狩野 龍
短詩を綴っています。
エッセイを綴っています。
01.旧市街/賛美歌/6月の雨 02.埋立地(うみべ) 03.浮遊 04.とある話 05.流夏 06.into the device 07.贖罪 08.白昼夢 09.kettle 10.ときめきを感じてる 11.色鉛筆の君 12.工場群 13.シティポップ・ジャーニー 14.書房 15.end roll
他愛もない会話と微炭酸のコーラ。 カラスミのパスタが運ばれてきた。 フォークは巻き戻せても、時間は巻き戻せない。 僕は何を積み重ねてきただろう。 季節は巡り、季節を辿る。 季節は廻り、季節を巡る。
かろうじてのストーリーが今日も続く。真っ白なシャツを前に、機械にしか過ぎないという諦念が現れる。喫茶店の隅に置かれた代物に、持ち主の丁寧さが表れる。スパイスとストレスは、少しだけあれば充分という意味で共通しているようだ。お会計を済ませた僕は、レシートの裏側に書かれた文字をじっと見つめた。 「かろうじてのストーリーよ、明日も続け。」
汚れないように、工夫がされている。 汚れないように、工夫がされていた。 汚れないように、工夫がされている。 汚れないように、工夫がされていた。 汚れないように、工夫がされていた?
翌日は栄養ドリンクに頼らざるを得ない。大したことでもないくせに、持ち上げる風習のせいだ。休める時に休むのがいいと言う。旅行先で日記をつけるのが、面倒だと感じるようになった。今日の晩ご飯はココナッツカレーだ。休みたい時に休めればいいと願う。
綿密なスヌーズに助けられる。予習と復習はどちらが大切か。情状酌量の余地を考慮する。メンタル的余裕は17%。繰り返されるチャイム。メンタル的余裕は10%。眠気覚ましの珈琲が運ばれてきた。オルタナティブな笑い声で水に流せたなら、それはそれでいい。
明確な差異が存在する。僕らはショーケースの中で試されている。賞レースで頂点に立てば、競争から抜け出すことができるらしい。面の皮が厚い者ほど、この世は生きやすい。バージョンの違いなど、彼らにはどうでもいいのだろう。
自分勝手主義者が勝利する世界。スケジュール帳は仮の予定で埋まってゆく。黒い森を抜けたら何が見える。ベクトル、コンクリート、積み木崩し。手がかりは利口な生物だけが知っている。
秀逸さを発揮できない場合、住み心地の悪さはわざわざ語るまでもない。赤ん坊はいつ、沈黙を覚えるのだろう。ティーンエージャーはいつ、諦念を覚えるのだろう。均一の商品がガラスケースに並び、差異など無いと嘯いている。僕はただ、それを眺めている。自らも内側に過ぎないというのに。
あれほど固めた意志は、寝て起きたら何処かに行ってしまったようだ。可能性を探る日々に出口はあるのか。少しも無視できないからキャパオーバーになる。資本主義の渦に巻き込まれてゆく。諦念と勘違いだけが積み重なってゆく。
せめぎ合いが人生の大部分を占める。陸続きの資本主義。理屈抜きで疲れてしまったのかい。アトリエに紛れ込んだカナリアが言う。 「恥じらいを捨てられる人ほど、この社会は生きやすい。」
ランデブーとブランデーの関係性は、まったく些末だと言える。選択肢が豊富になればなるほど、迷ってしまう不思議。ほどほどに生きることができるなら、とっくにそうしているだろう。苦労は買ってでもしない方がいいのなら、とっくにそうしているだろう。
土曜の夜は幸福感を纏うという説がある。つまらない仕草が琴線に触れたら、それが合図らしい。70回転の夢を僕は観た。流転の展開には慣れっこだと嗤った。言語化できない難しさも、我を通す強かさも、すべては総じてつまらない。
ポリエチレンの蓋然性。 定刻通り始まった会議。 損得勘定で生きている。 一日も忘れた事はない。
雨降る東京の夜。 私はエディンバラに想いを馳せる。 立ち寄ったレイトショーが、無題の映画をきっかり120分流す。 不意の涙に暮れたあなたが、孤独に苛まれぬよう、神様に願おう。
タイムアップの笛は鳴っていない。 予想外の開会宣言におののく。 スクロールする社会を遠ざけたい春。 主語と述語が曖昧になる感覚。 ミネラルウォーターは頼りになる。 スクリームした彼らの心境はいかにも。 こぼれたノイズから抜け出そうと僕は走った。 今もまだ、タイムアップの笛は鳴っていない。