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『大学生活を極める55のヒント』を読む。

人生に失敗というものがあるのなら、何もしないこと、それが失敗なのであって、全力で何かをして失敗すること自体は、大きな成功なのだと思うのです。p.92

著者の京大での貧乏大学生活の経験をもとにした、読みやすいエッセイです。最初に断っておきたいのは京大は日本の中でもかなり自由度の高い大学であるし、著者の学生時代は特に牧歌的な大学の学びが許されていたということ、つまり今とは違うということです(現大学生の自分からするといやいやそれはないと思ってしまうこともある)。単位は空から降っては来ない笑

しかし、それでも大学に行くということはどういうことか、大学で学ぶとは何なのかということを考えさせられます。

特に著者が入り浸っていた森毅教授のゼミでのやり取りは面白く、本質を突いてるような気がしました。

明確な目標があって大学でやることが全て決まっていて、将来の目標のために大学は卒業する必要があるという強い意志を持った人にはあまりお勧めできませんが、大学に失望し、大学とは何なのと迷える大学生には強くおすすめします。

「アホやなあ、苦労っちゅうのはムダにするもんや。役にたつ苦労があったら、そんなもん苦労やないで。」p.50

苦労は無駄にするから苦労。役に立つことを前提に苦労する苦労なんかない。森先生の名言はスティーブ・ジョブズの点と点はいつか線としてつながるというあの伝説的スピーチに通じるものがあると思いました。

「単位に関係なく、そうした授業を片っ端から覗いていきました。はっきり言って、面白い授業が多かったのです。単位を取るための授業は面白くないのに、単位とは関係がない授業が面白いなんて逆説的です。」p.111

自分の専門とは異なる授業に出てみる、単位を得るための授業じゃなくて、好奇心を持って大学の授業に出てみると、変で面白い授業はいっぱいあります。

「まあ、2回生ぐらいになって、やっとほんまもんの京大生になるのよ。それまでは、親の価値観で生きてたのが、やっと自分でモノを考えるようになって、人間らしい顔つきになるもんやね」p.137

大学生活を通して自分が一度はぶっ壊される、価値観を覆される経験ができたらそこからがスタートかもしれません。

「自分は将来こうなりたいと確固たる目的を持って大学に進学し、回り道することなく勉強を続け、それを貫くなんて、ほとんどありえない確率ですし、もし本当に貫いたとしたら、逆に視野が狭い人になってしまう確率の方が高いでしょう。その意味ではせっかく、大学に入ったんだから、ここはのんびりして、ちょっと道草を食う、いや、回り道くらいはして、今まで知らなかった世界やさまざまな価値観を知った方が面白いものです。」p.176

僕は文系の大学生で理系はわかりませんが、文系の分野に置いてこれ何の役に立つんだ、誰がこんな学問に興味を持つんだということは山ほどある気がします。社会に出たら意味のあること、効率的なこと、結果の出ることを求めなきゃいけないのなら、大学にいる時間ぐらい自分を豊かにするために無駄なことを、まわり道をして、迷いまくってもいいんじゃないかと思いました。

なんか自分のことばかり書いてしまいましたが、このエッセイは読みやすく面白いので息抜きに読むのをおすすめします。

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atsu
こんな自分勝手な文章に共感を持ってくださったら嬉しい限りです。