食卓革命。
この10年くらいになるのでしょうか、ハワイでは「ローカルの食べ物食べようよ運動」みたいなのがひそかにそこら中で広まっています。日本から来る観光客のひとたちにも、ハワイと言えば「ファーマーズマーケット」となっているように、毎日島のどこかでファーマーズマーケットが行われていますよね。
ハワイのニューカマーっぽいヒッピー的な感覚からでしょうか、もしかするとハワイアンの文化復興運動に乗ってハワイ独特の食べ物のすばらしさの再認識が一般市民にもされてきたのかもしれません。ハワイ大学マノア校のキャンパスにもサステイナビリティコートヤードなどベジタリアン、ローカルフードの場所も増え、若者たちも率先してローカルの食べ物を選んだりして、いわばブランドにすらなっています。
ハワイ州の3大産業のひとつが農業です。
都会なオアフ島でさえ、車を2〜30分も走らせるとどこかの農園にたどり着きます。
ただ資本主義の巨大化の波にもまれて、ハワイの食べ物の9割は本土から来ていると言われています。本土の巨大企業の工場で大量出荷されることでものが安くなって、ハワイの地元農家規模の運営では値段が負けてしまうんでしょうね。それに本土から来る大型店も地元色を奪われる格好になっています。
ただ食べ物を味わってみると、質がわかるものですよね。
やはり本土から飛行機なり船でやってきたものは、ハワイについてからお店に並ぶまで時間がかかります。そのいい例は乳製品でしょうね。
今、ハワイで牛乳を作っている農園はひとつしかないらしいです。やはり資源の少ないこの僻地では、大企業には負けてしまうんです。
でも、ホノルルみたいな都会でさえ、ローカルなものを買おうという意識からファーマーズマーケットが増えたのに加え、自宅農園をやっている家庭もとても多くなりました。アパートが多いエリアでも、コミュニティ農園なんていうものもあります。
犬の散歩をしていると近所のおじさん、おばさんから、よく裏で取れた野菜だからってもらうこともよくあります。
そして最近さらに流行をみせているのが、アクアポニックでしょうか。
野菜や植物の水耕栽培と、魚の養殖も一緒にやってしまうというサステイナブル(持続的発展性)な栽培方法なのです。元はヨーロッパ発で、アメリカ本土でも都市部では、自分たちに必要な野菜は作ってしまおうというアイデアから広がりつつあって、ハワイでもこの数年、多くの一般家庭でもみれるようになりました。
魚の排泄物にはアンモニアが含まれており、水中のバクテリアによって硝酸塩に分解されます。その水がパイプを通って植物に行きます。その水に含まれている硝酸塩は植物の肥料となり、植物はそれらを今度は根が吸い取って、火山灰は水を濾過してくれます。それがまた魚の水に戻る。水槽の水替えや野菜の水やりが不要なんです。
電気代のみでの稼働で、ソーラーを使う家庭も多いです。
育つスピードと大きさが抜群に違うんですね。
常に栄養を与えているわけですから、野菜、植物の育つ大きさが違いますし、味がおいしい!
それに、すぐ育つので、野菜や育った魚も食べれるのでそれらの食べ物はスーパーから買わなくてよくなるわけです。
さて少し話はそれましたが、ハワイの人たちは、タロ芋などを含む昔ながらの食にまた目をつけています。
昔は、本土から食べ物を取り寄せなくても、この島で食生活はなりたっていたわけですからね。
ハワイには、一般の人たちもお手伝いなどで入れる農園がたくさんあります。
自分たちが食べるものがどう出来ているのか知って感じる事で、食への意識、食からくる健康への意識も変わります。
野菜だけじゃなくて、肉なんかもそうですよね。
最近の食安全の意識の高さから多くのドキュメンタリー映画も作られ、家畜がどのように飼育され、お店や家庭に届くまでの大企業のやりかたが暴露され、オルガニック思考、ベジタリアンになる人も増えてきています。
自分たちが食べるものが、どういう風に育って、自分のテーブルにどのようにやってきているのか、やはり意識がなければあまり知る事すらできません。
そういう部分は食安全の確認につながるはずですし、大きくみれば消費者から生産者へのプレッシャーにもなりますよね。
先日、自分の学生を、大学にあるタロイモ畑に連れて行ったとき、後のコメントとして「テストや論文に追われて疲れ果てている脳を癒してくれた」とか「大地を触ったり、先祖代々大切にしてきているタロイモのお世話をすることで、先代とコミュニケーションが取れた気がした」なんて涙する学生もいました。
タロセラピーって言葉があるくらい土とかかわるとやっぱ癒しですし、よく”You are what you eat(食はあなたを表す)"なんて言葉もあります。
自分の食卓から意識を変えて行く事で、大きなところへたどりつければビジネスのトレンドなんかも変わるかもしれません。
Aloha ʻAina Malama ʻAina(大地を愛して、大地を大切にする)精神は、自分のWealth(「財産」とか「お金」とかそういう意味)ではなくて、健康も含めたWellbeing(「至福」みたいなもの)を向上してくれるものだなんて考えます。
また地元の食べ物を率先して食べることで、地元愛みたいなものさえ湧いてくるものですもんね。
なんだかそんな食卓革命が、ここ数年のハワイのブームのような気がします。
注:こちらのブログは、Myハワイ歩き方の編集部ブログとして2014年に投稿されたものを一部編集して再投稿しています。