ハワイ版ロミオとジュリエット。
先日は、オアフ島カネオへにあるフィッシュポンド(養魚池)へ、日本の環境学専攻の大学生グループを連れて行ってきました。
ここ最近ハワイでは週末になると天気が悪いことが多いのですが、この日は快晴!
ハワイでは、かつてフィッシュポンドがたくさんの場所にあったそうです。
アフプアアと呼ばれるかつての山頂から海までのコミュニティ一帯の食料を確保するため魚をフィッシュポンドで蓄えていました。
コオラウ山脈が一望できるこのフィッシュポンドは800年もの歴史があり、広さはなんとアラモアナショッピングセンターがすっぽりと入るくらいらしいです。
かつて魚の養殖を行っていたのは、実は太平洋の島々数多くあっても、ここハワイだけだったらしいです。
大陸から2,000マイル以上も離れたこの島だからこそ、食料を蓄える知恵が必要だった証でしょうね。
今ではハワイの食べ物の8〜9割が、本土や外国から船や飛行機でやってくると言われています。もし天候の影響、技術的なトラブル、なにかあってその船や飛行機がやって来れなかった場合、ハワイには1週間強分の食料しか残らないとされています。
そういう危機感からハワイでは地元の農家の作物やこういった自給自足出来るシステムというのがまた脚光をあびていますし、 古代からの生きる知恵を学べる場所として地元の人たちからも重宝されています。
フィッシュポンドは、山の方からの小川が流れるところの海辺に作られます。
珊瑚と岩を使い、少し離れた岸に壁を作り、浅い池を作ります。
潮の影響で淡水と海水が混ざりあうよう、ところどころに用水路のような場所を作ります。
魚のえさとなるプランクトンが育ちやすい環境を作り出されるのです。また太陽もさんさんと浴びるので、珊瑚も育ち、それに魚が食べる藻がついてくるので、餌やりは不要です。
また潮の動きを利用して、小さな魚がフィッシュポンドに入り、えさの多い池の中で育たせ、大きい魚がフィッシュポンドに残ります。
そして人々が必要な分だけフィッシュポンドから魚を取れるというわけです。
ここで教えてくれるライフレッスンは、古代から続くのサステイナビリティ(持続的発展性)の知恵とあり方。
周りにある自然の力を頼って、必要なリソースだけを取っていくという考え。
ここは800年もの間近くのコミュニティの人々に食べ物を供給してきた場所。
遠い昔の人たちは先の世代のことも考えて、環境を守りつつ、人間の暮らしも保つことに務めていました。
フィッシュポンドの壁は、岩と珊瑚で作られています。今でこそトラックなり重機がありますが、800年も昔に大きな岩をどう運んでいたのでしょうか。
森に住むメネフネ(小人の妖精)たちがコツコツと岩を山から運んだという伝えもあります。
先人たちは、ハワイの島々を守っている珊瑚の位置もすべて把握して名前がついていたと言われます。
珊瑚がなければ津波など高波が来たらハワイの島々は壊滅的です。
かつて豊富にあった珊瑚礁のなかで、生きた珊瑚に光をあたらせるために、死骸となった珊瑚を取り除き、それらをフィッシュポンドの壁として利用していました。 今は法律で珊瑚を取るのは禁止されているので、海から珊瑚を取る事はできません。
しかしかつて水位が高かったようで、近くの山を掘ると珊瑚の死骸が出て来るという事です。今はそれらを運んで壁の修復に利用しているということです。今回参加した大学生たちにメネフネになっていただいて、この岩運びを一日手伝いました。
作業自体は単純作業だったのですが、参加していた学生たちがこんなことを言ってくれました。
「この作業は、いますぐなにか結果をもたらすわけじゃないけど、もしかしたら800年後の子孫たちの食料確保のためになってるのかな。」
「現代の人たちは、今日明日の事ばっかり考えて過ぎているのかも。」
「太陽の光、月の満ち引き、山にある森、生き物たちがお互いに影響していること。。。すべてが必要で、自分たち(人間)はそれらを守って行くことで、自分たちへの恵みに変わるんだ。」
とても充実した一日でした。
かつてこのカネオへベイも、環境汚染や管理不足などによってすごく汚れていて、珊瑚も魚たちも減っていたといわれています。
地域の方々の長年の多大なる努力によって、海もだいぶ綺麗になり海の生き物たちも戻って来ているそうです。
また外来の動物、植物によるダメージも大きかったらしいのですが、これらの土地を大切にしていくなかで、ハワイ固有の動物、植物たちもふたたび生き生きしてきているそうです。
ハワイにも、見ていて美しいマングローブの木はたくさんあるのですが実は外来種。
放っておくとそこらに広がって行くとの事で、フィッシュポンドにはやっかいな存在。
マングローブはつるが幹なので、それがどんどんと広がって行くと、泥をかきとめてしまい、魚が動ける水場が減ってしまう。またせっかく作ったフィッシュポンドの壁や珊瑚の死骸から土になったところに幹を広げて、壁を壊してしまう事も多く、壁が壊れれば魚が逃げてしまいます。
そういった外来種を取り除く作業をすると、またハワイ固有種のものが育つのがみれるそうです。
歩いている途中にもたくさんのハワイ固有の植物や生き物たちが見られました。
このakulikuliと呼ばれる植物も戻って来た固有種の一つ。
かつては、炎天下の作業の中失われた塩分を補う為に食べてもいたという植物です。ポケに混ぜるなんてアイデアもあるみたいです。
そしてロマンティックでちょっと寂しいストーリーを。
このハワイの固有種でもあるnaupaka。山に咲いているものと、海辺に咲いているものがあります。
下の写真をよくみてください。花が半分ちぎられているように咲いています。
言い伝えで、火の神様ペレが恋をした若者には好きな人がいたらしいのです。
それを知ったペレは嫉妬し、怒り狂いました。ペレの怒りを避ける為に、若者は海へ、恋人の女性は山へと逃げ、二人の仲は遠く引き離されてしまったと言われています。
そして花を咲いたものの、半分ずつだったというハワイ版ロミオとジュリエット?七夕?のようなお話です。
山に咲くnaupakaと海に咲くnaupakaの花びらをくっつけると、永遠に結ばれるなんてちょっとロマンティックな言い伝えもあります。
そんな海のnaupakaも作業中の横に咲いていました。
この話をしたらなぜか男性陣のほうが盛り上がってましたが。。。笑
このフィッシュポンドは、ハワイの歴史においてとても貴重な遺産ですし、いい学びの場でもあります。
このカネオへのフィッシュポンドは、カメハメハスクールが管理しているので、個人的に入る事は出来ませんが、ハワイのフィッシュポンドに行けるツアーはあるみたいですね。皆さんも機会があれば、800年先の子孫のためにぜひひと仕事してみてください。
注:こちらのブログは、Myハワイ歩き方の編集部ブログとして2014年に投稿されたものを一部編集して再投稿しています。