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#31_みんなの博物館

今年2月の話ではありますが、「旅と学びの協議会」さんからオファーをいただき、対馬でツアーを開催しました。

対馬は「マニアの聖地」のようなところがあり、実際私の知人でいいますと、古墳マニア、灯台マニア、廃墟マニアが訪れています。
そのような地域で、初学者が研究者や専門家からの話を聞き、また彼らと対話することによって、「好奇心」や「学び」にどのような影響があるのか検証し、どのようにしたらアカデミックでディープなツアーが催行できるかを考えました。

海外では社会教育施設を活用したツアー型の研修が行われている一方、国内では各施設単体で企画されるイベントは多いものの、ツアーにまで発展している事例はあまり見られないことから、博物館などの社会教育施設を、広く多くの方々が利活用する方法はないかという着想にたどりつきました。
そこで、対馬博物館を視察した際に、学芸員のOさんから、対馬にある文化財や展示の手法だけでなく、対馬市の施策において博物館がどのような位置づけであるのか(例えば、なぜ教育委員会ではなく、観光交流商工部の所管であるのか、など)についても解説していただきました。
あわせて、「対馬は専門家の方が多く訪れますので、逆にもし初学者がいらっしゃるとしたら、どのようにお考えになりますか」と質問したところ、「研究者か、初学者は問わないが、博物館に全然興味がない人に来てほしい」という答えが返ってきました。
一見何を意図しているのかナゾな内容に興味が湧き、さらに伺ったところ、そのこころは「好きな人は自分から色々調べに博物館に来るが、興味がない人は自分からは来ないので、その方へのきっかけを作りたい」というお話でした。
難しそうなことですが、それがまさに社会教育施設の使命だと、感銘を受けました。

長い前置きになりましたが、以前そのようなやりとりがありまして、「博物館の役割とはなんだろうか」と考えていたところ、5月27日、対馬博物館の開館1周年を記念し「みんなの博物館」というシンポジウムがありましたので、参加してみました。

当日は、島外の学芸員さんや大学教員による博物館やアートイベント、調査研究現場における市民参加の事例発表と、市民を交え「市民の主体的な活動に博物館が貢献できることは何か」と題したパネルディスカッションが行われました。

市民の方からは「博物館はアミューズメントパークではないから何度も行くことはないが、島外から人が来た時に対馬を自慢したいから行くので、市民が学芸員で、博物館を含めた厳原の城下町自体を博物館と捉えたらどうだろうか」、「(開館前の)里帰り展で他所の施設に収蔵されている文化財がほとんど対馬に帰ってくることがなく残念に思ったが、現在行われている昆虫の特別展では貴重な標本がたくさん展示されている。博物館ができたから展示できるようになったと思うので、対馬の人に見せる観点でも博物館が活動してほしい」などの意見が出ていました。
気取ったり背伸びしたりせず、しかし本質的な意見が次々と出ていて、とても興味深い内容でした。

個人的に一番面白いと感じたのは、佐賀大学の花田伸一准教授が、アートイベントで「暴走族のバイクを展示した」お話で、それを見たヤンキー上がりの方(?)から、ああじゃない、こうじゃないと色々ダメ出しされたそうですが、Oさんから提起された「博物館に興味がない人に来てもらう」アイデアを実現するヒントが、ここにありそうな気がしました。

先ほど対馬は「マニアの聖地」ということに触れましたが、マニアの方の対応をすることで、対馬の知られざる魅力を教えていただき、それによって、多少でも自分事になっていると思います。
おそらく、そのような機会を私にとってだけではなく、もっと多くの方に対して作ることが、われわれ旅行業の役割なのだろうと思いました。

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佐藤雄二_ビーコンつしま
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