鑑賞レポート:2021.12.9 「布施明meets 新日本フィルハーモニー交響楽団」
行ってきました、今年最後の布施さんコンサート。題して「布施明 meets 新日本フィルハーモニー交響楽団」(噛まずに言える自信はない)。初めて生で観るオーケストラとの共演。YouTubeでは見たことはあるものの生で観るとどうなのか?と基本期待して行ったのですが、期待以上でした!備忘録として、感想とセトリを書きたいと思います。
今回は、アルバム"Way of the Maestro"で一緒にお仕事されていた藤野浩一さんが指揮を執られるということで、それも大きな楽しみの一つでした。
そして、私は不勉強で知らなかったのですが、今回の公演は新日本フィルハーモニー交響楽団(新日本フィル)の50周年、すみだトリフォニーホール25周年に寄せてのものだったのですね。そのせいか、布施さんがものすごく力がいい意味で入っているというか、終始生き生きしておられました。多分、背負うものがあると燃えるタイプ。
すみだトリフォニーホールの公式Twitterアカウントでも、公演について、ツイートされていました。
ここからは長くなりますので、よろしければお飲み物のご用意を。
第一部セトリと感想
18:00開演
布施バンドの皆さんが入場し、井川さんの指揮で音楽が始まる。
(以後太字が歌唱した曲名。)
Stary Night
前奏途中か終わりくらいで布施さんが入場。赤いジャケット、黒いシャツ、黒いネクタイ、黒いズボン。全体的にスタイリッシュな出立ち。SONGSの君は薔薇より美しいの格好に似てると思ったけれど、もっと洗練した感じ。手首で黒シャツを覗かせていたのが格好良かった。
ともかくも
続けて歌唱。この曲、ライブでだけ歌われるようで、歌詞を全然覚えられないのですが、「あの地平線を越えた君のところで」という歌詞がすごくジンときました。
落ち葉が雪に
「意気地なしだよ、この俺は 人に恋して別れて恋しくて どこまで行っても青春日記 振り向くページも青春日記」という語り歌いありバージョン。
フルで歌ってくださり嬉しい。間奏の途中から、2番の「縦笛鳴らし帰る」に入るまで、縦笛を吹くジェスチャー。
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ここで最初のトーク。(トークは箇条書きにします。( )内は補足や私の心の声です。抜けがあったらすみません。)
・お越しいただきありがとうございます、の後にすみだトリフォニーを「トリニ…」と噛む。(これはわざとなのか、素なのか。笑)
・トリフォニーホール25周年、新日本フィル50周年ということで何かできたらということでされた企画。
・今回のタイトルの「meets」は「お肉ではないですよ」
・いつもの秋春コンサートの説明。「いつもはこのメンバー(布施バンド)でやっているんです、多分ご存知ないでしょうが…」という謙遜のような(半分冗談のような)言葉。これは地元の方が多くいらっしゃることを見据えてのトークなのかと思いました。
・ドラムの長谷部さんが元ジャニーズで、歌なら東(誰?)より上手い!
