Miyake Haruka 「空白」レビュー


このレビューは2019年に自分が受講していたライター講座「音小屋ジャーナリスト学科」内の最後の課題だった「生涯の一枚」に提出した文章です。 当時、このライター講座を受講したのは、自分が惹かれるアーティストの魅力を、人に響くように言語化できるようになりたいと思ったからでした。だから受講時、最後の課題は、かねがね注目していたMiyake Harukaさんの事を書くと決めていました。 受講から2年経って先週、本当に久しぶりにMiyake Harukaさんをライブ会場で生で聴いて、やはりこの人は特別だと感じました。 WEBで音源レビューを始めるなら最初は2019年に提出したこの文章にしようとずっと思っていて、やっと踏ん切りがついたので思い切って公開しま

す。 この文章がMiyake Harukaさんの音楽が少しでも広まるきっかけになれば幸いです。


★Miyake Haruka 「空白」レビュー (2019年夏・作成)

 出会いは自分がサポートする事になったアーティストの出演するライブに出ていた時だった。面識はもちろん、予備知識も何もなかったのに何故か強く胸を打たれて名前を覚えた。

その10歳近く年下のMiyake Harukaというアーティストを、ほぼ毎月欠かさず見続けてまもなく2年になる。初見で惹かれたアーティストはこれまでも居たが、そこからずっと追いかけている人は居ない。なぜ彼女にそこまで惹かれるのか、ずっとうまく言葉にできないでいた。しかし今年(2019)7月にリリースされた4曲入りLP「空白」を聴いてその理由が分かった時、彼女は自分にとって掛け替えのないアーティストになった。 

 「空白」に収録される4つの楽曲は全て別れや終わりがテーマになっている。いずれも重く扱われがちなテーマだが、曲のリズムとメロディーが優しいので彼女の楽曲に重苦しさはない。ずっと一緒に居たい、居られると思っていた人との望まない別れが歌われたM1「空白」。自分の前から居なくなってしまった人を想うM2「空中ブランコ」、M2から物語が続いているかのようなM3「君の停電の街に」、生きている中で感じるぼんやりとした不安の中で愛を叫ぶM4「愛を教えて」。紡がれる歌詞は情景と心理の描写が鮮やかで、私の感性を何度も刺激する。Miyake Harukaは今作の4曲を通して、向き合った負の感情を全て希望と願いに昇華していると感じた。そして私がMiyake Harukaの音楽に惹かれている理由は、この昇華のエナジーに胸を打たれるからだと気づいた。 

 物事には、始まりがあればいつか必ず終わりが訪れる。それは突然、望んでもいないのにやってきたりする。他人に傷つけられた経験がありながら、自分も誰かを傷つけてしまう。日常にも自分の内面にも目を伏せてしまいたくなるような事が沢山ある。それでも日々は進んでいく。生きるという事は楽しいことばかりではないのだと、私は10代の頃から感じていた。当時の自分はその息苦しさを誰かや何かに吐き出して処理する事が出来ず、苦しみながらも何とか心を保って今日まで生きてきたと思っている。 Miyake HarukaのLP「空白」を通して聴くと、自分の内側に居る「在りし日の自分」が呼び覚まされる。けれどそれは苦しさを感じていた記憶がただ辛いままフラッシュバックするのではない。行き場のなかった当時の―そして今も僅かに心の奥に存在している―不安定な自分が「貴方はそれで良い」と存在を肯定されたような気持ちになるのだ。

 20代も終わり、大人と呼ばれる年齢になって随分時間が経った。心の片隅に不安定な自分はまだいるけれど、これはきっとずっと居るのだと悟った。それでもMiyake Harukaの今作を聴けば、私は私の悲しみや苦しみを受け入れて何度でも前を向いて歩きだせる。悲しみを希望の願いに変えるエナジーに、確かに救われたのだ。


 Miyake Haruka「空白」全曲MV
https://www.youtube.com/watch?v=Deng7KEOba0

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Mika Watanabe
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