読書ノート4冊目 太宰治『人間失格』
恥の多い生涯を送って来ました。
表紙の太宰さんかっこいいですね。疲れきったような微笑。いいですね。
内容はですね、すごい。すごい作品ですねこれ。意味がわからない。
この意味がわからなさって、「何もわかんない」ではなくて、ほんとに思うことがいろいろありすぎて、よくわからない。
まず、基本的には主人公(葉蔵)に共感できないんですよね。
というか、この人に完全に共感できる人はいるんでしょうか。
モテて、勉強はできて、お金もあった。それなのに、酒や淫売婦や左翼思想にどんどん飲まれていく。
その後、心中事件を起こして。
住まわせてもらってるヒラメの家も逃げ出して。
その後も、女の家に拾ってもらっては逃げ出して。
もうどうしようもないダメな人間ですよね。さすがにこんな人間に共感できない。
はずなんですよね。
ただ、ものすごく共感してしまう部分がたくさんある。
自分には、あざむき合っていながら、清く明るく朗らかに生きている、或いは生き得る自信を持っているみたいな人間が難解なのです。
しかし、自分の不幸は、すべて自分の罪悪からなので、誰にも抗議の仕様が無いし、また口ごもりながら一言でも抗議めいた事を言いかけると、ヒラメならずとも世間の人たち全部、よくもまあそんな口がきけたものだと呆あきれかえるに違いないし、自分はいったい俗にいう「わがままもの」なのか、またはその反対に、気が弱すぎるのか、自分でもわけがわからないけれども、とにかく罪悪のかたまりらしいので、どこまでも自おのずからどんどん不幸になるばかりで、防ぎ止める具体策など無いのです。
ものすごく共感できてしまう。
所謂、「普通に生きている人間」の方がよっぽどおかしく、葉蔵こそがだれよりも人間らしいのでは?と思ってしまうほどです。
この、人物が決定的に恥の多い生涯になった原因がはっきりしない点もまた、共感を誘うのかなと思います。ただ、主人公は普通に生きていただけな気もするんです。
結局、この作品についてよくわかんないんですよね。
読み方もいろいろありそうで、面白い小説だなと思いました。僕は好きです。