・サントリーホールで歌うことがあったけど「ブラボーというお声がけはご遠慮ください。」と言われた。「べらぼー」ならいいのか
・2階席の方に「落ちないでくださいね」
・(全員に向けて)楽しんでください。
最初から、すごいよく喋る。そして楽しそう。
・ツアー「祭りのあとの歌ものがたり」の話。(祭りとはオリンピックのこと、などと説明する間に観客から「ふーん」という声が聞こえた。)
・オリンピックは4ヶ月前くらいのことなのに昔に感じる
・やってほしい曲があったら…すぐにはできませんので(という冗談。)
・第一部はオリジナル曲中心でやります
・次は昭和43年の曲。神田カルチェラタンとか成田闘争のあった年。高田馬場で友人にカンパしたのを覚えている。その時歌っていた曲だが、こんな曲歌ってていいのかな、と思っていた。
ここからメドレー
愛の園
霧の摩周湖
マイクなしの入りの「あぁーあぁー」が素晴らしい。ハコの良さもあるだろうか、響きがものすごく良く感じました。喉の調子はすごく良さそうでした。(全体を通じて)
恋のサバイバル
君を守る
恋
ピアノの井川さんの方に行って、ピアノにもたれて歌っていたのがなんだか新鮮。ツアーと同じく「恋というものは素敵なものなんだ」の一節のみ。
愛は不死鳥
「あーなたを連れて舞い上がる」の「あー」の声の力強さと響きに、ただただ圧倒された。赤のライトニングも効果的。
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ここで再度トーク。
・今年55周年のライブが終わって、今56年目。今年で何歳だっけ、54歳だっけ、みたいな感じで井川さんに話しかける。実際は74歳。(すごく笑いを取りに行っている感がある)
・錦糸町の江東ホールでは正月だけやる布施明ショーをやった思い出。19歳で初めてやった。こういう世界があったんだと思った。
・家族には音楽のDNAはない。調べたら多分みんな0だと思う。
・子供の時はうちで歌うとうるさいと言われ外で歌えと言われた
・父親の事業失敗に伴い転勤・転校した時にブラスバンド部に誘われて入り、フルート、ピッコロを吹いていた。その3~4年後には歌っていた。「いかにいい加減か。」
・次は慟哭という曲を歌う。カルーソーという人のことを歌った曲で、ミラノで昔のことを思い出している…という内容。あと君は薔薇より美しいを歌います。
慟哭
「知らんふりして」のところでちょっと揺れるような動きが可愛らしく思えました。振りが全体的に大きくて、感情がすごくこもっているのが伝わりました。後半の溜め気味の「時の流れ」の入り、井川さんがなんだか格好良かった。「運んでゆく」の持ち上げジェスチャーもいつものようにされていましたが、腰に配慮しつつされていたように思います。最後の「夢の世界へ」がマイクありでしたが、マイクなしでもいけたのでは。
君は薔薇より美しい Jazzバージョン 小さめの「アウッ」の声が楽しんでいることを如実に表していました。「笑うほどに」が2回あったような。(最初の「歩くほどに踊るほどに」が「歩くほどに笑うほどに」になっていた)でもとにかく楽しそうで、細かいことが気にならないくらい、ノリノリでした。途中の間奏の井川さんのピアノも良かった。(良かったとしか言えない悔しさ)
曲が終わって、「申し上げます。休憩20分です。」と布施さん自らアナウンス。この時確か18:40をちょっと回ったくらいでした。
第二部セトリと感想
19:00をちょっと回ったところで第二部開演。
まずオケのメンバーが入場。人数が多い。次に藤野さんが入場して、演奏開始。前奏後半だか終わる直前で布施さんご入場。
黒のタキシード、白いシャツ、黒い蝶ネクタイ、赤いポケットチーフ。銅色のバッジのようなものもつけていました。クラシックにとても似合う出立ち。
シクラメンのかほり
フルオーケストラのシクラメン。とにかく「贅沢!」感がすごかったです。クラシック弦楽器の音も合うんだ。ドラム(打楽器)?の音がやや強めでしたが、私は重厚感を感じられて好きでした。
カルチェラタンの雪
当たり前なんですが、前奏もオケなのがすごく贅沢!(2回目)オケが合わさることでなんだかクラシックの名曲に聞こえてくる。
どこか忘れてしまったのですが、手をひらっとさせている仕草があって、可愛らしかったです。(ちょいちょいこういった可愛らしさが入るのが、布施さんのずるいところであり、良いところ。)
全体的に一人ミュージカル度はスタンドマイクだからか控えめでしたが、「さりげなく腕を絡めて」の腕の差し出し方が、素敵で惚れました(何回目?)
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ここでトーク。
・お待ちかねのコーナーです。先程まではお笑いみたいなもので
・新日本フィルの紹介
・藤野さんの紹介 「なんでもできる。編曲もできる。釣りも上手」(一緒に行ったりしたのかな?)
