造花

「いつの間にかという言葉をいつの間に忘れてしまいました。」

「私は花言葉を忘れてしまいました。」

「あら、奇遇ですね。」

「折角ですから、お茶でもいかがですか? ちょうど折り入った話がしたかったんです。」

「あっ、いや、ちょっと今日は都合が悪くて……。」

「そうなんですね、でもこんな機会はなかなかないですから、ぜひ行きませんか? そういえば、近くにケーキと紅茶の美味しい喫茶店があるのはご存知かしら。ケーキがすごく有名で、よくテレビや雑誌で取り上げられていて、すぐに売り切れてしまうことが多いですから、ぜひ行きましょう!」

「あっ、お誘いは嬉しいのですが、今日はこれから雨が降るらしいですから、洗濯物を取り込まないといけないですし、晩ご飯の準備もしないといけないですし、ちょうど今観ているドラマの続きも観ないといけないですので、また今度に……。」

「そうやって、お茶を濁してお断りするのですね。」

「あらあら、"立つ鳥跡を濁さず"ということわざをご存知で?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?