレしん映画は「オトナ帝国」の呪いにかかっているのだろう。クレしんのショタが見たい人にオススメの一作。
<8/18> ・インセプション…友達にお勧めされたので視聴。夢の中にいる描写を周囲が異様に変化していく様で表したのは面白い。そもそも夢の中に入っていくという設定上、どこまでが夢なのかよくわからなくなる緊張感と不安感も面白い。”トーテム”や”設計士”といったワードセンスにも心をくすぐられる。アクションは他の作品の方が優れていると思えるが、夢の中にいるためか、不安定な居心地を覚える世界観は最大の魅力だろう。現実味なく生きている人にオススメの一作。
<8/19> ・シュガー・ラッシュ:オンライン…前評判が気になったので視聴。言われているほどひどい作品ではなかった。ヴァネロペへの感情移入が薄いせいかもしれない。確かにあの結末は色々と蔑ろにしていると思える人もいるだろう。ただ、あのまま悶々と生きているよりは良かったのではないか。それこそ同調圧力ではないか?インターネットを可視化した際の背景化が本当に上手く、実在のドメインが看板の様に氾濫している様は目を見張るものがあった。ネットに縛られている人にオススメの一作。
<8/20> ・トーキング・ヘッド…押井守に浸るために視聴。いい意味で駄作。人を選ぶどころか、ほぼ全員が鑑賞を拒否しても仕方ないと言えるほど独りよがりだった。押井守の映画論を役者に喋ってもらうというミクロな需要に応えているため、見どころは冗談抜きで無い。しかし、映画として最低限成立する文法を追っているため、押井守のアジテーションを浴びたい人には傑作になるだろう。本当の自分がない人にオススメの一作。
・ダークナイト…ノーラン作品を履修するために視聴。前作を見ていなかったため、何もわからずに話が進んでいった。しかし、ジョーカーのやけに手強い異常者という点はわかりやすく楽しめる要素の一つだった。ジワジワと追い込んでくる悪のスペシャリストには、人を惹きつける魅力が確かにある。偽バットマンが自警を行うなど、結構リアルな考証がなされていることも魅力の一つ。市民の在り方も適度に現実味があり好感が持てる。ただ、病院の爆破シーンには質感があれどもそこまで迫力がなかった。何事もリアルなら良いということではないのだろう。陽のヒーローが欲しい人にオススメの一作。
<8/21> ・劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇、螺巌篇…友人宅で見たものを補完するために視聴。ノリと熱い勢い、熱血、努力、根性で解決する話。螺旋の力で人が死に、生き延び、宇宙にまで手が伸びていく。キャラクターやロボの独自性では追随を許さない強固さがある。螺旋力やガンメンなど作中で理論が成立しているため、ロボットモノであり熱血な世界観を味わえる。だが、いい意味でも悪い意味でもノリで進むため、疲れてしまうかも。常軌を逸したインフレが見たい人にはオススメの一作。
<8/22> ・ミンボーの女…伊丹十三作品を履修するために視聴。気弱なホテルマンの成長物語といった方が正しいストーリーだ。金をせびるためにあの手この手を尽くすヤクザ相手に合法な手段で対抗する様が痛快。前半でヤクザの悪辣さをこれでもかと描いているのが効果的に響いてくる。顔がアップになる構図が多く、役者の圧を感じられる点にはヤクザ映画の文脈を感じる。近々旅行する人にオススメの一作。
<8/23> ・スカイ・クロラ The Sky Crawlers…押井守に浸るために視聴。集中して観たはずなのに何も覚えていない衝撃的な作品。私が押井守のファンだったとしても許容できない何かがあり、そのせいで面白くないと判断したのだろう。恐らく冗長だったのだろうか?3Dで描かれる背景やディテールに拘った戦闘機にも私は惹かれないので、珍しく押井守作品としてはもう見ないだろうという判断を下した。空中戦は屈指の重厚感があるため、それ目当てでみても良いかも。タバコを吸いたい人にオススメの一作。
<8/25> ・デジモンアドベンチャー、デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!…デジモンも観ておくかという打算で視聴。先ず一作目から、怪獣が現れて街を破壊する時、どの様に行なっていくのかシミュレーションした作品としては傑作だろう。背景の現実感が日常にデジモンがいるさまに違和感を覚えないという点を際立たせている。次は第二作について、一昔前にネットが普及し始めた時期があっただろうが、その当時の街並みをノスタルジックに表現した背景と小物が画面を彩る。ネット世界の表現も秀逸であり、立体的な3D空間でデジタルワールドのみならずPCのモニターをそのまま映すことでこちら側を表すことで親近感とリアリティを際立たせている。本作には青空と自然がよく映るのだが、ネットという閉塞とのコントラストで綺麗に見える。世代の人にはオススメの一作。