・たくさんの方に来ていただき感謝
・いつもならまだ行かないでと思う12月が、去年〜今年あたりは「早く行っちゃってくれないかな」と感じる(コロナもありましたしね。)
・クリスマスソングは普段歌いません。ギャラにならないから。25日間しか歌えなくて、たくさん覚えてもなんもならない。でも今日は歌う
・"I'll be home for Christmas"を歌う。これはちょっと悲しい歌。「家でクリスマスを過ごすんだ。でもそれは心の中だけでのことだけど…」という感じ。
I'll be home for Christmas
お恥ずかしながら、私自身はあまり聴いたことのないクリスマスソングでした。でも、身振り手振りでちょっと切ない感じがとってもよく伝わってきました。途中で”Oh yeah”って言った時の手が素敵でした。
ここで再度トーク。
・藤野さんはご自宅がたくさんある。(兵庫、熱海、東京、ニューヨーク)
・2019年の今頃に藤野さんのニューヨークの家に行った(ニューヨークへはディアハンセンを観に行った)
→ここで藤野さんが2019年の明日(つまり12月10日)と補足。全部日記か何かに記録していたそう。
・ご自宅でオリンピックの話になり、日本の応援歌ってなんだろう、となった。上を向いて歩こう、かな?なんて話をしていたら、二人で応援歌作りたい、となり曲を作った。(100年経っても歌われるような…なんて話をしつつ、100年経ったらここにいる誰もいないけど、なんて冗談めかしてお話されていた。)
・藤野さん:2019年12月10日の午後2時に布施さんがいらした。「2時に行きたいんだけど」という電話が当日あったそうで、
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藤野さん:皆さん、どうします、布施さんがこれから来るっていうのに家の中ぐちゃぐちゃで化粧もしてなくて
布施さん:化粧なんかしなくていい
藤野さん:いやしてましたけどね
布施さん:ほんと?
藤野さん:冗談ですけど
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という漫才のような掛け合い。(言葉は全て正確ではないと思いますが、そこはご愛嬌ということで。)
・(布施さん)まほろばの国は藤野さんに先にメロディーを作ってもらったけど、(スケールの)大きいメロディーだった。それに歌詞をつけた。まほろばは古語で「いい場所」「素敵な場所」の意味。内容としては「いい国なんじゃないの、この国」という感じの曲。
・(布施さん)5月のファイナルに間に合った。
・(藤野さん)「目指せ印税生活」(観客大笑い)
・(布施さん)JASRACから印税の紙を毎年もらうけど0ばっかりで、紙の無駄。なので印税生活は無理。農夫みたいに地道にやる必要がある
・(藤野さん)「私は買われた吉原の芸者ですね」
藤野さんの返しがなかなか面白くて、布施さんが時にツッコミに回るという不思議さ。
・(藤野さん)うたコン皆さんご覧になりました?という観客への質問→観客から拍手
・(藤野さん)うたコンでまほろばの国を聞いたら、歌が変わってた。(良い意味で)レコーディングが初日、うたコンが楽日のような感じで良くなっていた。
・(布施さん)うたコンが千秋楽なら、今日はもう枯れて何もないかも笑。
まほろばの国
「草は踏まれて」の歌詞のところで、手を足に見立てて踏み踏みしていた仕草が可愛かった。歌はもう抜群に素晴らしかった。オケとこの曲はやはり合う!それだけ壮大なメロディーと歌詞。
歌い終わりは藤野さんと握手。
Amazing Grace
最初はオケなし、布施さんのソロ。鳥肌が立った。オケが入ってさらに鳥肌が立った。終わってから藤野さんがすんごく布施さんに拍手していたのが印象的。
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ここでまたトーク。
・Amazing Graceは書いた人はいい仕事をしていなかった(黒人をアメリカに運ぶ仕事をしていた)
・次のNessun Dorumaはプッチーニのミュージカル…じゃなくてオペラの「トゥーランドット」の曲。(間違えたのは素なのか、わざとなのか笑)
