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“Mālama Honua” - 地球、大地を大切にせよ。

先週末の17日(2014年投稿時)に、オアフ島のサンドアイランドから、ホクレアがいよいよ世界に向けての旅に出発しました。友人数名が、今回のタヒチまでの旅に参加しているので見送ってきました。
今まで5−6回、ホクレアを見送ってきましたが、今回は人が何百人も集まって壮大なものでした。

ハワイ好きの皆さんのことですから、ホクレアのことを知っている人も多いと思います。
古代、元々ハワイの人たちは、ポリネシアから航海カヌーに乗ってやってきたと言われています。
歴史などものすごく書きたいところなのですが、僕くらいの立場の人間が書くのも申し訳ないくらいですので、簡単に。。。

アメリカ合衆国200周年の記念事業として、レプリカが作られました。
「ハワイアンたちは本当にカヌーでポリネシアからやってきたのだろうか?」という問いから、このレプリカ航海カヌーで太平洋に出て行く事になります。
昔ながらのやり方ですので、もちろんエンジンや電気はなく、方角もコンパスは、夜は星を見て方角を定め、風、波、雲の動き、太陽や月、あるいは飛んでいる鳥なんかを見ながら、目的地を目指す船なのです。

これだけでもとてもロマンがあるのですが、もちろん苦難もとても多かったと聞きます。
サーフィンなどでもアイコン的存在になっているエディー・アイカウ。
彼はクルーメンバーだったのですが、ホクレアが転覆しかけ、クルーたちのヘルプを求めに、サーフボードに乗ってそのまま戻ってこなかったという事故もありました。
人のためになら自ら進んで前に行く。。。という彼っぽさから、”Eddie Would Go”なんて言葉が出たのですね。
余談ですが、サーファーだった彼を忍んで今でも、冬に25フィート以上の波が来たときだけあるサーフィンの大会もあります。
ホクレアの後部には、彼の名前が入った記念プレートがついています。

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僕がホクレアと出会ったのは、2006年でした。出会ったといってもそんな大きく言えるほど立場ではないのですが。。。
国立イーストウェストセンター(East-West Center)のアジアパシフィックリーダーシップ(Asia Pacific Leadership Program)にフェローとして参加してのですが、その時に、マスターナビゲーターのナイノア・トンプソン氏に出会った事でした。
彼の話で、自分の世界観をひっくり返された思い出があります。

「海は隣人を隔てるものではなくて、人や文化、世界をつなげるためのものだ。」

もちろん頭ではわかってはいるコンセプトでした。
でも、実際、自分は陸で存在しているわけだし、船乗りではないので、実際に海に出る機会と言っても、釣りだとかどこか近くの島に行く程度。
ナイノアは、実際に何ヶ月と海の上で過ごしてきた人で、また、自分自身、隣の大陸から何千マイルも離れたハワイにいるわけですから、なんか彼のこの言葉がこのときじっくりと入ったのでした。
海をなんとなく壁のように感じていたのですが、ふっと視野が広がった感じでした。
陸上だけの世界観が、ぐっと広がったのでした。

もちろん今は技術も進んでますから、飛行機に乗ってしまえば、すぐどこか日本でも、ロサンゼルスでも行けてしまうわけです。
その当時の自分、まあたかが20数年生きてきただけですが、「世界はまだまだ広いんだ」と思い、更なる可能性というか、まだまだ見れるものってあるんだと思わせてくれた瞬間でした。

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2007年にはホクレアは数ヶ月かけてハワイから日本にも行きました。
この日本航海に関わっていた友人の言葉も、自分のコアというか、常に頭にある言葉になっています。
彼女は、あるとき日本からハワイに来ていて、日本での仕事にものすごいストレスを貯めているときでした。
その時に、カヌーの話なんかにもなり、彼女が、

「もしかしたら飛行機とか今の技術っていうのは、人が本来持っているスピードからしたら早すぎて、大きすぎて、だからカラダはついてきていないのかな」

飛行機に乗ってハワイにやってきた彼女は、なんかココロがここにまだ来てない気するっていうんです。
なんかジェットラグってそういうところから来てるのかなとも思ったりもしました。
本当は自分のスピードで物事って処理していかないとしっくりこないのかなと思いました。