・ハリー・ポッターと賢者の石…ハリー・ポッターシリーズを観たくなったために視聴。流石のJ・K・ローリングといった出来栄え。ファンタジー作品としては珍しく現実の世界が存在するためか、ホグワーツの存在そのものが鮮烈に映る。初めて知る魔法界の驚きをハリーと共に体験できる様、ダドリー家は効果的であると言えるだろう。学校内部で物語が完結するため、日常に脅威が存在するという不安を煽られるようで良い。魔法に憧れた人にオススメの一作。
<8/26> ・ハリー・ポッターと秘密の部屋…上記の通りの理由で視聴。キャラクターの増加とヴォルデモートとの因縁、また屋敷しもべ妖精が魔法界の現実味を強化していく。ギルデロイ・ロックハートは卑近な人間性で魔法使いに親しみを持たせるということに成功しているし、学校内の被害がさほど派手でないのも物理法則を捻じ曲げておらず卑近なことに感じられる。この映画シリーズ全般に言えることだが、演出の慎ましさがむしろ想像の容易さを掻き立てており、魔法という非現実でありながらすぐ近くにあるような感覚を覚えられる。お茶目なヴォルデモートを見たい人にオススメの一作。
<8/27> ・ハリー・ポッターとアズカバンの囚人…シリーズ全般に通底しているが、魅力的な魔法界とそこに追随する等身大のキャラクターを楽しむものであるため、映画が進行してもさして作風や見どころに変化があるというわけではないのである。今回もキャラクターと魔法界が補強されて終わり。スネイプ先生の優しさを味わいたい人にオススメの一作。
・ハリー・ポッターと炎のゴブレット…今作で発明された杖を振って魔法を打ち付けあう戦闘シーン、これは大きな発明だと思える。剣をぶつけ合ったり、拳をぶつけ合ったりする戦いは実在するものだが、ビジュアルとしてもわかりやすくある程度拡張性のある戦闘シーンとして、杖の戦いは一つのブレイクスルーなのだろう。お辞儀をしたい人にオススメの一作。
・ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団…魔法省での戦闘シーンが良い。ダンブルドアがまろうじん染みててオモロイ、以上。嫌なおばさんを味わいたい人にオススメの一作。
<8/28> ・ハリー・ポッターと謎のプリンス…ヴォルデモートとスネイプの青春編。終盤、分霊箱探索のシーンで、あの薬が大して不味そうに見えなかったのは私だけではないはず。選ばれしものにオススメの一作。
・ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1、PART2…最終作として大団円の出来。もはや世界観は大前提であり、キャラクター達がどの様に動いてくれるか楽しむ群像劇と化している。PART1ではいつもの3人でギスギスしたスタンド・バイ・ミーを行い、PART2ではキャラクターの活躍が見られる最終決戦が行われる。全員集合やサブキャラの活躍が見たい人にオススメの一作。
<8/29> ・クロース…先輩におすすめされたので視聴。Netflixの海外アニメ作品によく見られる3Dとも2Dとも取れる作画、こういうのが好きな人にはたまらないだろう。サンタクロースのオリジンを再解釈して違和感のないように仕上げているため、大人の方々も楽しむことができる。デフォルメされたキャラクターデザインは万人が親しめる普遍な柔らかさを持ち、主人公と共に周囲が変わる様は王道のポジティブシンキングなストーリーだ。逆に言えば、普遍な面白さがあるだけとも言える。木の音が懐かしい人にオススメの一作。
<8/30> ・天空の城ラピュタ…金曜ロードショーでやっていたため視聴。アドべンチャーモノとして傑作であることは間違いない。一体いつなのが判然としない時代設定と噛み合ったオーバーテクノロジー、力強く目標に邁進するキャラクター達、理論に裏打ちされ設計された建築や背景美術が冒険心をくすぐる。注目したいのは音響と物質の壊れ方。レンガが崩れる音、扉が溶ける音、木々にロープが絡む音は想像によってリアリティを補強する。レンガはブロックの一つ一つがボロボロと崩れ落ち、木造のレールは組まれた木材がバラバラに崩れ落ちる。宮崎駿のこだわりが、子供と大人の双方を楽しませる映画を作り上げているのだ。
俺は何を見ていたのか
夏休み全体を通して、真面目に見れた作品数は10にも及ばないが一生忘れないであろう傑作に出会えたのもまた事実である。
表現者の端くれとして、インプットに努めたこの夏のことを後悔していないが、単に自身の感性を分析するのみに終わったような寂寥もかんぜずにはいられないのだ。
それは以下の通り、
・独自な世界観が好き
・浴びせるようなセリフが好き
・大仰な演技は苦手
・ノリだけの進行は苦手
結局主人公に凡人なんておらず、皆誰かに選ばれた何者かという脚本の都合に縛られる限り、我々は映画の人物に決して感情移入はすれど人生を重ねるべきではないと、そう思えてきた。
憧れとはないものねだりの感情で、自分が変わらない限り何も起きない。
アウトプットとは、また一つの才能だろうか?
また忙しくて、満足しない日々がやってくる。
夜は自己嫌悪で忙しいので、また今度!