・「トゥーランドット」のあらすじとNessun Dorumaの説明:舞台は中国。お姫様が結婚するのがいやで、求婚してくる男たちにクイズを3つ出し、解けないとその男を殺す、ということをしていた。(それでペルシャの皇太子も処刑された。)ある日、ある男が3問のクイズを全て当て、姫はそれでも結婚したくないと抵抗。そこで男は自分の名前を明朝までに言えれば結婚せずとも良いと条件を出す。そこで姫は臣下に朝まで寝ずにその男の名前を調べよと命ずる。その時に流れるのがNessun Doruma。邦題は「誰も寝てはならぬ」
・最終的にはめでたしめでたしなミュージカル、じゃなくてなんだっけ→オケの女性に尋ねる→そう、オペラ(これはもう素なのか)
・面白いのは出てくる3人の大臣の名前が「ピン・ポン・パン」なこと。
Nessun Doruma(誰も寝てはならぬ)
前半から後半への盛り上がり方、声の伸び、迫力、圧巻でした。最後の”vincero, vincero!"の声の伸びが、すごい。語彙力が全く追いつかず申し訳ないくらい。
My Way
もう何も言うまい。生オーケストラと布施さんの声が、合い過ぎて。感動的でした。
ここで布施さん一旦退場。プログラムにはMy Wayまでしかなかったので、アンコールはどうかな…と思っていたのですが、観客の万雷の拍手に、戻ってきてくれました!
・「じゃあもう一曲」(よく見たら、蝶ネクタイ外してたので、もしかして帰る準備されてました?)
What a Wonderful World
ルイ・アームストロングの名曲。オリジナルのちょっと枯れた?ような声の歌唱も大好きですが、布施さんの声も良い!そしてそれがフルオーケストラで聴けるなんて…感動、の一言でした。途中小さく「アウッ」って言っていて、それがまた、可愛らしくて素敵で。笑顔でこれを歌う布施さんが見れて、私も幸せをひしひしと感じました。途中トランペットソロが入り、トランペットの方を指す布施さんに、オケメンバーへの敬意を感じました。
終わって布施さん、藤野さん退場。拍手がなかなか止まなくて、素晴らしさを改めて実感。
20:00終演。すごく濃い1時間40分でした。
補足①:すみだトリフォニーホール(大ホール)
今回初めて訪れましたが、とても響きのいいホールでした。今回は客席は間を開けずにきっちり埋まっていた感じ。サイトで見たところ、収容人数1800名ほどとのことですが、布施さんの声、オケの演奏の良さを生かすには最適なホールと感じました。
パイプオルガンがあったので、いつかそれと合わせて歌ったりしてくださらないかな。
2階席だったのですが、眺めはこんな感じでした。
補足②:オーケストラ
人数がかなりたくさん。クラシック好きの兄の影響で、何回かクラシックコンサートは行っていますがかなりの規模。詳しくないのが悔しいですが、コントラバスが4〜5体あったので、下記でいう3管編成だった模様。(兄がコントラバスをやっていたので、それで目についてしまう笑)
布施さんと藤野さん
Way of the Maestroの際のDVDを見ればお互いに信頼されていることが分かるこのお二人ですが、今回生で見て、お互いにお互いの音楽がまた好きなんだというのを、肌で感じました。
そして藤野さんが予想以上にお茶目だった笑。もっともっとこれからも共演いただきたい!と切に感じた夜でした。
まとめ
これまで見た2回のツアーライブよりも、なんだかイキイキ楽しそうに見えた布施さん。それはやはり冒頭でも書きましたが、藤野さん、新日本フィル、そして布施バンドといつもより多くのメンバーと一緒に「作り上げる」ことにとても意欲があったためかな、など勝手に思っています。
冗談は交えていても、発する言葉の端々に、観客や共演者への敬意と配慮を感じて、やっぱり布施さんの愛は大きいな、と感じました。
次布施さんに会えるのは、博品館劇場で行われるTAP DO!。今回の余韻に浸りつつ、それを楽しみに年末年始を過ごそうと思います。
行かれた方もそうでない方も、ご感想、ご質問、補足などあればぜひいただければ幸いです。それではまた。