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話を戻すと、僕もホクレアに乗させてもらう機会がありました。
乗っている間、風や波がないときは、本当に時間がゆっくりになるんです(ありすぎるくらい)。
寝るにしても時間はまだあるし、他のクルーと話をしてもまだ時間はある。
ずーっと進む海の水を眺めたり、遠くの地平線先の景色を想像したり、
自然と回りを見渡し続け、自分のこと、過去の事、未来の事を考えたり、家族のこと、友人のことを考えました。
なんだかものすごい価値のある時間になっていました。
彼女の言葉ではないですが、今の現代、こんなゆっくりと自分のスピードでいろんな事を考えたりする時間って本当に少なくなってきていますよね。

僕は、モロカイ島からの出発だったのですが、途中カホオラヴェ島のすぐ横を通りました。
家族がカホオラヴェ出身というクルーもいて、彼はカホオラヴェの横を通った瞬間、ずっと島を見つめて泣いていました。
なんか彼個人のことだったのかもしれないのですが、ハワイの歴史を思っていたのでしょうか、島への、故郷への思いを持っていたのでしょうか、ハワイの人たちの思いみたいのを勝手ながらに感じてしまいました。
そして、日本のことも考えました。
同時に、自分に足りないものもいっぱい感じました。
この経験のあとに、もっと自分も日本に対して何かしようと思いました。思うだけじゃなくて、動こうとも思いました。

カヌーに乗っている間、船酔いするかな。。。と心配していたのですが、始めは、波や風に自分が動かされている感があったのですが、ある瞬間に世界が一転しました。
自分が周りにみえる地平線や景色を動かしているように思えたのです。その瞬間、波もあまり感じず結局船酔いすることはありませんでした。
そのかわり30時間後、陸に降り立った時に、地面があまりにも揺れなくてそれに酔いそうでした。

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このカヌーの経験は自分のパラダイムを本当にひっくり返してくれることばかりでした。
今まで当たり前だと思っていた事、ちょっと見方を変えれば「当たり前」ではないということもあり得るという事。
大人や学校、教科書なんかが、「こうだ!」って言われれば、子どもながらにそれが「そうか!」と常識としてしまうもので、でも、実際本当にそうなんだろうか?本当に子どもにそういう教え方をしていいのだろうかと疑問に思いました。

土地が変われば考え方も違うということもありますし、今まで自分の中で作り上げてきてた(と思ってた)ものがあっという間に壊れました。。。というか、なくなりました。でも、それはとても肩の荷がおりたというか、自分の本質に近づけたときだったように思えます。
それから自分には、一切嘘をつかなくなったし、世界観も広がったのか、ネガティブに物事を考える事もほとんどなくなりました。

それと、ホクレアに乗らせてもらうとなった朝、「ハワイの人たちが乗るべきなのに、自分が乗っていいのか」と、とまどいがありました。
そのときのキャプテンだったメルさんに、「常に自分のKuleana(クリアナ:ハワイの言葉で責任とか義務とかという意味)を考えなさい」とアドバイスされました。
どんな状況であれ、どんな立場であれ、何をするにしても、自分の責任、やることの意味、目的をしっかり考えれば、次につながるし、決して無駄にはならないということでした。
これはもちろん今の人生の本質になっていると思います。

さてさて、長くなりそうなので、この辺で。。。(笑)

ホクレアはこれから4年かけて世界への旅に出ています。太平洋を超える事はもちろん初めての事です。
これまで40年ちかくホクレアが旅を続けて感じてきた事、それは島々で、それぞれの文化にあるもの、知識とか価値観みたいなものって本当にすばらしいのだってこと、それは海がつなげてくれているものであって、だったら世界に出て行ったとき、今世の中で起きていること、特に争いごとだったり、問題となっていることだったりの解決策みたいのがあるんじゃないかって信じれると思うんです。

いや、解決じゃなくていいんです、なにか小さな「きっかけ」みたいな出会いだけでも、多くの世界観を覆してきましたからね。
だからこの旅は色々な意味がある中でも、次世代のための教育ツールだと思うし、発見の連続だと思います。Mālama Honua。。。地球、大地を大切にせよ。。。これが今回の旅のテーマです。

始まったばかりの旅、どんなストーリーが出て来るのか本当に楽しみです。

注:こちらのブログは、Myハワイ歩き方の編集部ブログとして2014年に投稿されたものを一部編集して再投稿しています。
アップデート(2021年1月現在):数年後に、また日本にホクレアが訪問する予定です。現在、日本語ウェブサイトも作成中ですので楽しみにお待ちください。


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